入浴を活用した健康法にもうひと工夫

湯船の中で大きい呼吸をする

長い時間を入浴に使うのですから、さまざまなリラックス法やストレス解消法を行います。体を温める効果が2倍にも3倍にもなって、心身ともに活力が満ちてきます。

おすすめは、大きい呼吸です。これは、入浴時にかぎらず、少し時間があるときには、深く長い腹式呼吸でリラックスし、心身にエネルギーを補充するといいでしょう。

人前でもさりげなくできるため、打ち合わせや会議の席などで緊張が高まってきたようなときにも活用可能です。大きい呼吸をすると、脳波がリラックスした時と同じアルファ波になることが知られています。

実際、気持ちがとても落ち着いてくることがわかるでしょう。心や体の中にある悪いもの、汚れたものをすべて吐き出すイメージで、ゆっくりと息を吐きます。息を吐ききると、自然に息が吸い込まれる感じになるでしょう。そのとき、へその下10センチぐらいのところにある丹田というツボに空気をためていく感じにすると、胸式呼吸にならず、自然に大きい呼吸ができます。

息を吸うときは、外にあるエネルギーや、清浄な「気」を取り入れるイメージを描くといいでしょう。息を長く吐いて、短めに吸うのがコツです。10秒かけて息を吐いたら、3 ~5秒で吸う感じです。これを2~3 回くらいくり返すのが1セット。朝夕に1~2 セットぐらい行なうと、とても心が落ち着き、うつが去って集中力が戻ってきます。

だし、肩のこりや背中のこりがひどい人は、このような背中をふくらませる感覚はつかみにくいかもしれません。

つぎに、この背中をふくらませる呼吸ができるようになったら、胸をふくらませる呼吸と同時に行なってみます。ちょうど風船がふくらむように、両肺が、前後、左右、上下にふくらんでいくイメージです。
なお、息を吸い込むときは鼻から、吐くときは口をすぼめて、口からゆっくり少しずつ吐いていきます。

効果的な入浴マッサージ

入浴後にマッサージを受けるのも、体を温める効果を倍加します。入浴後でなくとも、やたらにイライラしたり、気分が沈みがちなときは、体がこったり、冷えてしまったサインです。
30分間程度、マッサージを受けると、心身がほぐれ、すっきりラクになります。マッサージをしてくれる相手に体をあずける安心感も有効です。マッサージは、筋肉のこりをほぐすだけでなく、血液循環やリンパ液の循環をよくしヽ体を温める効果があります。

マッサージの好きな人は、電動式のマッサージチェアを自宅に置き、体だけでなく、心の疲れを感じたときも、それに座るとよいかもしれません。

家族のいる方は、肩たたきをしてもらうのがおすすめです。肩たたきは、中国ではあんま術の1つに数えられています。家族に肩たたきをしてもらえばスキンシップを図ることもできます。

肩のこりをほぐすと同時に、互いに気持ちが温まり、イライラや悩みがいやされます。ヨガやストレッチも、マッサージだととらえることができます。ふだんはあまり使わない筋肉を伸ばしたり、縮めたりすることにより、体のすみずみまで血流をうながすので、体がまんべんなく温まります。
ヨガは、脳波をアルファ波優位に導く効果もあり、リラクセーション法の1つとしてもよく行なわれます。

アロマも使うと効果的

お寺のお堂に入るとお香が鼻をつき、しだいに気持ちがおだやかになってきた、という人も多いはずです。お香( アロマ)には、ストレスを和らげ、心をいやす効果のあるものがたくさんあります。

「アロマは心のビタミン」といわれるほどです。アロマテラピーはその効果を生かし、ストレス解消などを図る自然療法です。匂いと脳活動研究の第一人者である先生は、「嗅覚は大脳の辺縁系と強い関連性がある」といっています。よい香りは脳を直接刺激して、アドレナリンの過剰分泌を抑制するので、気持ちがおだやかに調えられ、ストレス耐性高まっていくわけです。

格的にアロマを楽しむには、香油をアロマポットに入れ、ポットを温めて香りをたちのぼらせるという手順が必要ですが、最近は電動式の手軽なタイプも増えていて、もっと簡単にできます。

さらに簡単なのが、入浴時に、湯船のお湯に何滴かを、たらすことです。アロマによって効能は異なりますが、好きな香りを選び、それをベースに目的の効能を持つ香りをブレンドするとよいでしょう。
アロマテラピーの効能・効果はこちら。アロマにもそれぞれ効能、効果がありますから自分に合ったものを使うのがポイントです。

  • イランイラン(鎮静作用)
  • カモミール(不安や緊張を和らげてリラックス)
  • ゼラニウム(憂うつな気分を和らげ、元気を与える)
  • ラベンダー(イライラを解消する

などがあります。

お風呂の医学は免疫力アップ

適度の水圧は体にいい

湯船につかる入浴には、体を温める効果のほかに、風呂の水圧で体を刺激する効果もあります。湯船にしっかり体をつけたとき、体の表面にかかる水圧は、のベ500キログラムからlトンにもなります。

この水圧によって内臓がほどよく刺激され、働きが活発にうながされるのです。また、人間は二足歩行するために、どうしても足に負担がかかります。足には全血液量の約3分の1が集まりますが、この大量の血液を、重力に逆らって心臓に送り返すには、相当のエネルギーが必要です。

疲れてくるとエネルギーが不足してきて、足から心臓に向かう血流が悪くなります。その結果、足に疲労物質がたまってしまうのです。体のなかで、どこよりも先に足が疲れるのは、そのためです。

お湯につかると、その水圧で、心臓に向かう血流が盛んになります。エネルギーが不足していても足の血流がよくなり、疲労物質がとれるのです。これは全身にいえるけんちょことですが、とくに足ではそれが顕著に感じられます。また、お湯の中では浮力が働くため、筋力がゆるみます。筋力がゆるむと交感神経の働きが抑えられ、脳からアルファ波が出やすくなります。
アルファ波が優位なときは、脳がゆったりリラックスし、ストレスを強く感じることもなく、心がおだやかになるのです。

お風呂に入ると「いい湯だなあ」と思わずつぶやき、鼻歌が出たりします。たしかに、お風呂上がりは心身がさっぱりして、ゆううつな気分や、心によどんでいたイヤな感じも出ていってしまいます。これは生理的にも説明できることだったのです。

夜の神経に変わる

熱いお湯に入ると神経が刺激され、興奮してしまいます。そして。しばらくほとぼりを冷まさないと、寝る気にもならないくらいです。

反対に、ぬるめのお湯につかっていると、湯船の中で眠くなることもあるくらいです。ぬるめのお湯にこだわるのは、このような正反対の違いがあるからです。

お湯は、温度によって働きかける神経が異なるのです。熱いお湯は自律神経の交感神経に働きかけます。心身の緊張感が増すので、うつ傾向の人には逆にマイナス効果をもたらすこともあるくらいです。

ぬるめのお湯は、同じ自律神経でも副交感神経に働きかけます。だから、気持ちがゆったりし、少々の心配ごとなど気にならなくなってくるのです。

交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキと、括抗する関係になっています。交感神経は「昼の神経」と呼ばれ、活動的なときに活発に働く神経です。熱いお湯に入って交感神経が活発になると、血行や心臓の働きすべてにアクセルが踏み込まれ、しんばく心拍数が高くなり、血圧も上昇するなどエネルギッシュな状態になり、休まるどころではなくなります。

1日が終わり、これからゆっくり休もうというときに熱いお湯に入ると、心身が再び昼のモードに戻ってしまいます。副交感神経は「夜の神経」と呼ばれ、血行や心臓の働きすべてにブレーキが利き、心拍数はゆるやかになり、血圧も低めになります。心身が緊張から解放され、ゆっくり休息できる状態になるのです。

こうして、ゆっくり休むべきときは休むように導かれます。神経活動もおだやかになり、緊張や不安が解消していきます。「ぬるめ」には諸説があるといいましたが、実際、お湯の温度の感じ方にはかなり個人差があります。37~39度を目安に、自分がいちばん気持ちいいと感じる温度を選べばいいと思います。「自分が気持ちいい」温度が、副交感神経が最も働きやすい温度なのです。

風呂では免疫力もアップする

熟ショックたんばく質(HSP=Heat SHock Protein)という物質の研究が進んでいます。HSPは熱の刺激によってつくられるたんばく質で、ダメージを受けたたんばく質を修復したり、修復できないたんばく質をすみやかに処理したり、新しいたんばく質の生成を盛んにする働きがあります。

HSPが増えるとガンの症状が改善に向かうことから研究が進められているのですが、一方で、HSPには、病気やストレスに対する抵抗力を高める働きもあります。

たとえば、HSPを増やすと不登校の子どもの登校意欲が高まったりするのです。当然、意欲低下に悩むうつ傾向の人にも効果が期待できそうです。H
SPは体温を上げると生成が高まることがわかっており、40度を超える熱いお湯や、本場式の熱いサウナに入ると、多く生成されます。実はこのHSPを活用し、すっぴん肌をより美しくする方法というのがあります。こちらです。

うつを防ぎ、改善するためには、ぬるめのお湯でしっかり体を温めることが基本ですが、週に1回か2回程度、熟めのお湯や遠赤外線サウナでHSPの産生を高めることも悪くないかもしれません。

より速く、確実に、うつや気分の落ち込みを撃退できる可能性があります入浴にかぎらず、有酸素運動など体を温めることは、なんでもHSPの産生をうながします。

朝、起きたらまず、温かい飲み物を飲み、その後、ストレッチャウォーキングをするというライフスタイルを身につけると、HSP産生も盛んになり、気分転換にもなって一石二鳥です。ただ、「うつで、ウォーキングする気力もない」という方もいるでしょうから、基本がぬるめの長風呂であることに変わりはありません。

自宅湯治

半身浴もよい

日本には、古くから「湯治」という民間療法がありました。温泉宿に何日も逗留し、毎日、何時間もお湯につかったり、出たりをくり返して心身を温める治療法です。

湯治では、下半身だけ温める半身浴もよく行なわれます。長時間お湯につかるとのぼせてしまいそうだという人は、おなかから下だけ湯につかる半身浴がおすすめです。

より長い時間、お湯につかっていることができるので、じっくりと体を温めることができます。呼吸器疾患や心臓に不安がある人にも、半身浴がおすすめです。肩までお湯につかる全身浴は、水圧によって心臓などに負担を与える心配があるためです。

腰湯もいいでしょう。やや熱めのお湯に、おへそから下をひたします。おなかや腰を集中的に温めることができることから、生理不順、生理痛、不妊など、女性特有の悩みに効果的だとされています。

漢方では、半身浴と腰湯を、不調の具合や部分によって使い分けているようです。

また「二時間ほどの半身浴をすると、肌がきれいになる」という声も寄せられています。バスタブの緑に腰かけ、足をお湯につけて半身浴をしているつもりの人がいますが、半身浴、腰湯とも、おなかと腰をしっかり温めるのがポイントです。

足だけつけるのは「足湯」といい、足の疲れを取るためには効果的ですが、体温アップは期待できません。なお、半身浴をするときは浴室を十分に温めておき、はじめに全身浴をして体を温めるとか、上半身はタオルをはおるとかして、体を冷やさないように注意しましょう。

低温サウナを使う

サウナも体温を上げる効果があります。80度以上と熱い本場式のサウナよりも、50度前後に設定された低温サウナがおすすめです。

「健康サウナ」とも呼ばれる低温サウナの多くは、遠赤外線を利用しています。遠赤外線は、一般的な赤外線より波長が短く、対象物の組織を壊さずに熱を伝える、保熱効果がある、などの作用があります。

たとえば遠赤外線サポーターで腕を温め、サポーターをはずしてから腕の温度を測ると、30分後、1時間後でもまだ温かいことが実験で確かめられています。

つまり、遠赤外線をサウナと併用すると、相乗効果で、いっそう体を芯から温められます。最近、家庭用サウナとして広く採用されているのは、ほとんどがこの遠赤外線式サウナです。価格も、決して安くはないものの、本場式のサウナに比べたら、かなりリーズナブルです。

本場式のサウナは、80度以上の高温熱気浴です。冷え改善というより、交感神経を刺激して血行や代謝を促進し、疲労回復などを目ざすものでしょう。
高温に身をさらしていると、汗腺や皮脂腺が開いて、大量の汗とともに汚れや老廃物などが押し出されて、気分まですっきりしてきます。

本場式では、高温のサウナと低温の冷水浴をくり返します。サウナの本場の北欧では、秋から冬はきわめて寒く、太陽も短時間しか顔をのぞかせません。

心身とも活性を失ないがちになるので、サウナと冷水浴の組み合わせで血管の拡張と収縮をくり返し、自律神経を刺激して心身の健康アップを図るのでしょう。

しかし、日本人は北欧人とは体質が違ううえに、冷えを改善するのに熱さは禁物です。じつくり温めるという基本を忘れないようにしましょう。

手づくり薬湯の効用

お風呂に温泉成分や入浴剤を入れることは、おすすめです。長くお湯につかるためにもよく、いっそう体が温まりやすくなりますし、日によって入浴剤を変えれば、気分も変わってお風呂が楽しみになります。
全国各地の名湯のエキスをパックにした市販の入浴剤を使って、毎日、「今日は精げろ根の湯」「明日は下呂温泉」などとプチ温泉気分を味わうのもいいでしょう。

全国の名湯入浴剤はこちら。

手作りなら次のとおりダイコンの葉を干したものなど、手近なものを使った手づくり薬湯にも挑戦してみるといいでしょう。

手づくり薬湯の場合は、微妙に効果が入浴剤より高いと言われています。香りのもとが新鮮なため効果も高いのかもしれません。活用している人は意外に多いようです。

  • 大根湯
    ダイコンの葉を日陰で2~3日干したものをこまかく切り、水から湯船に入れて、沸かすか、湯に入れてしばらくしてから入ります。ビタミンA・B1・B2・C・E や、カルシウム、鉄などのミネラル、葉緑素が豊富で、血行促進、保温、殺菌などにすぐれた効果があるとされています。
  • シソ葉
    シソの葉を幹ごと10本程度の束にして、沸いたお湯に入れて、しばらくおいてから入ります。ベリルアルデヒド、リモネン、アルファピネンなどの精油成分が含まれ、冷えのほか、神経痛、リウマチなどに効くといわれています。
  • 塩湯
    江戸時代から海岸地方ではよく行なわれていた入浴法です。本式だと、海水を沸かして入ります。各種ミネラルの効果で体が芯から温まります。一般には、普通サイズの湯船のお湯に、自然塩を30 g(ひとつかみ)ほど入れ、かき混ぜて入ります。
  • 酒湯
    日本酒を入れた湯です。普通サイズの湯船のお湯なら、4合程度を入れます。体を温め、血行を促進し、蓄積した老廃物を取り除く効果があるといわれます。日本酒は上等のものでなくても効果は同じで、専用のものも売られています。
  • マタタビ湯
    マタタビはキウイの仲間のツル状の植物です。このツルを適当に切り、陰干しにして乾燥させておきます。マタタビ湯にするときは、それを鍋にひとつかみと、水適量せんを加えて10分間ほど煎じ、煎じ液をお風呂に入れます。手間はかかりますが、体を芯から温めるといわれ、冷え対策には抜群の薬湯です。
  • ミカン湯
    ミカンの皮を干した「陳皮」は、漢方では薬剤としてよく使われます。入浴剤として使うと、冷え、風邪、腰痛、リウマチなどに効果があるといわれます。ミカンの皮を干しておき、15個分ほどの皮をネットなどに入れ、浴槽に浮かせて、しばらくしてから入ります。ミカンの皮をそのまま風呂に入れてしまうと、皮膚がビリビリしてしまいます。天日で乾かした皮のミカン湯がいいでしょう。
  • カモミール湯
    カモミールの花をふたつかみ分、風呂に入れます。体を温める効果のほかにアロマの作用で精神が安静になり、心からくつろげます。
  • ヒノキ湯
    ヒノキの枝先を5~6本、20センチくらいの長さに適宜切って、鍋に水と一緒に入れて煮ます。この煮汁をこして、風呂に入れるのです。手間はかかりますが、ヒノキチオールという精油成分に精神安定効果があり、ストレスなどで疲れた心身を回復させます。

最初は、30分入浴から開始

冷えをとる3点セットとは

さて、いよいよ冷えを取るための具体的な方法です「体を冷やさないようにね」が、昔の挨拶の1つでした。先人は体を冷やすと気分が落ち込み、病気になりやすくなるということを、長年の経験で知っていたのでしょう。
諸悪の根源「冷え」を改善するために、私は「冷え取り3点セット」と呼ぶ生活習慣をおすすめしています。

  1. 長湯
  2. 体を冷やす食べ物をできるだけ食べない
  3. 頭寒足熱

運動はだれでも考える方法なので、セットには入れず、個別にすすめています。当然、運動もできれば行ったほうがいいでしょう。

この3点セットのうち、はずはお風呂に入ることです。短期間うつ状態から解放され、明るく建設的にものごとを考えられるようになっていきます。
同時に、肩こりや頭痛、風邪をひきやすい、胃腸の具合がよくないといった身体面の不調もどんどんよくなることに驚くでしょう。

体温が1度上がると、免疫力は5倍アップするという医師もいます。とくに入浴は体を温める習慣の基本であり1の長湯はおすすめ中のおすすめです。

入浴の目的が汗や汚れを落とすだけになっている人が少なくありません。入浴のもう1つの目的である「体を温める」ことを思い出し、毎日、しっかり湯船につかってください。試みに、

自分の入浴時間を計ってみると、想像以上の短さに驚くでしょう。ある企業の調査では、日本人の1回の平均入浴時間は、男性が夏で19分間、冬でも25分間、女性が夏で20分間、冬でも28分間なのです。
しかも、これは浴室にいた時間ですから湯船につかって体を温める時間はもっと短いと考えられます。これでは、冷えが改善されないのは当たり前です。

ぬるいぐらいが長湯には最適

体を温める入浴は、熱いお湯ではなく、ぬるめのお湯にじっくりつかることです。料理でも、芯まで火を通し、味を含めるときには、とろ火でじっくり煮込みます。

人と野菜では当然、異なりますが、熱の伝わり方の原理は同じです。「ぬるめ」の温度には諸説があり、「体温プラス4度で、40 度が適温」と言われています。

ところが、多くの人は、「体温プラス1~3度、つまり37~39度」が長湯には最適です。

湯船で2時間楽しむには

湯船につかる時間は、本当は2時間をおすすめしたいのです。しかし、なかなかそうはいかないでしょう。

まずは1日に30~35分間くらいから始めましょう。湯船にまず5分間ほど入り、いったん出て体を洗い、もう一度25~30分間、お湯につかるのです。
時間がある週末などにはもっとゆったりつかり、徐々に延ばしていきましょう。

会社や学校に行けないとか、昼間から部屋に閉じこもることが多いような人には、毎日1時間以上、できれば2時間ぐらい、湯船につかることをおすすめしています。

2時間というちょっと常識外れのような気がしますが、「肩までつかる→半身浴→肩までつかる」をくり返せばよいのです。うつを治している方たちは、実際に37度のお湯に2時間入ることを実践しています。

最初は「2 時間!!」と驚きます。でも、DVDとテレビを見ることができる浴室用テレビを購入し、好きな番組や音楽を楽しむようにすると、2時間の入浴が楽しみになります。

別の方は、毎日子どもをお風呂に入れ、そのあとゆったり湯船につかることで長い入浴を習慣づけたといいます。また、お風呂をカラオケ練習場にして長湯の習慣が身についた方もいます。ボイスカット機能つきの防水CDプレーヤーを使っていたそうです。
何もしないで2時間もバスタイムを過ごすのは難しいかもしれません。
最近の防水DVDプレーヤーはTVも視聴できるのでDVDを使わなくてもTVを見ることができます。

夏の冷え対策は早急に行う

夏だけ冷える人が増えている

最近は「夏だけ冷える」という変な現象も見られます。冬も夏も冷える人、夏だけ冷える人が増えてきているのです。冬に冷えを感じる「冬冷えタイプ」5割と約半数。この割合は50年以上前に行われた調査と変わりありません。

ところが、夏に冷えを感じる「夏冷えタイプ」は、50年前の調査では2割にすぎなかったのが、最近の調査では4割 と、大きく増加していることがわかりました。

「夏冷えタイプ」で「冬冷えタイプ」でもある人、つまり、夏も冬も1年中冷える人は、女性では3割 の高率になっています。女性の3人に1人は、季節を問わず、冷えに悩んでいるのです。

「夏冷えタイプ」で「冬冷えタイプ」ではない人、つまり、夏だけ冷えを感じる人は1割にのぼります。10人に1人は、夏だけ冷えに悩んでいるのです。

1995年に行なわれた別の調査でも、3人に1人は「夏冷えタイプ」とされていて、最近10年あまりで夏冷えが増えていることがうかがえます。「冬冷え」では、手先、足先など、体の先端部分に冷えを感じるケースがほとんどです。
それに対して、「夏冷え」では、肩やおなか、背中など体幹部に冷えを感じる人が多いことが特徴です。夏冷えで困ることを聞くと、眠れない、気分が悪くなる、イライラするなど精神的な症状を訴える人が多いことも注目すべきでしょう。

身体症状には、腹痛、頭痛、肩や腰が痛む、足がだるい、足がつる、生理痛などがあります。

肩こり=冷えの症状

かなり重い冷え性だったことに、長い間、気がつかない人もたくさんいます。たとえば、中学生のころからひどい肩こりに悩んでいましたが、冷えが原因だと思わない人が多いのです。

冷えの強い人の場合、夜中に吐き気がして飛び起きることがあります。肩こりや体のこわばりのひどい人の体にふれると、冷たいのが特徴です。
肩・腰・背中のあたりがスースーする(女性に多い冷えの症状)

子どものころから、夜、寝る時は靴下を重ねてはかないと寝つけないなどの体質の人が多いのも特徴です思い当たる人も多いと思います。

また、冷えを自覚するようになると、温泉に長くつかった何日聞かは肩こりがさほど気にならず、コリのストレスが軽減できます。
はじめは「温泉の成分が冷えと肩こりの両方に効くのだろう」と思ってしまうので冷えとの関連性を考えない人が多いのです。そして、温泉成分の入ったいろんな入浴剤を自宅の風呂に溶かし、毎晩、つかることにしました。それまでの入浴時間は30分ほどでしたが、入浴剤を入れると温泉気分にななって、入浴時間も長くなりました。

ゆったり、のんびり、1時間以上、お湯につかるようになると、肩こりが嘘のようにどんどん軽くなってきました。しかも、どの入浴剤を使っても、効果はほぼ同じようなのです。肩こりにいいのは温泉成分だけではなく、むしろ、お湯にゆったり、長くつかることだ!ということに気づいたのです。

また、「肩こりは冷え性の典型的な症状の1つ。体を温め、冷えを取ることで、ひどい肩こりが解消される。ということなのです。

私の冷え対策

自分が冷え性だと気づいてから、徹底的に冷え対策を行います。体を冷やさないこと、体を温めることに神経を集中するようになるのです。
37度前後のお湯に、2時間ほどゆったり半身浴をするようにしました。体が芯から温まり、非常に効果的でした。

食べ物や飲み物も、体を温める効果があるものを取るようにしました。

たとえば、冷えたビールのジョッキを一気に飲み干すという無茶なことはやめるべきです。

「暑い夏に、それではものたりないだろう」と思うかもしれません。しかし、ビールの本場ドイツをはじめ、ヨーロッパではビールは生ぬるいくらいが普通です。
イギリスのパブでも、ビールは長い時間かけて、なめるようにゆっくり飲みます。それを考えると、ギンギンに冷えていないほうが、「本場風の味わい」が堪能できるのかもしれません。

こうして、体を冷やさず、積極的に温めるようにすれば辛い症状を解消されるでしょう。それだけでなく、気持ちもおだやかになります。

イライラしたり、怒ったり、不安になったりということも解消されます。そんなところから、「体を温めることは、うつなどの気分障害にも効果がある」というのもシンプルな答えです。体を温める行動を起こすと冷えている人などは、その結果は予想以上のものが得られます。

体を温めれば、うつはよくなることを裏づけるデータもたくさんあります。「体を温めれば、うつなどの気分障害は、間違いなくよくなる」という体験的な感覚は本当だったということです。

温めてうつが治った典型例

では、実際に体を温めてうつが治った例です。
体を温めてうつを脱した典型例です。職業は、エレクトロニクス関係の技術者です。毎日、強い緊張と責任のなかで働くストレスから気分の落ち込みが続くようになったといいます。
「毎朝、会社に行きたくない気分と闘うだけで疲れてしまう」と、弱々しい小声で訴えていました。いろいろお話ししているうちに、これはうつは、ストレスよりも冷えがもたらしているのではないか、少なくとも、ストレスと冷えがあいまって、うつになっているのではないかと直感しました。

そこで、「体がどこか冷えることはありませんか」と尋ねたところ、「とんでもない。私は暑がりで、すぐにほてる体質です」といいます。

暑がり、ほてりは冷えの症状の1つです。こちらの患者さんが冷えであることを確信しましたが、本人が冷えを否定するので、次のようにしていただきました。

まず、脇の下に手を入れて、おなかにじかに当ててみるのです。「このときに、おなかがひんやり冷たく感じたら、体の芯が冷えている証拠です」と伝え、「冷えの自覚のない方、とくに男性にはよく、こうして自分が冷えであることを納得していただいているのですよ」といいました。

案の定、こちらの方のおなかも、石をさわったようにひんやりとしており、ご本人自身が驚くほどでした。自分に冷えがあることを納得していただいたあと、「毎日、少なくとも30分、できれば1時間以上、ぬるめのお湯に入ってください。冷たい飲み物は控え、代わりに体を温める飲食物を積極的にとることです」と、こまごまとアドバイスしました。

結局、半身浴と冷たいものを控える食習慣の変更でとても元気になりました。

暑がりな人ほど危険

冷えを自覚できない人が増えている

冷えについても、正しい情報を頭に入れておかなければなりません。冷たいのが冷えで暑いのが冷えではない。という単純なものではないのです。
手足の先や腰など、体の一部が異様に冷たく感じるのが、冷えの典型的な症状です。
体全体が寒いわけではないのですが、体のある部分が、しかもほとんど常時、外気温や室温に関係なく、冷たいのです。それは「体の芯が凍えているのではないか? 」と思われるような冷たさで、外気温を上げたり、冷えの部分を温めたりしても、なかなか冷たさがなくなりません。
経験のない人にはわかりにくいものですが、当人は、冷えのつらさをじっとこらえています。

冷えに関する古典的データは、1956年の調査では、女性の54.5%に冷えの症状が見られています。だいたい半数の女性が「冷え」だという結果です。

これだけ多いというのに、不思議なことに、冷えは西洋医学ではあまり問題にされてきませんでした。「冷え性」にあたる適当な英語はないくらいです。
ところが、欧米人と親しくなり、「冷え性」について説明すると、「あ! 思い当たる症状がある」といい出すのには驚きます。これは、肩こりも同じです。肩こりというズバリの言葉は、英語にはありません。つまり、肩こりという概念がないのです。

でも、症状を説明すると、たいてい「ああ、そういうことはあるなあ! 」となります。つまり、冷えや肩こりが欧米人にないわけではなく、医学的な問題症状として意識したことがなかったのです。つまり、冷えは意識しないと、「症状だ」という自覚が生まれにくいものなのです。

実際には半数でなく大半が冷えている

冷えは男女を問わずあらわれる症状ですが、昔から、女性に多い悩みとして知られています。なぜなら、女性は体質的に体脂肪率が高く、脂肪組織には血流がないので、もともと体が冷えやすいのです。

また、男性ホルモンは体温を上げる働きがありますが、女性の男性ホルモン分泌量は男性よりはるかに少なく、それだけ体温が上がりにくいのです。
これも女性が冷えやすい原因といえます。女性は、2人に1人は冷えに悩んでいるといわれます。しかし、実態はもっと多く、女性のほとんどの人が冷え性か、もしくは冷えやすいという説もあるほどです。

ところが、実際に「あなたは冷えがありますか? 」と聞くと「はい。そうなんですよ」という女性と、「いいえ。私は冷えなんて無関係です」と答える女性は半々の割合です。

「いいえ」と答えた女性たちは、冷えという概念を知らない欧米人と同じなのではないかと私は思います。実際は冷えているにもかかわらず、それを症状だと自覚していないだけなのです。実態としては、ほとんどの女性に冷えがあるのに、半数の女性は自覚ができていないのです。それが、昔から「冷えは女性の50%程度」という数字になっているのだと考えられます。2009年に、ある

民間団体が、20~60代の男女1000人を対象に「冬、最も感じている悩みはなんですか? 」というアンケート調査を行なったところ、「冷え」が21%で、「肌の乾燥」や「風邪・インフルエンザ」を抑えてトップでした。とくに20代では、「冷え」と答えた人は3%にもおよんでいます。それなのに、同じ調査で、20代に「冷え対策をしているか」と尋ねたところ、46%が「なんの対策もしていない」と答えています。

ユニクロを筆頭に、各社が温熱・保温効果のある下着類を発売して、空前の大ヒットになったことは、記憶に新しいところです。レギンスの流行も定着したようです。いずれも、体を冷やしたくないという本能が、無意識に、それらの商品を求めている
のだと思います。

暑がり+冷えの特徴

さきの団体の調査では、男性にも冷えが多いことがはっきりしました。まず、「最も感じている冬の悩み」について、20代男性の25.3% が、「冷え」をトップにあげています。

また「冷えを実感していますか?」という問いには、男性の80.2% が「実感していない」と答えましたが、同時に調査した冷えのチェックリストの回答と照合すると、「実感していない」と答えた人の31.2% に、冷えの疑いが見られるのです。

男性の50% は冷え性か、その予備軍といってよいでしょう。ただ、男性の冷えはわかりにいことがしばしばです。だから、ひどい冷えでも自覚できない人が非常に多く、自分が冷えていると考えたことさえない人が大半を占めています。

男性の場合、体の一部分が冷たく感じる典型的な冷えを示す人ももちろんいますが、「暑がり冷え」が多いのが特徴です。のぼせる、ほてる、ちょっと動くと顔が真っ赤になって汗をだらだらかく、といった「暑がり性」は、実は、体温調節のアンバランスから起こる「冷え」の症状なのです。

体の表面は熱くても、体の芯は冷えています。ほてりや汗は、そのアンバランスを調整しょうとした結果です。根っこには、冷えが潜んでいるのです。こうした「暑がり冷え」は、体の外側(体表)に熱が放散されています。だから体の芯は冷え、体表では、熱をなんとか下げようとだらだら汗をかくのです。

夏、足がほてって、ふとんの外に足を出さなければ眠れないという人は、暑がりではなく、冷えだと断定して間違いありません。たとえば冬山登山などで遭難し、凍死寸前の状態になると、暑がって裸になりたくなる衝動にかられます。それほどひどい冷えになっていても、男性は冷え性なんて女性特有のもの。自分には無関係。と思っている人が多く、無知、無神経、無防備です。

「体がほてる。冷房の温度を下げよう」「暑いのでビールを飲もう」などと、冷えに対して最悪の対応をしてしまいます。

男性は、冷えている現実をもっと知るべきでしょう。うつへの対策も、まずそこから始まります。ちなみに、男女を問わず、肥満で、夏は暑がり、冬は寒がりという人は、ほとんど100% が冷え性です。肥満でセルライト(皮下脂肪のボコボコしたかたまり) がある人は、全身の血流が悪いため、全身が冷えやすいのです。
また、夏は暑がり、冬は寒がりというのは、外気の温度に左右されやすい冷え性の特徴を示しています。

うつは変化している

昔は、うつになる人は少なかった

ここ最近のうつの急増ぶりは、異常なほどです。この10年あまりで、なんと3倍近くにまで増えています。厚生労働省が3年ごとに行なう「患者調査」によると、患者数1996年には43.3万人、1999年には44.1万人とほぼ横ばいでしたが、2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人と、著しく増加しています。

「患者調査」は医療機関を受診した患者数のデータです。うつなどの心の病は受診率が低く、受診者数は実際の患者数の25% 程度といわれます。つまり、実際にうつに悩んでいる人は、300万人近くいることになるといってよいでしょう。

これに、操うつ病(双極性障害) や気分変調症などを含めた気分障害患者全体になると、どれだけの数になるか、恐ろしい気がします。

細菌やウィルスなどによる感染症ではないのに、10年間で患者が3 倍になることなど、これまでの医学常識では普通、考えられません。なぜ、こんなに増えてしまったのでしょうか。

社会環境の悪化は、たしかに原因の1つです。リーマンショックに端を発した世界的大不況は、先が見えないスパイラルに陥っています。厳しい国際競争で、人は減らされ仕事は増える職場がほとんどです。会社は人間の心を無視するかのような要求を出し、ノーをいえば失業が待っているうえ、再就職の道は狭いのが現状です。

これでは、むしろうつになるのが、当然かもしれません。しかし、時間をさかのぼれば、もっと苦しい時代がたくさんありました。深刻な不況は何度もくり返されてきましたし、戦争や極度の貧困なども、そんな遠い昔のできごとではありません。

しかし、そうした時代も、うつはこれほど多くはなかったのです。そう考えると、社会的な要因は、たしかに、うつの原因になりますが、ここまで急増した原因は、それだけではないことがわかってきます。

現代社会特有のなにかが隠れているに違いありません。うつ急増の本当の原因を解明すれば、的確な対策を打つことができます。それは、自殺者の増加や、うつによる社会的損失に悩む現在の日本にとっても、重要です

。各方面で研究が進められているなかで、着目したのが、いままでくり返し述べてきた、「うつと冷えの関係」でした。毎日、医療現場で長年、数多くの患者さんと接してきた実体験が、私に「冷えを甘く見るな!」と訴えているように思えてなりません。
そして、体や心を温める方法をおすすめすると、実際に驚くほどの効果があらわれるのです。冷えを解消すれば、うつの急増にも歯止めをかけられると確信しています。

新型うつの登場

うつそのものも、大きく変わってきています。最近のうつは、新型うつなどと呼ばれ、落ち込みや無気力などの気分障害に加えて、息苦しさや胃痛、頭痛などの身体症状がともなう傾向があります。

また、「まじめすぎて」「几帳面だから」うつになるといった性格による偏向も薄くなり、だれもが、いつでも、うつになるように変わっています。そうなったのも、この10年あまりのことだと感じています。

それ以前のうつは、まず、なにをするにも気分が落ち込み、しだいに無気力になって抑うつ状態が深まっていくケースがほとんどでした。ただし、重い症状が長く続くことはまれで、「3ヶ月もすればよくなりますよ」と、医者はよくいったものでした。一方、新型うつは、身体症状はともなうようになったものの、精神症状は比較的軽く、デブレッション(うつ) とは呼んでいますが、神経症なのか、うつなのか、人格障害なのか、わからない方が増えています。

身体症状としては、息苦しさや胃痛、頭痛のほか、吐き気、めまい、だるさ、疲れやすさ、便秘、下痢、おしっこが近い、じんましんが出る、円形脱毛がよくできるなど、自律神経系の症状がよく見られるようです。

新型うつと従来型のうつの異なるところ

これまでのうつと、新型うつの違いは、ほかにもあります。これまでのうつは、と大きな挫折をしたことが引き金になる場合がよく見られましたが、新型うつは、小さな心理的ストレスが慢性的に続いているうちにだんだまわたん症状がつくられていく場合が多いのです。

まるで「真綿で首を締められる」ような感じだといいます。たとえば、春に就職してストレスがたまり始め、秋ごろから会社に行けなくなるというケースも非常に増えています。まだ、社会人として深刻な挫折を味わうまえに、うつになってしまうのです。

また、これまでのうつは、「自分には生きている価値がない」と訴えるなどの自責傾向が強かったのですが、新型うつは「自分はこんなに苦しんでいるのに、周囲はわかってくれない」などと、周囲を責める他責傾向のほうが強くなっています。そして、症状の訴え方がステレオタイプ(紋切り型)で、医師の所見よりオーバーです。

さらに、これまでのうつは、あらゆることにやる気を失なうのが特徴でしたが、新型うつは、そうではありません。仕事はやる気にならないけれど、ゲームなら夢中になれるというように、意欲に極端なムラが出るのです。感情のムラも目立ちます。

昨日は意欲的にやれたことが、今日はやる気になれず、そんなできない自分に傷つき、悩むのです。このように、新型うつは、周囲から見たら、わがままで、どう扱っていいかわかりません。でも、本人はひどく傷つき、苦しんでいるのです。

なんでもない他人の言葉や行動に深く傷つき、突然泣きだすなど、感情のコントロールがきかなくなってしまうのです。うつの症状には、1日のうちに軽くなったり重くなったりする「日内変動」があります。これも変わりました。

これまでのうつは「午前中は最悪だが、夕方から夜になると症状が軽くなる」のが定番でした。新型うつでは、これが逆転し、「午前中は症状が軽いが、午後から夕方に向けて、とにかく疲れやすく、やる気がうせてしまう」というケースが多くなりました。

うつにつきものの睡眠障害も逆転しました。これまでのうつは、朝早くに目が覚めてしまい、それからは眠れないものでした。しかし、新型うつは、朝なかなか目が覚めません。逆に、夜は寝つきが悪く、「入眠障害」を訴える方が多くなっています。

新型うつの症状のチェック

これまでのうつにも、新型うつにも共通するのは、いつも大きな不安を感じていることです。しかし、新型うつでは、「私は不安でたまらない」と訴える人ばかりではなくなりました。
息苦しさ、イライラ、過食や過眠、拒食や不眠など、不安がさまざまな身体症状に形を変えて、あらわれることが多いのです。

自分や周囲にうつの症状がある方は、自己チェックしてみるといいと思います。先にふれたように、これまでのうつは、症状は重いものの、比較的短期間で寛解する(症状がほぼおさまる)という安心感が医師にはありました。

ですが、新型うつは、症状こそ、これまでのうつに比べて軽めであるものの、寛解までに時間がかかりがちです。5~6年かかる人がまれではありませんし、
なかには10年程度の治療を要する方もいます。抗うつ薬が効きにくいことも多いのです。そういう新型うつが増えているからこそ、なおさら精神科医療にたずさわる私たちには、どううつと向かい合い、どう治療したらよいのかという問題が、ずしりと大きくなっているのです。

このように書いてくると、お気づきのように、新型うつには、その根っこに冷えが大きく関係しているとしか私には思えないのです。したがって、冷えをなくし、体と心をじんわり温める方法は、新型うつには特に、また、これまでのうつにも、きわめて有効だ思います。

うつの症状チェック

精神症状

  • これという理由がなく気分が落ち込み、悲しい
  • 不安感がある
  • 焦燥感がある
  • 集中や判断ができない
  • ものごとを考えるのがめんどうだ
  • 記憶力が落ちた
  • 意欲や自信がなくなった
  • 根気がなくなった
  • 口数が少なくなった
  • 人と積極的に会いたいと思わず、服装もどうでもよくなってしまった

身体症状

  • 寝つけず、ちょっとした物音で目が覚めてしまう
  • 朝、早く目が覚める
  • 肩、首などがこりやすい
  • 目が疲れる
  • 頭が重い
  • 体が鉛になったような異様な疲れを感じる
  • 食欲がなくなった
  • 性欲がなくなった
  • 笑わなくなった
  • 便秘・下痢をするようになった

自律神経症状

  • 吐き気がする
  • めまいがする
  • 理由なく動悸が激しくなる
  • 胸が締めつけられるような感じがする
  • 微熱がでる
  • じんましんが出る
  • 円形脱毛症になった

自分にあてはまる項目の○印をつける。○の数が、精神症状、身体症状にそれぞれ3つ以上、自律神経系症状に2つ以上ついたら、新型うつの可能性があると考えられる。

自律神経は冷やさない

自律神経と体温

ポカポカと陽気のいい日は心も明るく元気で、「今日も張り切っていこう」とやる気に満ちています。反対に、冷えて寒い日は身も心も縮こまって、「億劫だなぁ」と、やる気がなえてしまいます。

体温と気分、体温と心の状態にも、同じような関係性が見られます。なぜなら、体温の変動と自律神経の働きには深い関係があり、体温が下がると自律神経の働きが低下するからです。

体温は周期的に変動していて、夜中の午前2~4時ごろが最も低く、明け方に向かって徐々に上がっていきます。起床後も上がり続け、午後2~6時ごろ最高になります。
それからは徐々に下がる、というリズムです。自律神経の働きは、この体温の周期的な変動を、少し遅れて追いかけています。

体温が高くなると、自律神経の働きが徐々に活発になり、反対に体温が下がると、自律神経の働きも徐々に低調になってしまう、という相関性があるのです。

この「体温が下がると自律神経の働きも低調になる」という相関性から見て、ふだんから体温が低い人は、自律神経の働きが低調だと推測できるのです。

自律神経には、体や神経の働きを活発にする交感神経と、反対に体や神経の働きを抑制する副交感神経があります。この2つの神経が、必要に応じて優位性を切り換え、内臓や内分泌腺などの働きを自動的にコントロールしています。

人間には、精神的なトラブルなどのストレスがあっても、つねに心身を一定の状態に保とうとする「ホメオスタシス」という機能があります。ホメオスタシスをになっているのも自律神経ですから、自律神経の働きが低調だと、ストレスにも弱くなると考えられるわけです。体温の周期変動による最低体温と最高体温の差は0.5~1度ですが、1度の温度差がもたらす影響はかなりのものです。

たとえば、ふだんの自分の平熱から急に1度体温が上がると、一時的に頭がボーッとして仕事や家事にもさしつかえるのではないでしょうか。

なぜ冷えは万病のもとになるのか?

ストレスが加わる→自律神経の働きが低調になる→ストレス耐性が弱くなる→自律神経の働きがいっそう悪くなる→ストレス耐性がますます弱くなる…という負のスパイラルに入ってしまうと、その影響は体温にも及びます。自律神経は体温調節をつかさどっているからです。

ストレスが続いて体温調整がうまくいかなくなると、体のあちこちに悪影響が出てきます。私たちの体内の酵素の活動が最も活発になるのは、体温が36.5度以上のときです。また、血流や臓器の機能が最大化するのも36.5度以上といわれています。自律神経は、1日の体温変動のなかで、酵素や血流、内臓が活発に働くように体温を調整しています。それがうまくいかなくなるのですから、体に悪影響が出て当然なのです。「ストレスがたまると自然治癒力が弱まるようだ」と感じることはないでしょうか。

それも、ストレスによって体温調整がうまくいかなくなった結果だといえます。「ストレスで食欲がない。体がだるい」と感じることもしばしばだと思います。それも、体温調節がうまくいかなくなって血流がとどこおり、内臓が不活発になった結果です。

「ストレスは万病のもと」といわれる通りなのです。私たちは体温が上がる(熱が出る)ことには敏感です。体が不調だと、まずは熱を測ります。「熟はないのに、食欲がない、体がだるい、自然治癒力も弱まった気がする」という場合は、低体温になっていることがほとんどです。
だから、「冷えは万病のもと」といわれるのです。低体温にも、もっと気づかう必要があります。

うつと自律神経失調症

自律神経の働きが、はなはだしく低調になると、自律神経失調症につながっていきます。自律神経失調症とは、「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査ではけんちょ器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害がないもの」だと日本心身医学会は定義しています。

わかりやすく身体症状をあげると、倦怠感、疲れやすさ、食欲低下、不眠、浅眠中途覚醒(すぐ目が覚める)、朝起きるのがつらいなどといったことです。
精神症状をあげると、不安、落ち込み、イライラ、集中力や注意力の低下、やる気がなえる、ちょっとしたことが気になってしまうなどです。自律神経失調症の症状と、うつの症状はかなり共通部分が多いことがわかります。こういう症状があるのに、これといった原因が見つからないとき、自律神経失調症と名づけています。

なお、「不定愁訴」とは、どこが悪いわけでもないのに、いつもだるくて疲れやすい、頭が重い、不安感やゆううつ感がある、突然涙ぐむなど精神的な不安定といった症状をさします。これも、うつとよく似ています。不定愁訴は手足の冷えがともなうことが多いのですが、それもうつとの共通点といえるでしょう。

体温が下がると自律神経の働きが低調になり、自律神経失調症に似た症状があらわれ、それをうつだと感じたり、そこからうつが始まったりすることが多いのです。

脳内物質が凍えてしまう

脳科学の成果からも、低体温とうつとの関係が見えてきました。ベータ体温と、うつに関係の深い脳内物質であるセロトニンやβエンドルフィンなどとが相関していることがわかってきたのです。とくにセロトニンは重要な脳内物質で、うつはセロトニン不足が原因の1つだとされています。うつの人の脳は、セロトニンが分泌されにくくなっていたり、あるいはせっかく分泌されたセロトニンを神経細胞が受け取る働き(受容)が低下している傾向が見られるのです。

このため、抗うつ剤の多くがセロトニンを分泌させたり、受容しやすくしたりといった調整にかかわるものにななっています。しかし、抗うつ剤に頼らなくとも、セロトニンの分泌を活性化する簡単な方法があります。その1つが、朝の太陽を浴びることです。

もう1つは、リズミカルな運動をすることです。朝の太陽を浴びることは、体温の周期変動をうながして上昇させます。運動が体温を上げることはいうまでもありません。体温を上げればセロトニンが盛んに分泌されるという単純な関係ではありませんが、相関関係は深いわけです。

また、セロトニンが不足すると、脳の体温調節機能がうまく働かなくなり、低体温になります。うつの方に低体温が多いのは、脳のメカニズムからも解明されているのです。

また、体温が高くなると、神が与えた快楽物質といわれ、幸せな気分にしたり、疲れを忘れさせてくれる脳内物質であるβ-エンドルフィンの分泌が盛んになることも知られています

うつといえば「社会環境」「ストレス」「脳内物質」「本人の性格」といった原因を連想するように刷り込まれてきています。これら4つの要因は間違いではなく、原因としてあるでしょう。ただ、これらの要因のさらに底にあるもの、あるいは要因を包括するものとして、「冷え」が存在することを確認しておきましょう。

自分がどの程度冷えているかの指標となる「冷え度」をしっかりつかむ

現代人は多くの人の平均体温が下がっている

通常、私たちは、熱があると、病院に行ったり、薬を飲んだりします。ですが、体温が低いからといって「危ない」と考えたり、対策を講じたりすることはまずありません。

かし、低い体温は、高熱と同じように、心身の危険信号です。しかも、日本人の平均体温は、50年前に比べて1度近く下がってしまっています。
体温は、これまでとかく軽視されてきました。また、1日のなかでも変動し、年齢や性別、測定部位や測り方で差が出ることもあって、厳密なデータが不足しています。そんななかで各種の数字を総合すると、50年前の平均体温は36.9度でした。

変動を考慮した「正常域」は、36.6~37.22度前後でしょう。前は平均体温もずいぶんと高かったのです。。最近の平均体温は36.00度あたりとされています。「自分は体温が高いほうだ」という人でも、せいぜい36.2度ぐらいなのです。

うつの方の場合には、さらに低く、35 度台が圧倒的多数です。驚くことに、34度台の人もいたりします。人間の体温は、主に体のなかでつくられる熱エネルギーによって保たれています。

平熱より体温が高い状態は、体内でエネルギーを盛んに燃やし、活性を高めて細菌などと闘っている状態を示しています。逆に、体温が低いのは、体内のエネルギー活動が不活発だからです。

また、私たちの体内では、生命活動を維持するために、000種以上のさまざまな酵素が活動したり、化学反応が行なわれたりしていますが、それらに最も適した温度が37~38度といわれています。体温が低いと、酵素の活動が不活発になり、化学反応も遅れがちになってしまうのです。

血流がとどこおり、内臓が活発に働けず、体調不良になつたり、眠くなったり、だるくなったりします。悩も内臓の一部分と考えれば、そういう影響をもろに受けてしまうのです。ちなみに、一般に体温とは脇の下などで測る「外層温度」をいい、内臓レベルの体温である「核心温度」より低く測定されます。ですから、いわゆる体温が34度でも、低体温症となって生命に危険が及ぶようなことはありません。

暑い夏でも膝掛けが売れる

あなたも、体温がちょっと高いと心配するのに、下がることには無頓着なのではないでしょうか。病院で体温を測り、「35.5度ですよ」と、昔の水準からいえば相当低いことをお伝えしても、多くの方が、ほっとした表情を見せます。反対に「37度ですね」とと、昔の水準からいえば正常域にあることを伝えると、とたんに「熱があるんですね?」と顔色を変える方が珍しくありません。

体内のエネルギー活動や酵素の活動、化学反応が不活発では、だるく、やる気がなくなり、精神的な抵抗力も弱くなってしまいます。
この状態が続けば、ストレス耐性が弱まり、うつも長期化、定着化するのは道理といえます。

今は、下半身をおおう膝かけとか、厚手のソックスなどは、夏の必需品うです。エコ対策で冷房温度を28度程度に、といっても、建物の構造上、均一に冷えるわけではなく、場所によっては1日中冷えているうえ飲食店やデパートなどは相当強く冷房をきかせているからだといいます。OLなどは、お気に入りのレストランで冷房が効きすぎない場所の席をとります。

冷えのセルフチェック

日本よりも暑いインドや中近東では、温かなチャーイ(お茶)を飲むのが習慣で、日本のように、冷たい飲み物を日常的にがぶ飲みすることはありません。

暑いからこそ、体力を落とさないように、冷たいものを避け、温かいものを飲んでいるのです。また、最近では、とくに若い女性の間で温泉めぐりがちょっとしたブームです。健康ランドなどの大浴場も人気スポット化しています。

このブームの理由を、体からの警鐘ではないかと感じています。日ごろから体を冷やす生活をしているために、体が「体を温めたい。体温を上げて、ストレスに疲れた心身をいやしたい」と声をあげ、その声が無意識のうちに人を温泉や健康ランドに向かわせているのではないでしょうか。最近は運動ブームでもあります。ランニング、ウォーキング、スポーツジム、ヨガなどをやる人が着実に増加しています。文部科学省が毎年発表する「体力・運動能力調査」でも、各年齢層で、握力や上体起こしなどの数値の向上が見られます。

これも、蔓延する運動不足に体が悲鳴をあげているからだと思うのです。実際、せっせと体を動かしていた時代は、うつは少なかったのです。積極的に体を動かすようにすると筋肉から男性ホルモンが分泌され、体温が上がって、気持ちが元気になってきます。

しかし、残念ながら、思い立ったように温泉に出かけたり、たまにスポーツで汗を流す程度では、習慣化してしまった「冷え生活」の害を防ぐことは困難です。

防ぐには、もっと根本的な対策が必要なのです。つまり、もっと効果的な方法を知り、日常的な習慣を変えることです。その前提に「自分は冷えている」と認識することが大切です。そもそも自分が「冷えている」と自覚しているのは、女性でも半数程度で、男性は、そのほとんどが自覚ゼロといえるのです。

冷えのチェック
  • 手足が冷えていて、なかなか温まらない
  • ほてりやすい半面で、手足、とくに足先が冷たい
  • 30分以上の半身浴が肉体的に苦痛
  • 肩こり
  • 頭痛
  • 平熱が36度以下
  • 低血圧
  • トイレが近い
  • イライラしやすい
  • 顔色が悪いとよく言われる
  • 目の下にクマができやすい
  • 下腹がぽこりでている
  • ダイエットをよくする
  • 掌が赤い
  • 脇の下よりおなかのほうが冷たい
  • [女性]生理不順ぎみで、生理痛がひどくてイライラする
  • [男性]性欲減退や勃起不全
  • 下痢・便秘をしやすい
  • だるいことが多く疲れやすい
  • 姿勢が悪いとよく言われる
  • だるいことが多く、疲れやすい
  • 仕事や家事などのやる気がなかなか起きない
  • 1 日に3杯以上、お茶やコーヒーを飲む
  • 果物をたくさん食べる
  • 水や清涼飲料水を1 日に1リットル以上飲む
  • 口が乾いて、冷たいものや甘いものをよく飲む
  • シャワーですませることが多い
  • 体を締めつける下着を着ることが多い
  • 睡眠時間が6 時間以下
  • 朝、なかなか起きられない
  • 3~5…要注意。これ以上冷えないように生活習慣を見直す
  • 6~9個…冷えている。冷え対策が必要
  • 10個以上…かなり冷えている…重度の冷え。覚悟を決めて徹底的な対策が必要。

現代人は、ストレスと冷えのダブルパンチで自律神経が乱れている

ぬるめのお風呂に30分入って調子がよくなる

「体を温めるように意識しはじめて3ヶ月。どんよりと心身を苦しめていた落ち込みが減り、人に会う気力もわいてきました。今日はことに気分が明るく、「資格を取ろう」「勉強をしよう」という目標が立ったのですよ。

これまで「自分は、いらない人間なのではないか、自分なんか、いなくなったほうがいいんじやないかと考え、泣いて泣いて、泣き続けた日もあった」というほど、うつに悩み病院を受診して、抗うつ剤を飲んでも、いっこうに好転しない。そんなある日、ご家族にひきずられるようにして、セミナーに連れてこられたといいます。

私は以前から、うつの方や、気分が不安定になりがちな方、ストレスが重い負担になつている方などを対象に、毎月、セミナーを開いています。そこでいつもお話するのが「体と心の冷えが、うつの大きな原因になっている」ということです。

そして、体と心の温め方、とくに、これまで指摘されることが少なかった「体を温めるうつ対策」についてくわしく説明しています。それを実行した方のほとんどが、みるみる症状が軽くなってくるのには、この私さえ驚くほどです。

この方は、ぬるめのお風呂に毎日、長時間入るという方法を実行に移しました。その結果、いまでは抗うつ剤も不要になり、真っ暗に見えていた未来が明るく開けて きたといいます。一度も診察をしたことのない、ただ私の話を聞いて実践しただけの方からそんな報告をいただき、私は「うつは体を温めればラクになる」という確信をいっそう深めています。

現代人の冷えは異常

うつは近年、急速に増えています。原因は、よく、「世界的な不況だから」「競争がますます激しくなってストレスがきついため」「脳内物質のアンバランス」「本人の性格」などといわれます。たしかに、それらも原因ではあるのです。

でも、もっと大きな原因が見落とされていると、私は思います。それが「冷え」です。現代人の体は、はてしなく冷えています。現代人の冷えの一番の原因はストレスです。ストレスは、それ自体がうつの重要な原因となりますが、同時に体を冷やすことによって、うつを悪くしているのです。
冷えのつぎの原因は、食です。冬でも、「とりあえずビール」「アイスクリームが食ベたい」と冷たいものを通年で口にしています。あるいは、以前は温かいお茶が出ていた場所で、いまはペットボトルの冷たいお茶が出るようになっていませんか。

住環境も問題です。エコロジー、省エネルギーといいながら、ガンガン冷房をきかせたオフィスや商店がまだまだ多すぎます。ファッションがそれに追い打ちをかけます。若い女性は肩や胸を大きく出し、冬でもミニスカートにナマ足だったりします。

男性も、ズボン下やアンダーシャツを嫌う人が増えています。忙しさにかまけて湯船で温まらず、シャワーですませるといった生活習慣も、知らず知らずに体を冷やしています。さらに、運動不足。体温の40%を生み出す筋肉運動が足りないのでは、温かい体は遠ざかるばかりです。

男性には、「冷えは女性のもの」と誤解して、対策をとらない人が多く見られます。しかし、男性には冷えが多いのです。ただ、あらわれ方が違うだけです。たとえば、汗っかき、暑がり、体がすぐにほてるといった人は、冷えとは正反対の体質だと思っしんているでしょう。しかし、違います。実は、これらは、体の芯が冷えていることを示しているのです。

30~40代の男性に、とくにうつの増加が目立つのは、冷えに対して無防備だからではないでしょうか。体の冷えが心の冷えを誘発して、あるいは体の冷えと心の冷えがかけ算になって、うつが増えているというのが、クリニックで長年、患者さんに接し続けてきた私の実感です。不況や競争社会などで社会が冷え冷えしていることにばかり目を向けず、心身の冷えを改善することが大切です。

冷えのスパイラルを抜けよう

夏は涼しく冬は温かい理想の暮らしを手に入れたのに、それがかえって心身の健康を保ちにくくしているのは、なんとも皮肉な現象です。でも、考えれば、私たち人類の500万年とされる長い歴史で、冷房や、夏でも冷たい飲食物が行き渡る環境が実現したのは、ほんの最近の50~60年のことでしかありません。

たとえば自律神経から見ても、これは異常な事態です。500万年の問、私たちの自律神経は、寒いときは体内でエネルギーを盛んに燃やし、暑いときは汗をだらだらかいて体温を下げようとするなど、自然環境に即した生物としての人間の機能をつかさどってきたのです。

しかし、最近50~60年の衣食住は、自律神経がとまどうようなことだらけです。自然のなかで暮らしていたころに比べると、私たちは、生物として不健康になっているということを自覚する必要があるでしょう。現代の快適な文明を拒否しようというのではありません。
ただ、現代の暮らしは生物的には不自然であり、心身の変調を招きやすいといいたいのです。ただでさえ、私たちはストレス過多の暮らしをしています。ストレスと自律神経の関係は、自律神経の働きが弱まるとストレス耐性(ストレスをはね返す力)が弱まり、すると同じストレスを過剰に感じるようになって、ますます自律神経の働きが悪くなる…という負のスパイラルになっています。そのスパイラルを加速する要素を注意深く見つけ、ひとつひとつ改善していくのが、うつの急増時代を生き抜く知恵です。