自分を変える

人間関係イコール自分関係

気分が滅入ってしまう理由のほとんどは、人間関係です。うつは、まきわりの人との軋轢から逃げだしたい一心で、自分のなかに自分を封じ込めている状態だともいえるのです。
意外なことに、解決の鍵は他人との関係ではなく、自分との関係を見直すことに潜んでいます。人間関係は、自分が自分をどう見ているかを、そのまま反映しています。

人間関係を温かいものにしたいなら、まず、自分を見つめる目を温かくすることです。大らかに他人を受け入れられる人は、自分も大らかに受け入れているものです。他人との関係性がうまい人は、自分との関係性がうまい人なのです。

イライラしていると、他人のなんでもない言動までとがめだてしたくなります。石ころにつまずいて転んだら、「ここに石があるのが悪い」と、石のせいにしたくなります。

逆に、うれしいことがあって心が浮き立っていれば、たとえ足を踏まれても、「足を出した自分が不注意だったかも」とおおらかに考えることができます。

ですから、人との関係がぎくしゃくするのは、自分に問題があるからなのです。つまり、うつの方は例外なく「自分はダメな人間だ」「こんな自分が情けない」「もう少しましな人間に生まれたかった」などと自分に否定的な感じを持っているのです。

「自分のことが好きですか? 」と尋ねると、「そんなわけがない」という反応で、なかには、「自分なんて嫌い。大嫌いだ」と怒り声になる人もあるくらいです。

そこで、まず、自分へのまなざし、つまり自分に対する価値観を変える必要があります。そこを変えなければ、なにも変わっていきません。あなたを変えることができるのは自分自身だけです。他人が変えることはできません○たとえ親子でも、親ができるのは、「こういう点がよくないのだから、直すように努力してほしい」「いまが大事なときなのだから、全力投球すべきだ」などといい聞かせることぐらいです。本人がそれを理解し、自分自身で行動を変えなければ、なにも変わらないのです。

人間関係を好転したいのなら、相手を変えようと努力するより、自分が変わる王道に向かうことです。

自分に温かい日を向ける

多くのの人は、自分に点数をつけてもらうと、「30点ぐらい」といいます。よくて60点です。なぜ、「自分は100点」といい切らないのでしょう。

仕事や学業の成績のように、だれかと比べるわけではないのです、自分自身に対する自己評価は満点をつけてもいいのではないでしょうか。私は、うつの方には、自分をとことんほめるクセをつけることをおすすめしています。ほめるポイントは、当たり前のこと、どうでもいいところをほめることです。「朝ちゃんと起きている」「ご飯を上手に食べている」「新聞をちゃんと読んでいる」「迷わず駅まで歩いている」といった、いまやっている一挙手二投足をほめちぎるのです。

ロボット工学の進化は目覚ましいものがありますが、これだけのことをできるロボット開発には、莫大な資金と相当な時間がかかるでしょう。
開発されたとしても、膨大な制御装置を必要とするはずです。人間のようなサイズに収めることは困難です。

自分は、それらを難なくやってのける能力を持っているのです。そんな自分がなぜ30 点なのでしょう。スムーズな二足歩行ができるというだけでも100点満点をあげ、大いにほめる価値があります。

「以前の自分はもっと仕事ができた。最近は気力が弱って力を発揮できない。そんな自分が受け入れられない」という悩みもよく聞きます。まじめで責任感の強い人ほど、努力すること、仕事ができることを評価し、力が落ちた状態の自分を非難するのです。田でも、自分が弱っているなら、なぜ、よけいにやさしく温かく見てあげないのでしようか。がんばれた自分と、がんばれなくなっている自分。前者は評価し、後者は卑下する。二者を峻別するのは、会社や社会の価値観そのままです。会社や社会は、個人とはまったく別の価値観で動いているものです。
だからこそ、自分が自分を見るときは、そうした価値観を離れ、自分に温かい視線を注いであげましょう。

自分の存在を否定しない

大事なことは、いちばん苦しく、みじめな最悪の自分を包み込み、ごく当たり前のことができるだけでも大いにほめる姿勢です。たとえば、子どもがなにかいたずらをして、お母さんにしかられたとします。このとき、子どもは、しかられることで二つのメッセージを受け取ることになります。「あなたのしたことは悪いことだから、もうしてはいけない」という行為への注意と、「あなたはダメな子」という存在の否定です。これは、自分が仕事で失敗して上司に叱責される場合を考えてみると、よくわかります。

たとえば部長にきつく叱責され、「君のようなスタッフがいると、チーム全体が足めんばを引っ張られることになるんだ⊥ と罵倒されたとしましょう。
あなたは、「もうこの部長は、自分のことをダメな部下だと思ったに違いない」と感じて意気消沈するに違いありません。しかし、課長から「あのあと部長がいっていたよ。期待しているから、あんなにきつく叱責したんだ、とね」と聞くと、とたんに安心してうれしくなるでしょう。

これを自分に置き換えてみると、どうでしょうか。失敗したり、みじめな自分を嫌うことは、自分の行為ばかりか、存在をも否定することになってしまうのではないでしょうか。どんな自分も自分です。それなのに、いいときの自分は受け入れ、失敗したときの自分は受け入れないのは、おかしいと思いませんか。どんなときも、自分を100% 受け入れることです。修正が必要なときも、いったん受け入れたうえで、そこから修正を始めましょう。

そうすれば、自分をとことん追い込んでしまうことはありません。自分を受け入れる方法の1つが、「自分ほめ日記」をつけることです。どんな日も、日記にまず、「今日もよくやった」と書くのです。うまくいった日は「われながらよくやった」と書き、失敗した日は「失敗をあの程度でくい止めたなんて、われながらよくやった」と書きます。毎日、「よくやった」の連続です。こうした積み重ねにより、つねに自分を絶対肯定する力をつけていくのです。

もう少し自分本位になる

病気も役立つ場合もある

「積載量5トンのトラックに10トンの荷を積み込み、全速力で走らなければいけない。そう思い込んでいたのです。実に苦しかったですね」とは、うつの患者さんから聞いた言葉です。

苦しみながらも走り続けないといけないという思い込みが、病気の根本原因だということに気づかれましたか? なぜ、10トンもの荷物を積んで走り続けなければいけないと思ってしまうのでしょうか。「それが仕事だから」「いまの社会では、そうしないと通用しないから」「責任があるじゃないか」「人に負けたくないから」

本当にそうでしょうか。それ以外に生き方の選択肢はないのでしょうか。

病気になったのは、つらさが心身のキャパシティを超えてしまったためです。いくらしなやかな木の枝でも、曲げ続けるとポキンと折れてしまいます。

病気になったいまは、それまでがんばって築きあげてきた世界がくずれ去ってしまったむなしさを感じるでしょう。社会から置いていかれる不安も大きいと思います。その気持ちはわかります。

でも、病気になったいまこそ、それまでいちばんだと思って続けてきた生き方を見直してみるチャンスなのです。うつにかぎらず、病気は生き方のゆがみや無理に気づかせてくれるサインだと私は思っています。そして、生き方を変えることは、本人にしかできません。

医師も家族も、側面援助や後方支援しかできないのです。病気、とくにうつや生活習慣病は、「自分で治す。という自覚が必要です。病気が教えてくれた生き方の間違いを率直に受け入れ、自分の努力で自分を変えていくことが大切です。

治療の主役は自分自身です。「病気になってよかったですね。自分の生き方のゆがみに気づくチャンスを与えられたのですから」。むしろ、そういってあげたいくらいです。

意欲がそがれる、モチベーションが維持できなくなる、人と会うのが嫌だといったうつの症状は、トラックがオーバーヒートしているのと同じです。いったん小休止し、じっくり考えてみましょうということなのです。ふだんの生活で、自分はなにをいちばんつらいと感じているのか。つらいと感じないようにするには、どこをどう直したらいいのかを考えるのです。

実際に、患者さんのなかには「いったい、これまでの自分の生き方はなんだったのだろうか、とつくづく思う」といい出す人がよくいます。つらいほど重かった荷物をおろすために、有給休暇をまとめて取り、海辺の温泉に滞在型の旅行をしてきた方がいます。
「旅先で見た海に沈む夕陽が本当にきれいだった。これまでは、そうしたことに目を向ける余裕もなかったんですね」といっていました。こうした気づきを得たのは心が不調になったからです。ろしい結末に陥っていたかもしれません。

自分をラクにするために

心や体に不調がある人に、理由を聞くと、だれもが「ストレスが強くて」と答えます。そこで、ストレスの正体を見きわめてみましょう。
ストレスとは、なんらかの刺激を受けて、生体に生じたゆがみのことです。人の心も外の影響でゆがんでしまうのです。ストレスは、元来は物理学用語でした。

たとえば、やわらかなポールを手で押すとくほんで妙な形になります。この現象がストレスです。このとき、外部から加わる力をストレッサーといいます。

人のストレッサーはなんでしょうか。ほぼすべての場合、仕事、そして上司や同僚、家族、友人、恋人など、自分以外の人間から加えられる刺激だといってよいでしょう。

人の目や社会の評価を気にするあまり、長い間、自分を押えつけています。その結果、疲弊期に達し、体温が低下し、神経活動が全般的に鈍くなり、動かなくなってしまった…それがうつであり、心の不調です。もっと自分本位であっていいのです。
そうでなくても、社会にはいろいろな縛りがあるのです。自分が自分の味方になって、自分を守ってあげることが大切です。私は「自分を解放することが第一ですよ」とくり返しお話しています。

人と比較しない

だれだって、自分がいちばん大事だと考えているつもりでいます。ところが実際は、自分よりも、他人の価値観に左右され、本来の自分が望んでいること、やりたいことを見失なってしまっていないでしょうか。

これでは、決して自分を大事にして生きているとはいえないのです。人は社会的な生き物です。社会と断絶し、孤立して生きていくことはできません。

だからといって、判断が社会や他人に引きずられてはいけないのです。テレビで高校生が答えるクイズ番組を見ていたら、1人が「医学部受験を考えている」といいます。理由を尋ねられると、「偏差値がいちばん高いのが医学部だから」がくぜんというのです。博然としました。

世間的な評価を自分の判断基準にしているわけです。将来を決める大事な選択を、他者との比較のなかで決めることに、なんの疑問も感じていないのです。もう少し、主体的であってほしいと思います。

偏差値をものさしにして考えるクセがつけられて、自分の進路を決めるときでさえ、人と比べてどうであるかが最初にくるのは悲しむべきことです。
私たちも、子どもをしかるとき「そんなことをすると、よその人に笑われますよ」「恥ずかしいからやめなさい」などといわないようにしたいものです。なぜなら、そういういい方は、世間の日を基準に行動しなさいと子どもに教え込むことになるからです。

人と比べる生き方は、外部からのストレッサーの刺激をずっと受け続けて、それに抵抗したり、反発する力がそがれ続けている状態といえます。その状態が、これまでの人生の長さだけ続いているのです。こんなにつらいことはありません。そんな状態で、厳しい現実のなかで生きているのです。心や体が悲鳴をあげ、病気に逃げ込もうとするのも無理はないといいたくなります。

自分が選んだ道を歩く

アメリカでは、親が子どもをしかるとき、「お前がしたことはいいことか、悪いことか」と、それが道徳的に正しいのかどうかを考えさせたうえで、「お前はどう思うのか」と、自分自身の主体的な考えを持つことをうながすことが多いようです。

あるいは、「みんなおとなしく、いい子にしているでしょ。うるさく騒ぐような悪い子はあなただけよ」ではなく、「ここでは静かにしていましょうね。ママと約束できる? 」と話し、それでも騒いだときは「あなた自身が約束したでしょう? 約束を守れないのは悪い子だ」としかるのです。1つのヒントになる話です。

いつも人と比べる世間中心の生き方をしている間は、心がほっと安らぐことは望めいただきません。高い山を日ざして必死に登っていっても、頂だと思って登った先にはさらに高い山々が遠くに見えてくるものです。

相対的価値は際限がなく、高く登れば登るほど、さらにストレスが強くなる傾向があるのです。解決策は1つしかありません。まわりと比べ、まわりより高い山に登ろうとするのではなく、自分が登りたい山に登る、という生き方に切り換えるのです。自分を主人公にした生き方をすると意識を変えていくだけでも、心の冷えはかなり改善に向かいます。

冷えを遠ざけるためのポジティプ思考

価値の善悪をオセロゲームと考える

この世のすべては、「オセロゲーム」と同じだと考えてみたらどうでしょうか。白ひっくり返せば、一瞬にして黒になり、その黒も、白と白ではさんでしまえば、再び白になるこれが世間なのです。
そして、自分の心でもあります。世間も心もオセロゲームだと考えましょう。それは「絶対だ」という思い込みをなくしてくれます。

自分を相対化することができ、冷え切った心に温風を吹き込む大きな効果があります。もともとストレスは「ものごとをマイナスに受け取る」ことで起こるものです。マイナスに受け取るかどうかは、本人が決めているのです。

つまり、ほとんどの場合、ストレスは自分で生み出しているわけです。プラス思考とマイナス思考も同じです。どんなことでも、プラスの視点で見れば、よいできごとに見え、心を温めますが、マイマスの視点で見れば、つらく苦しいできごとに見え、心が冷え冷えとしてきてしまいます。

よい方向から見れば、それまで自分を苦しめていた欠点も反転して、長所に見えてきます。マイナス思考にこり固まり、なんでもネガティブに受け取っていた人が、考え方を変えるだけでプラス思考になり、なんでもポジティプに受け取るようになれるのです。

弱みで自分を見ないコツ

まず試しに、自分の嫌なところや欠点を書き出してみましょう。たとえば、こんなところがありませんか。

  1. NOが言えない
  2. せっかち
  3. 臆病
  4. 悲観的・暗い
  5. 社交性がない
  6. 嫉妬深い
  7. 自己中心的
  8. だらしがない
  9. あわてもの・おっちょこちょい
  10. お調子者・八方美人
  11. おしゃべりで口が軽い
  12. 融通がきかず頑固
  13. 何をやってもつまらない

そしてこの13項目に反対するのは

  1. 寛容
  2. 発展的
  3. 慎重
  4. 落ちている・浮ついてない
  5. 自分をしっかり持っている・付和雷同しない
  6. 自分が好きで向上心がある
  7. 自分を大事にできる
  8. 細かいことを気にしない
  9. 思いつめない。気楽な性格
  10. 好かれやすい。つき合いが広い
  11. 明朗快活
  12. まじめで意志が強い
  13. 理想が高い

上と下では、同じ性格・特徴の表現を変えただけです。あらゆる性格・特徴も、両面をもっているということです。

あるマナー講習会では「人を見たら、長所を10個探す習慣をつけなさい」と教えています。これは、さっそく採り入れてみるといいでしょう。
この習慣が身につけば、どんな人ともよい関係をつくつていけるようになります。自己評価のオセロゲームが身についてくると、他人を見る時も、自然にオセロゲーム発想になれるのです。長所と短所は表と裏。どっちの面から見るかという問題です。

よいところを探す視線で見れば、どんな人でも、よいところが目につくでしょう。よいところが多いと思うと、つき合いはよい雰囲気でスタートします。
ものごとは連環していくので、人間関係はどんどんよい方向に進んでいきます。夫婦げんかのたびに「自分は妥協的すぎる。いつでも自分が謝ってしまう。そんな自分が情けない」と悩んでいたある男性に、「自分はそれだけ心が大きいのです。

相手を受け入れることができる寛容な人間なのだ、と考えてみてはいかがですか」とお話したことがあります。そして、この自己評価のオセロゲームをご紹介したところ、すっかり乗り気になり、それからはなんでも見方を変えてみることに熱中したそうです。

その結果、この方は、どんなこともプラス面からとらえる習慣が身につき、いまでは「自分のことを好きですか?」とお尋ねすると、「まあ、嫌いになってもしょうがないし… 」と照れながら、自分を好きだといい切るまでになっています。こうなれば、もう、押し潰されるほどのストレスは感じなくなっているはずです。

心体のいい関係

体と心は不即離

うつは心の病気です。体の不調だけでなく、心の状態が大きく影響しているのは、いうまでもありません。ここまでは、あえて「体の冷え」に焦点を合わせて書き進めてきました。
「うつは心だけの病気」と考えている方が多いために、「うつの原因は体にも大いに原因がある」のです。しかし、ここからは、うつのもう1つの原因である「心の冷え」への対策にふれていきたいと思います。

体と心は密接に結びついています。体の調子が悪いと気分も落ち込みやすくなり、意欲もわきません。心が元気を失なうと、だるかったり、頭痛がしたりと、体の具合も悪くなってしまいます。

精神科のクリニックは心の状態を診る科だと思われがちですが、最近は体の不調も合わせて診察、治療するようになってきています。
最近は、うつの症状で便秘や食欲不振、頭痛、めまいなどの体の不調を訴えてくる「仮面うつ病」が増える傾向にあります。これは、精神症状が身体症状という仮面に隠されてしまって、体にあらわれているのです。では、心と体の関係は本当はどうなっているのでしょうか。
そして、心はどこにあるのでしょうか。
脳だとしたら、どの部分にあるのでしょうか。

昔から、心と体の関係は、医学でも哲学でも大きなテーマでした。解剖学的アプローチも盛んですし、脳研究の第一線でも、精神活動の源を懸命に探しています。
体と心の関係は、不即不離だと考えています。仏典に「心身不二」という言葉があります。「不二」とは、密接につながっている、2つに見えて、実は本来1つのものであるという考え方です。つまり、体が冷えれば心も冷え、心が冷えれば体も冷える関係になります。

体に冷えがある人は心にも問題を抱えています。体の冷えと心の冷えは、まさに「不二」なのです。体の冷えが万病の元であるように、心の冷えもさまざまな病気を引き起こします。
心の冷えとは、ストレスなどで心が抑圧された状態だと考えてください。自律神経のバランスがくずれ、免疫力が落ち、自然治癒力も発揮できなくなる状態です。

東洋医学では「心身一如」といい、心が関与していない体の不調はないと考えてきました。現代の西洋医学の第一線で活躍している医師のなかにも、「すべての病気は心身医学を適用して診療されるべきである」と主張する人があらわれてきています。

生き方を変えれば病気は治る

ところが多くの病院では、検査をして異常がないと、「とくに問題はないと思いますよ。一応、胃のお薬を出しておきますね」などと薬を投与して経過をみる程度に終始しています。
その結果、仮面うつ病や心身症などは見落とされてしまいがちなのです。憂慮すべき問題です。病気は、たまたまなるのではありません。心と体のコンディション、生活環境、家族環境、生き方と深く関連しています。

細菌やウィルスに感染しても、生き方による免疫力の違いで発病する、しないに分かれることがほとんどです。うつは再発しやすい心の病気です。
なぜかというと、その症状を抑えても、生き方の構造を変えないと、また、なにかのきっかけで落ち込みに襲われて再発するからです。

しかし、生き方の構造を変えれば、病気が再発しなくなるというのも、考えてみれば道理です。うつだけでなく、胃腸病やぜんそくなども、対症療法で表面だけを抑えても、病気は根本的には治りません。

その昔、心臓病の外来で待合室のいすの前の部分が異常に早くすり切れるのを見つけ、心臓病になりやすい人には共通の性格特徴、行動特徴があることを発見しました。心臓病になりやすい人は「A型」といわれ、行動的、活動的、攻撃的、陽性です。

これに対して、心臓病になりにくい「C型」は、内気、消極的、非活動的、自己抑制的、自責的なのです。これをきっかけに、病気と気質の関係の研究が盛んになりました。

A型性格、C型性格

米国で、身体的に健康な男女数千人を、「A型」「C型」、どちらでもない中間的な「B型」の3種類の性格・行動パターンに分けて、10年間追跡調査したことがあります。
いわば、どのような性格がどのような病気をつくるのかという研究・調査です。すると、ガンを発生した人は圧倒的に、自責的・自己抑制的傾向を持つ「C型」が多かったというのです。これは、どうしてでしょうか。

ガンは細胞分裂の過程で偶発的に生まれた異形細胞が増殖し、周囲の正常細胞を浸食する病気です。発端は、細胞分裂するときに発生したミスコピーです。人体はぎっと60兆個の細胞でできていて、それが毎日、細胞分裂をくり返しています。
当然、1日にいくつものミスコピーが生まれているのです。しかし、自律神経がとうたバランスよく働き、免疫力が活性ならば、ミスコピー細胞はすぐに淘汰されてしまい、ガンは発症しません。

ところが抑圧型「C型」の人は、自律神経のバランスがくずれているので免疫力が低下し、ミスコピー細胞を淘汰できず、ガン細胞が生き残ってしまうのです。「C型」の行動パターンは、うつとほとんど合致しています。自分を抑え込むうつ傾向の人は、ガンになりやすいのかもしれません。

ガンは予防できる「ガン予防の12か条」https://www.malignant-t.com/archives/1なども重要であるでしょう。
それはまだ証明されていない推論でしかありませんが、ガンも、うつも、根底には、自分を抑え込む考え方、自分以外の価値観を優先し、大事にする考え方があるのは事実でしょう。その価値観を見直し、生き方を変えていかなくてはなりません。このことが、冷えをとるということなのです。

このように、その人の生き方そのものを変えることに最重点をおいて、向き合っています。それを理解していただくと、長く続いていたうつなど心の不調も短期間で改善され、再発もしなくなるのです。

下着のしめつけもNG

ハイヒールとコルセットについて

女性ばかりか、男性にもスリム願望が強くなり、着るだけで体が締まって見える下着が人気です。しかし、体を締めつけることは冷えにつながっています。

たとえば女性なら、ワイヤーの入ったブラジャー、コルセット、ボディスーツなど、体をきつく締めつける下着は、血行をさまたげ、体を冷やすもとになっています。体を締めつけると、血液の循環が悪くなり、自律神経の働きが狂いやすくなり、冷えにつながってしまうのです。

「おなか」という通り、腹部は体の中心です。大事な臓器の多くはおなか周辺に集まっています。ガードルやコルセットは、この大事な部分を締めつけてしまうのです。

仕事中も締めつける下着を着用している女性は、朝の出勤時から夜の帰宅時まで、長時間、血行を悪くしているのです。この間は、血の巡りが悪いということです。これでは内臓の働きも低下し、自律神経の働きにも影響を与え、体を冷やしてしまいます。

ハイヒールも、つま先をぎゅっとと不自然な形に押し込めて足を疲れさせます。疲れた筋肉は熱の産生が悪くなるので、体の冷えにつながります。

ハイヒールを長くはき続けていると、外反母址になることがある例からもわかるように、ハイヒールは不自然な姿勢を強いるものです。それでもよい姿勢を保とうと無理をすることから、体の弱い部分がゆがんでしまいます。そこから血液など体液の循環が悪くなり、これも冷えにつながります。
ハイヒールはデートやパーティなど特別なシーンだけにし、ふだんは足にやさしい靴にすると、だいぶ改善するはずです。

頭寒足熱

うつになると、寝つきが悪くなって困る場合が少なくありません。靴下を重ねばきするなど、足を冷やさない寝方がおすすめです。
電気あんかや湯たんぽも効果的で、安らいで眠れます。「頭寒足熱、腹八分」は健康なライフスタイルの必須キーワードです。

下半身、とくに足を温めると全身の体温が上がり、体調を改善できます。足は第二の心臓といわれ、足の裏には内臓とつながるツボがあるといわれています。

体を温めたい時も、足を温めると全身がほっこり温まってくるのは、ツボと関係するのではないかと私は思っています

うつ傾向があり、眠れないと訴える患者さんには、長湯をして体を温めること、それができない場合は寝る前に足湯をすること、さらに寝る時は靴下を2~3枚、重ねてはいて寝るようにと指導しています。

靴下3枚の重ねばきが、寝るときの定番スタイルにしてしまえばこれが普通になってしまいます。なお、靴下は木綿、ウール、絹など自然素材のものがいいでしょう。
すべての化学製品は体を冷やす作用があります。暖房も室温はやや低めにし、足元にヒーターを置くなどして頭寒足熱にしましょう。
効果はすばらしく、よほど寒い日でなければ、これで十分です。寝るときに、首のまわりにタオルなどを巻くのもおすすめです。首には血流が集まるため、体温が高いのです。タオルのマフラーはこの熱を下半身にも回す効果があり、全身が温かくなります。

笑いはうつにも冷えにも効く

笑いと体のメカニズム

笑いがストレスを解消することは、あらゆる実験で証明されています。今日、何回笑いましたか? 週に何回、声を出して笑っていますか? という問いにほとんどないという人は、心が冷えている可能性大です。

笑いには心を温める力があります。おもしろくなくても、ばかばかしくても、とりあえず笑ってみましょう。顔で笑っているだけでも、だんだんおかしくなってきて、気がつくとけつこう本気で笑っているはずです。

表情が乏しく、笑顔が極端に少ない人を笑わせるために、笑いの感染力が効きます。笑いの絶えないセミナーに参加してもらうのです。周囲が笑ってばかりだと、ついつい笑うようになります。

そして、笑顔が見られるようになれば、かなり安心してよいのです。実際、たいていの場合、ほどなくうつなど心の不調を乗り越えていきます。

近年、笑いの効用について、医学的・科学的アプローチから研究が進められ、笑いが心身の健やかさのために働くメカニズムがしだいに解明されてきています。

笑うと酸素を採り入れる効率がアップして脳細胞が活性化し、免疫にかかわるホルモンの分泌がうながされます。その結果、ガン細胞やダメージを受けた細胞を死滅させるナチュラルキラー細胞が活性化されることも確認されています。

「お笑いのビデオを1時間見た10人は、ナチュラルキラー細胞の働きが1,3倍も活発になっていました。

鏡にうつる自分に笑いかける

以前、住友生命が笑顔をテーマにアンケート調査を実施したところ、「1日のうちで笑顔になっている時間」は全体平均で約118分間でした。
男女別では、女性が約161分間なのに対し、男性は約76分間と、男性は女性の半分も笑っていない結果が出ています。年代別では、20代が約152分といちばんよく笑っていて、30代は約112分間、40代は約98分間とどんどん少なくなっていっているのは気がかりです。

30~40代の、とくに男性は、意識して笑う必要があるでしょう。鏡を見るたびに、鏡の中の自分に歯を見せて笑いかけてください。
口角を引き上げ、歯を見せて、「イーツ」という表情をつくると、ちゃんと笑顔になります。歯を見せることは笑顔づくりのポイントの1つなのです。っぎに、少しでもおかしいことがあったら、大げさな身振りで笑いましょう。声も立てればなおけつこうです。身振りや声によって自分自身がかきたてられ、だんだん、本当に愉快な気分になっていきます。楽しいから笑うことは、だれでもできます。

楽しくなくても笑える力が身についた時こそ、本物の笑い力を手に入れたといえるのです。その昔、戦時中には「ユーモアは自己保持のための戦いにおける武器である」といった人もいます。

あるいは、ジェットコースターなどの絶叫マシーンに乗って、思いきり大声を出してみるのも、心を温めます。声と一緒に、胸につかえていたものが出ていってしまうように感じられます。

大分県の湯布院では、毎年、「牛食い絶叫大会」を開催しています。秋色に染まった由布岳に向かって、大声で叫ぶのです。内容は「○○のバカヤロォ」「○○ちゃん、ずっと前から好きだよお」でもなんでもよく、いちばん声の大きな人が優勝です。牛食いというのは、叫ぶ前にバーベキューで腹ごしらえするからとのことです。
環境が許せば、思い切り叫んでみませんか。カラオケで絶唱するのもおすすめです。1人カラオケでもいいのです。

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関連情報

うごくことで体のぽかぽかを維持する

正しいウォーキング

運動をして筋肉を積極的に動かし、体内に熱を発生させることが、非常に効果的な冷え解消法であることはいうまでもありません。

気分が落ち込んでいても無理なく続けられる、手軽な体温アップ運動です。まず、ウォーキングです。体を温めるために有効な歩き方をマスターすると、通勤や買い物に行くときも体を温めることができます。
体を温める歩き方では、背筋を伸ばすことが大切です。歩幅は、肩幅より少し広めにし、膝を曲げず、腰から前に出るように進みます。

足の着地は、かかとからを意識しましょう。腕は軽く曲げてリズミカルに振ります。春や秋なら、10~20分間でうっすら汗がにじむくらいの速度にします。
万歩計で測るなら、1 時間で6000~7000歩が、ほどよいスピードの目安です。うつに関係の深い脳内物質セロトニンは、一定のリズム運動によって活性化する性質があります。

ウォーキングは最適なリズム運動ですから、セロトニンが活性化し、頭がクリアになって、気持ちも落ち着きます。同時に体が温まり、多少のトラブルなど忘れてしまうでしょう。

スワイショウ

とくにおすすめしたいのは、気功や太極拳の準備運動としてもよく行なわれるスワイショウです。腕の力を抜いて振るだけの超簡単な運動ですが、意外なほど体を温める効果があります。

前後に振るスワイショウ

足を肩幅くらいに開いて立ちます。足先は広げず、正面に向けます。このほうが股関節をゆるめやすいのです。この姿勢のまま、両手を前に伸ばして肩の高さに上げ、力を抜いて、うしろのほうにスイングさせます。うしろは無理のない程度の高さまで上げます。
全体的に、ぶらぶらと振る感じです。自然な速度でリズミカルに、3分間ぐらい行ないます。1日2回以上すると効果的です。

左右にねじるスワイショウ

やはり足を肩幅くらいに開いて立ちます。足先は広げず、正面に向けます。腕の力を抜いて下にたらし、腰をひねって、体にまとわりつかせるように腕を左右に振ります。
首を回して、後ろを振り返るように行なうと、腰に負担がかかりません。これも3 分間ぐらいを1日2回以上してみましょう。前後と左右を両方やると、さらに効果的です。

筋肉をつけたい人に

体を温めながら筋肉も徐々につけたい人には、「壁腕立て伏せ」と「スロースクワット」が最適です。

壁腕立てふせ

壁に向き合って立ち、手のひらを壁に押しっけ、腕立て伏せの要領で、ひじを曲げたり伸ばしたりします。背すじを曲げないことと、お尻を突き出さないことが筋肉に効かせるポイントです。
足の幅は肩幅くらい。壁に押しっける手のひらの位置は、肩より少し低めにします。壁からの距離によって負荷が違うので、最初はいちばんラクな位置、つまり壁に近い距離から始め、徐々に壁との距離を広げていきましょう。
腕を縦に曲げるか、横に曲げるかによって使う筋肉が違うので、時間帯や曜日によって曲げる方向を変え、筋肉をまんべんなく鍛えましょう。10 回を1セットとして行なったら少し休み、また1セット。3セットくらいやると上半身の筋肉に力がみなぎつてきます。

スロースクワット

いろいろなスクワットがありますが、ゆっくりやるほうが関節に負担が少なく、筋肉にいい刺激を与えられます。両足を肩幅よりやや広めにして立ちます。
つま先はやや外側に向けて開き、背筋を伸ばして胸を張り、あごを引きます。この姿勢のまま、左右の手を頭の後ろにあて、指を組みます。目はまっすぐ前方を見ましょう。息をゆっくり吸いながら、8~〜10秒くらいかけて、ゆっくり膝を曲げ、腰を落としていきます。
次は息を吐きながら、同じようにゆっくり膝を伸ばし、腰を上げます。膝をつま先より前に出さないことと、腰を折った前かがみの姿勢にならないように気をつけましょう。5~10 回を1 セットとして行なつたら少し休み、また1 セット。3~5 セット行なうと、うっすら汗がにじみます。ただ、きついほどやらないほうがいいでしょう。きっさをこらえるとストレスになり、うつの改善と逆方向に向かってしまいます。

少食のほうが体温は上がる

ストレスによるドカ食いを徹底してやめる

一般に、うつの人は、いわゆるストレスによるドカ食いが習慣化してしまっています。食べすぎは体を冷やすので、冷え→ストレス→うつ傾向という悪循環に陥ってしまいます。

食べすぎると、胃腸など消化器官に血液が集中し、熱を生み出す筋肉などの活動が鈍くなって、体が冷えてしまうことを自覚しましょう。
つねに、腹七分目か腹八分目が理想です。現代人は、いつでも食べ物が手に入るようになった結果、常になにか食べ、知らず知らずのうちに食べすぎています。
食べたものを記録するだけの「レコーディングダイエット」に大きな効果があるのは、、いかに自覚以上に食べているかを示しているといえます。

「1日1食のほうが疲れ知らず」だと言う人もいて、芸能人でも1日1食を行っている人は結構います。断食ダイエットはよく耳にしますが、断食後はほとんどの人で冷えが解消し、うつなど心の不調も改善するそうです。

きちんとした知識がなく断食するのは非常に危険でおすすめできませんが、食べすぎに気をつけることで、冷えを軽減させることは可能だと思います。3 あるいは、週末の1日は、朝はショウガ紅茶だけ。お昼と夜は玄米がゆを食べるだけ、というようなプチ断食は試してみる価値はありそうです。
ただし、キウイだけ、バナナだけを食べるというダイエットは、エネルギーが不足してしまううえ、体を冷やす陰の食べ物ばかりになり、冷えが加速してしまいます。

うつになりやすい人の考え方

うつになりやすい人は、まじめで誠実な性格の人が多く、食についてアドバイスすると、ガチガチに守ろうとする傾向が強いようです。
その緊張感がかえつて、うつを助長するようでは本末転倒です。気分が落ち込みやすい人は、食事を楽しむことを大事にしましょう。「あれを食べなくては」「これはダメ」と自分を縛りすぎると、ストレスが増してしまいます。
陰陽の組み合わせに注意する、食べすぎを自覚するなどのソフトな食事習慣を身につけていくのが理想的です。「食」という字は「人に良い」と書きます。この「良い」には、体によいことはもちろん、心によいことも含まれていることを忘れないようにしましょう。

ふだんは野菜たっぷりのごったた煮風料理がメインでも、月に1回ぐらいはカニ料理に舌鼓を打ったり、バターたっぷりのフレンチを楽しんでいいのです。

ランチの後だけは香り高いコーヒーをゆったり飲み、あとはショウガ紅茶やホウジ茶にするといったメリハリ、切り換えも大事にしましょう。

白砂糖は体を冷やしやすいものですが、家族の誕生日には甘いケーキを囲みましょう。ケーキのまわりの家族の笑顔は、砂糖のマイナスを補ってあまりあるはずです。

日常的な食事でおすすめなのは、やはり旬の食材を使った和食です。朝食はトマトとレタスのサラダ、パンとコーヒーという西欧型の人が多いようですが、この組み合わせは体を冷やすメニューです。
朝食は、具だくさんの味噌汁、漬物、干物にご飯といった体を温める和食にするのが理想です。

また、東洋には、古来から、自分がいま暮らしている土地のものを食べるのがいちばしんどふにん体にいいという「身土不二」の考え方があります。
土地の産物を、旬を意識して食ベましょう。旬は、その食材のエネルギーがピークに達した時期だからです。

温まるか冷えるかは組み合わせ次第

食材は陰と陽に分かれる

食べ物を、栄蕃素やカロリーの供給源と考えるのが、西欧流の栄養学です。一方、古くから体の冷えに着目してきた東洋では、食べ物や飲み物にも体を温めるものと冷やすものがあることを見きわめ、それらを上手に組み合わせて食べる「食養生」という方法を編み出しました。

食養生の基本をなすのが、陰陽説です。陰陽説は、すべてのものごとは陰陽の二気から生じ、あるいは陰陽の相対的な関係で成り立っているとします。

当然、食べ物にも陰と陽があり、陰は体を冷し、陽は温めます。コーヒーや日本茶は陰、紅茶やホウジ茶は陽というわけです。

一般的に、陰は遠心力をもち、分子活動をゆるやかにし、細胞や体を膨張させて温度を下げます。陽は求心力をもち、分子活動を盛んにし、柵胞や体を引き締めて温度を高めます。

そのほかに中庸という陰陽の中間的な性質もあります。肉、魚、野菜など食材の陰陽を頭に入れ、陽の食材を中心にした食事を心がけて、食べ物からの冷えを予防しましょう。

ただし、栄養面から見ると、陽のものばかりにかたよると、バランスがとりにくくなりますから、陰の食材は温めて食べるなどの工夫をします。

身近な食材の陰と陽、中庸を一覧表を以下に紹介します。これらは、あくまで1つの例ですが、概略をつかむ参考にしてください。さらに、つぎのような食べ物の陰陽を見分けるコツを頭に入れておき、食材選びのときに組み合わせをを考えましょう。

体を温める食材

  • 寒い地方でとれる、冬が旬
  • 色の黒っぼい、濃い、暖色系
  • 地中(下)に向かって成長、エネルギーを蓄えたもの
  • 水分が少なく、固い
  • ナトリウムが多い

体を冷やす食材

  • 暑い地方でとれる、夏が旬
  • 色が自っぼい、薄い、寒色系
  • 地上(上)に向かって成長し、地上で実をつけるもの
  • 水分が多く、柔らかい

た、生野菜や酢の物、冷奴など火を通していない食べ物、冷蔵庫で冷やしたものは、体を冷やします。ファストフードやインスタント食品、ジャンクフードは、ほぼ例外なく、体を冷やします。

食べ物の陰と陽

穀物

  • もち米
  • 黒米
  • 黒豆

中庸

  • 玄米
  • 黒パン
  • 大豆

  • 白米
  • 小麦
  • 大麦

野菜

  • しょうが
  • たまねぎ
  • にんにく

中庸

  • じゃがいも
  • さといも
  • ブロッコリー

  • ナス
  • 白菜
  • ほうれん草

果物

  • さくらんぼ

中庸

  • リンゴ
  • イチゴ
  • ぶどう

  • なし
  • すいか

魚など

  • いわし
  • かつお
  • ぶり

中庸

  • さば
  • さんま
  • たい

  • はも
  • かに
  • うに

肉など

  • 牛肉
  • 鶏肉
  • 羊肉

中庸

  • 豚肉

  • 馬肉
  • バター

陰を陽に変える食べ方

陰の食べ物はダメ、というわけではありません。たとえば、パイナップルなどのトロピカルフルーツは陰ですが、陽の食べ物をたくさん食べれば、パイナップルを食べてもいいのです。

要はバランスなのです。また、上手に温めることによって、陰の食材も、心身にいいひと皿に変えることができます。料理の「料」は、はかる( バランスをとる)という意味です。
「理」は陰陽の道。つまり、陰陽のバランスをとりながら、自然の理を体に生かすようにするのが料理なのです。具体的には、陽8割、陰2割ぐらいの割合にするといいでしょう。

あるいは、陰のホウレンソウを、陽の味噌と中庸のゴマであえればいいのです。陰の豆腐も、味噌汁にすれば、体を温める料理に変身する、というわけです。陰陽の調和を端的にいえば、「いろいろな食材を煮合わせればいい」ことになります。

よい例が、ごった煮です。具だくさんの味噌汁や、根菜や鶏肉などを炊き合わせた筑前煮など、「母親の味」は、ごった煮感覚の料理が多いものです。さすがー!お袋の味は体を温める料理なのです。

世界を見ても、ロシアのボルシチ、フランスのブイヤベース、ポトフ、各国にあるシチュー類など、野菜や魚介、肉などを鍋で煮込んだ料理は家庭料理に必ず含まれています。いろんな食材を合わせて調理することが「陰陽調和」につながると、本能的に知っていたのでしょうか。

お酒は陽のつまみと一緒がいい

では、アルコールはどうでしょうか?アルコールは総体的には陰に属するのですが、原料などによって、陰と陽が分かれます。日本酒や赤ワイン、紹興酒は陽で、ビールやウイスキーは陰です。つまみとの組み合わせなどで冷えにくい飲み方、より温まる飲み方を工夫しましょう。

たとえばビールは陰ですが、利尿作用があり、体内のよぶんな水分を排出するので、想像されるほどの体温低下はもたらしません。
ただし、冷えたビールの一気飲みはいけません。つまみを食べながら、時間をかけて飲むようにしましょう。ビールで飲み会をしたら、最後に温かなホウジ茶やソバ茶などを1杯飲むのもおすすめです。

これだけで、体はグッと温もりを取り戻すのです。陰のウイスキーも、お湯割りで飲んだり、陽のつまみであるチーズ、レバーなどと合わせれば、陰陽調和が図れます。

日本酒は陽ですから、お爛をすれば、体を温める働きが増します。漬物、酢味噌など、陽のおつまみと合わせるのもいいでしょう。
赤ワインは陽なので、豊富に含まれるポリフェノールとともに、心身にいい飲み物だといえるでしょう。寒いフランスの冬では、赤ワインを温めた「ヴァンショウ」というホットワインが欠かせないそうです。

冷えやすい人は、ワインを湯煎で温めるか、電子レンジで温めれば、ヴァンショウのできあがりです。シナモンをひと振りすると本格的な味になります。
ただし、アルコール類は、基本的に、飲みすぎると熱を放出するので、せっかく温まった体を冷やしてしまいます。飲みすぎると、体内によぶんな水分がたまり、この水分も体を冷やす原因になってしまいます。

飲みすぎは、陰陽もつまみの工夫も、すべてを台なしにしてしまうことを忘れずに、お酒を楽しみましょう。

温かい飲み物でも体を冷やすものがある

水の温度と量に注意する

日本人の体温が下がってきた原因の1つには、水分の取りすぎがあるのです。ペットボトルの水を持ち歩いている、コンビニや自動販売機で冷たい飲み物を1日に2~3度以上買う。そんな人は水の飲みすぎです。

植物でも水のやりすぎは根を傷めてしまうように、人も水の飲みすぎは心身に悪い影響を与えます。そのうえ、冷たい飲み物で体を冷やせば、ダブルパンチです。

喉の渇きを癒やすためになんかも、購入して飲んでいるという人は、「口渇」かもしれません。口渇にはいろいろな原因がありますが、うつや冷えの症状の1つでもあります。ですから、適量の水分を、できるだけ温かな飲み物でとるようにしなければいけません。

世の中の情報では「腎臓が健康であれば1日2L飲みたい!」などがあります。
これを読めば水は1日に2リットル以上とればいい!と誤解している人もいます。新陳代謝がよくなり、やせやすくなり、美肌効果もあるというのです。

たしかに代謝のよい人は水代謝もよいので、摂取した水分は体の細胞のなかに入ってゆき、赤ん坊のようなみずみずしい肌になります。

しかし、普通の成人が水分をたくさん摂取すると、細胞のなかには人らず、細胞と細胞の問、細胞間隙や組織間隙に水がたまり、浮腫の状態になるのです。

ですから、1日に2リットルも水を飲めば腎臓の負担が大きくなりすぎ、体を壊す原因になってしまいます。美容上も、むくんだり、顔色が濁ったりして、かえって美容の敵になるのです。

健康な人の尿量は1日1.5リットル後です。しかも、食べ物からも水分を摂取しているので、水分としての摂取量は、よほど激しい運動をして汗をたくさんかかないかぎちゃわんり、せいぜい1リットル十分です。普通の茶碗やカップで6~7 杯分にあたります。このラインを大きく超えて水分をとりすぎると、血液が薄まり、最悪の場合には血液中の塩分が不足する「低ナトリウム血症」で、命にかかわる場合さえあります。

水の冷たさにも要注意です。

テレビ番組で、富士山の伏流水が放映されていました。あまりに冷たくて長く足をつけていられないといっていましたが、その伏流水の水温は13度前後なのです。それに対して、冷蔵庫や自動販売機の冷水の温度は、4度前後です。

ふだん飲む冷水が、いかに冷たいかがわかるでしょう。冷たい水をガブリと飲んだとき、冷たさが体内に入っていくのをリアルに感じたことがあるでしょう。

実は、冷たい水でなくとも、水分のがぶ飲みは体をこわすといわれています。考えてみると、犬や猫、野性の動物で、がぶ飲みをしている動物はいません。
みんな舌でペロペロとしか飲めない構造になっているのです。人間だけが、がぶ飲みできるのです。まして、4度のままの冷水をがぶ飲みして体内に入れると、それだけで体温のバランスがくずれてしまうのです。

冷たい水は避け、飲む場合でも口のなかで少し含んで、温度を上げてから飲み込むようにすると、体温低下はかなり防げます。寒い戸外から帰ったり、疲れを感じたときには、体を温める飲み物がいちばんです。

飲みものは水を温めた白湯がベスト | 体温を上げる

コーヒーはガブ飲みすると体に害になる

コーヒーメーカーにいつもコーヒーが用意されていて、1日何杯も飲んでいる人を見かけます。しかし、コーヒーは体を冷やしてしまう飲み物なのです。
それは日本茶も同じです。熱い飲み物のなかにも、体を冷やすものがあるということを知っておきましょう。

少量を味わうのならコーヒー、日本茶は実においしくて、体にもいいのですが、何杯も飲む場合は、体を温める紅茶か、ホウジ茶がおすすめです。
体を温める飲み物には、ほかに、ソバ茶や黒大豆茶もあります。日本茶が茶葉を蒸して乾燥させながらもみ込むのに対し、紅茶は茶葉を完全に発酵させます。
この発酵のお陰で、紅茶は体を温める効果が強くなったのです。発酵した紅茶には抗酸化作用はないと思われがちですが、紅茶にはテラフラビンという抗酸化物質が含まれています。紅茶は、体の不調を引き起こす活性酸素の働きを抑える作用もあるのです。

もちろん、氷を浮かせたアイスティでは体を冷やし、逆効果になってしまいます。

ショウガ紅茶のすすめ

うつの方、うつっぼい気分のとき、あるいは肩こり、手足の冷えなどが見られる人などにおすすめしたい飲み物があります。紅茶に、すりおろしたショウガか、ショウガ汁を入れたショウガ紅茶です。

「紅茶にショウガ?」とはじめは不思議な顔をする人も、何回か飲んでいると、必ずはまってしまう、なんともいえない滋味をたたえています。
ショウガは世界各地に広く分布していて、中国では紀元前500年ころから薬や香辛料として使われてきました。2世紀ころに編まれた中国医学の古典『傷寒論』にもシ月ウガは体内のすべての臓器を活発に働かせ、体を温める」と記されています。

実際、血行をよくする、体内の水分代謝を改善する、消化を助けるなど、ほとんど万能ともいえる薬効を備えています。
「ショウガは百邪を防御する」といわれ、漢方薬の基本成分として珍重されています。

その根本には「体を温める」効果があるのですから、これを使わない手はありません。ショウガの薬効は、主としてからみ成分のジンゲロンによりもたらされますが、ほかにもショウガオール、カプサイシン、シトラール、クロロゲン酸など400種以上にのぼる微量成分が含まれており、これらの相互作用、相乗作用によって、より薬効が強力になると考えられています。

殺菌作用にもすぐれていて、いまでも寿司に必ずショウガ(ガリ) が添えられているのは、魚の保存技術が発達していなかった昔のなごりです。
魚の鮮度が落ちても、ショウガの殺菌作用が食あたりを防いでくれたのです。ショウガは漢方ではショウキョウ(生姜)またはカンキョウ( 乾妾)と呼ばれ、漢方薬のなんと7割にはいずれかが配合されているといいます。
ショウガ紅茶の作り方はこちらです。