「素直な欲望」に耳を傾けよう

政治家やお坊さんが長生きの理由は

古今東西の昔話では、カネや権力に目がくらんだ「ごうつくぼり」は、どこかで天罰を受けるなり、改心するなり、痛い目に遭うのが定番です。そういうストーリーを読んで、人のいい人間はスカっとするものです。

テレビ番組でも、悪大名が主役にこらしめられる勧善懲悪の時代劇は人気です。その「悪」とは、決してコソ泥程度の人物ではなく、カネや権力をふりかざした、これも典型的な人物です。

しかし、現実は、カネと権力を握った人ほど健康長寿と言えるでしょう。大企業や大組織で、独裁者とか老害などとささやかれながらもトップに君臨し続ける例はいくらでもあります。

政治家を見てください。70代、80 代でもピンピン、ギラギラしている人のなんと多いことか。昔から長寿の職業として知られるのは僧侶です。

10種の職業に分けた場合、長寿の順に、宗教家、実業家、政治家となっており、寿命が短い職業としては、詩人、小説家、芸術家が並んでいます。

歴史的に見ても、「人生50年」だった戦国時代、天台宗の僧侶・天海は、徳川家康の側近として信頼を得てから3代将軍家光まで仕え、10 7歳で没したと伝えられています。

ほかにも親鸞89歳、一休88歳、蓮如85歳と長寿者ぞろいです。お坊さんが長寿の理由は、心身の厳しい修行をこなし、過食に陥らず生活リズムもきちんとして、精神的に安定している、など理由はいろいろ考えられます。

ただ、カネと権力とはまったく無縁の清貧の世界ではないか、というと実はそうでもありません。宗教界は、宗派内や宗派同士の対立など、水面下では激しい権力争いがくり広げられている闘争社会。その世界でのし上がってきた高僧は、たいてい強烈な個性を持った人物です。

不良長寿の例として、よくお坊さんが登場します。いろいろな分野の方にお目にかかる中でも、お坊さん、特に偉いお坊さんほど、自分に正直に生き、活力もあって話が面白いものです。カネや権力は、人をこの世につなぎとめる強力な磁石となりうるのです。政治家や僧侶に限らず、普通の人も、清貧の暮らしなどと憧れないで、欲を持って生きたほうが健康になります。

また、大きな借金を背負うと寿命が縮みそうですが、カネのことに追われていると意外と長生きするものです。著名人でも、借金をはね返してたくましく生き延びる人が多いものです。