不良長寿を目指す

好きなことを我慢しない、のびのび生きる

真面目で責任感が強い日本人は、頑張ることも大好き。額に汗して頑張る人が評価され、チャラチャラと進んでいる人は褒められません。

イソップ童話の『アリとキリギリス』で言えば、間違いなくアリが賞賛され、キリギリスは馬鹿にされます。しかし、夏の間も遊ぶことを我慢し、ひたすら働き続けたアリは、本当に幸せで健康で長寿なのでしょうか?どうも、アリこそが正しい生き方だ、という固定観念が定着しすぎているように思います。

90歳、100歳を超えて元気な方々は、なんでもよく食べ、よくおしゃべりし、好きなことをやってのびのび生活しています。決して、アスリートさながらに毎日の日課、運動量、栄養素などを計算して少しでも長生きしようと「頑張って」いるわけではありません。

多くの人が、精一杯頑張って生きています。子どもの頃は、学校や塾で勉強を頑張むちり、運動会では「頑張れー」と声をかけられ、受験では「頑張ります」と自分に鞭打ち、学校を卒業しても就職活動を頑張らないと働く場が得られず、入社したら頑張って働き、出世のためにさらに頑張り、結婚しても子どもが生まれても頑張らなければなりません。

とにかく死ぬまで天井知らずの頑張りが要求されます。もう十分頑張っているのだから、もうそれ以上はいいのではないかと私は思います。頑張りすぎるから心も体も悲鳴を上げるのです。「のんきにちんたら生きる」これこそがうつを避け、健康長寿の秘訣。そういう思いで私は「不良長寿」を目指すのが幸せにつながるのではないでしょうか?

病気の7割くらいは、自律神経のうち交感神経の緊張からくると言われます。締め切りやゴールを目指して必死に頑張っているとき、この緊張が体内に大きな影響を及ぼします。血圧が急上昇し、脈は速くなり、血糖値も上がります。

この作用で、酸素や栄養が脳や筋肉に行き渡るので、能率や成果を上げるためにはある程度必要な緊張と言えます。しかし、頑張りすぎて強い緊張が続いていると、心臓や血管に負担がかかるので、狭心症、心筋梗塞、くも股下出血などにもなりかねません。

がん細胞を潰してくれるNK細胞も、交感神経が緊張しっぱなしでは働きが鈍ります。

一方、ゆったりくつろいでいるときや、笑っているとき、眠っているときは、副交感神経が優位な状態です。この交感神経と副交感神経には、1日のリズムがあります。一番いいのは、交感神経が優位になる昼間に、仕事や運動で脳も休も目いっぱい働かせ、副交感神経が優位になる夜は、美味しい食事を楽しんで、ゆっくりお風呂に入って、ぐっすり眠る。このメリハリとリズムが、体の調子を整えるのです。

のんきにちんたら生きる「不良」ほど、こういった生活術に長けているようです。

もう1つ、「不良」がなぜNK 活性が高いかというと、ストレスを引きずらないからです。不良は親友と遊びに出かけたり、酒を飲んだり、カラオケをやったりしてストレスを発散できる。

一人ぼっちで友人がいなくて引きこもってばかりいるのはダメです。本当にいい友人や恋人がいれば、つらいこと、悲しいこともしばらくは忘れていられます。もちろん、一人でも存分にストレスを発散できるという人は大丈夫ですが、それが難しいような気がする人は、友人と大いに遊び回るのが適しています。

「不良」というのは、何も「悪い」という意味ではなく、「やんちゃな人」ということです。やんちゃな人は人生を楽しめるから、健康で長生きできる。そういう一見些細なことが、われわれの人生には大事なのです。