温まるか冷えるかは組み合わせ次第
食材は陰と陽に分かれる
食べ物を、栄蕃素やカロリーの供給源と考えるのが、西欧流の栄養学です。一方、古くから体の冷えに着目してきた東洋では、食べ物や飲み物にも体を温めるものと冷やすものがあることを見きわめ、それらを上手に組み合わせて食べる「食養生」という方法を編み出しました。
食養生の基本をなすのが、陰陽説です。陰陽説は、すべてのものごとは陰陽の二気から生じ、あるいは陰陽の相対的な関係で成り立っているとします。
当然、食べ物にも陰と陽があり、陰は体を冷し、陽は温めます。コーヒーや日本茶は陰、紅茶やホウジ茶は陽というわけです。
一般的に、陰は遠心力をもち、分子活動をゆるやかにし、細胞や体を膨張させて温度を下げます。陽は求心力をもち、分子活動を盛んにし、柵胞や体を引き締めて温度を高めます。
そのほかに中庸という陰陽の中間的な性質もあります。肉、魚、野菜など食材の陰陽を頭に入れ、陽の食材を中心にした食事を心がけて、食べ物からの冷えを予防しましょう。
ただし、栄養面から見ると、陽のものばかりにかたよると、バランスがとりにくくなりますから、陰の食材は温めて食べるなどの工夫をします。
身近な食材の陰と陽、中庸を一覧表を以下に紹介します。これらは、あくまで1つの例ですが、概略をつかむ参考にしてください。さらに、つぎのような食べ物の陰陽を見分けるコツを頭に入れておき、食材選びのときに組み合わせをを考えましょう。
体を温める食材
- 寒い地方でとれる、冬が旬
- 色の黒っぼい、濃い、暖色系
- 地中(下)に向かって成長、エネルギーを蓄えたもの
- 水分が少なく、固い
- ナトリウムが多い
体を冷やす食材
- 暑い地方でとれる、夏が旬
- 色が自っぼい、薄い、寒色系
- 地上(上)に向かって成長し、地上で実をつけるもの
- 水分が多く、柔らかい
た、生野菜や酢の物、冷奴など火を通していない食べ物、冷蔵庫で冷やしたものは、体を冷やします。ファストフードやインスタント食品、ジャンクフードは、ほぼ例外なく、体を冷やします。
食べ物の陰と陽
穀物
陽
- もち米
- 黒米
- 黒豆
中庸
- 玄米
- 黒パン
- 大豆
陰
- 白米
- 小麦
- 大麦
野菜
陽
- しょうが
- たまねぎ
- にんにく
中庸
- じゃがいも
- さといも
- ブロッコリー
陰
- ナス
- 白菜
- ほうれん草
果物
陽
- 桃
- 栗
- さくらんぼ
中庸
- リンゴ
- イチゴ
- ぶどう
陰
- 柿
- なし
- すいか
魚など
陽
- いわし
- かつお
- ぶり
中庸
- さば
- さんま
- たい
陰
- はも
- かに
- うに
肉など
陽
- 牛肉
- 鶏肉
- 羊肉
中庸
- 豚肉
- 卵
陰
- 馬肉
- バター
陰を陽に変える食べ方
陰の食べ物はダメ、というわけではありません。たとえば、パイナップルなどのトロピカルフルーツは陰ですが、陽の食べ物をたくさん食べれば、パイナップルを食べてもいいのです。
要はバランスなのです。また、上手に温めることによって、陰の食材も、心身にいいひと皿に変えることができます。料理の「料」は、はかる( バランスをとる)という意味です。
「理」は陰陽の道。つまり、陰陽のバランスをとりながら、自然の理を体に生かすようにするのが料理なのです。具体的には、陽8割、陰2割ぐらいの割合にするといいでしょう。
あるいは、陰のホウレンソウを、陽の味噌と中庸のゴマであえればいいのです。陰の豆腐も、味噌汁にすれば、体を温める料理に変身する、というわけです。陰陽の調和を端的にいえば、「いろいろな食材を煮合わせればいい」ことになります。
よい例が、ごった煮です。具だくさんの味噌汁や、根菜や鶏肉などを炊き合わせた筑前煮など、「母親の味」は、ごった煮感覚の料理が多いものです。さすがー!お袋の味は体を温める料理なのです。
世界を見ても、ロシアのボルシチ、フランスのブイヤベース、ポトフ、各国にあるシチュー類など、野菜や魚介、肉などを鍋で煮込んだ料理は家庭料理に必ず含まれています。いろんな食材を合わせて調理することが「陰陽調和」につながると、本能的に知っていたのでしょうか。
お酒は陽のつまみと一緒がいい
では、アルコールはどうでしょうか?アルコールは総体的には陰に属するのですが、原料などによって、陰と陽が分かれます。日本酒や赤ワイン、紹興酒は陽で、ビールやウイスキーは陰です。つまみとの組み合わせなどで冷えにくい飲み方、より温まる飲み方を工夫しましょう。
たとえばビールは陰ですが、利尿作用があり、体内のよぶんな水分を排出するので、想像されるほどの体温低下はもたらしません。
ただし、冷えたビールの一気飲みはいけません。つまみを食べながら、時間をかけて飲むようにしましょう。ビールで飲み会をしたら、最後に温かなホウジ茶やソバ茶などを1杯飲むのもおすすめです。
これだけで、体はグッと温もりを取り戻すのです。陰のウイスキーも、お湯割りで飲んだり、陽のつまみであるチーズ、レバーなどと合わせれば、陰陽調和が図れます。
日本酒は陽ですから、お爛をすれば、体を温める働きが増します。漬物、酢味噌など、陽のおつまみと合わせるのもいいでしょう。
赤ワインは陽なので、豊富に含まれるポリフェノールとともに、心身にいい飲み物だといえるでしょう。寒いフランスの冬では、赤ワインを温めた「ヴァンショウ」というホットワインが欠かせないそうです。
冷えやすい人は、ワインを湯煎で温めるか、電子レンジで温めれば、ヴァンショウのできあがりです。シナモンをひと振りすると本格的な味になります。
ただし、アルコール類は、基本的に、飲みすぎると熱を放出するので、せっかく温まった体を冷やしてしまいます。飲みすぎると、体内によぶんな水分がたまり、この水分も体を冷やす原因になってしまいます。
飲みすぎは、陰陽もつまみの工夫も、すべてを台なしにしてしまうことを忘れずに、お酒を楽しみましょう。
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