自律神経失調症の体にあらわれるさまざまな症状

自律神経失調症の症状は、倦怠感などの全身症状のほか、体の各器官にさまざまな症状が現れます。また、イライラなどの精神症状が現れることもあります。

複数の症状があらわれる

「かぜをひいているようにいつも熱っぽい」「頭痛や肩こりがひどい」「不眠で、食欲もない」などの慢性的な体の不調を抱えて病院を訪れる人が増えています。
しかし、検査をしても体のどこにも異常を発見することができないというケースが少なくありません。
このような患者さんの訴えをよく聞いてみると、症状が現れたかと思うとしばらくして消え、そのうちまた現れる、あるいはそれまでとは違った症状が現れるなど、症状が定まらないという特徴があります。また、「頭も痛いし、胃の調子も悪い、息切れもする」というように、同時にいくつもの症状を抱えていたり、頭痛の次は筋肉痛、その次は耳鳴りというように、症状が転々と移り変わる場合もあります。このように、さまざまな自覚症状があるにもかかわらず、臨床検査ではどこにも異常が認められない場合、「自律神経失調症」と診断されることが多くあります。

症状は、個人個人異なる

病名は同じ「自律神経失調症」でも、人によって訴える症状がそれぞれ異なるのも、1つの特徴です。体がふらつくとか、壊れやすいなどの全身症状を訴える人もいれば、ある人は頭痛や肩こりがひどく、またある人はめまいや食欲不振、不眠に悩んでいるというように千差万別です。
このような個人差が現れるのは、自律神経失調症は、その人の遺伝的体質や生活習慣、社会的環境など、複雑な要因がかかわり合って起こる病気だからといえます。

自律神経の乱れが原因

「自律神経失調症」とは、その名が示すとおり、自律神経が失調状態(不安定)になり、その結果、さまざまな症状が引き起こされる病気です。自律神経は体のあらゆる部分に広く張りめぐらされていて、さまざまな臓器や器官をコントロールしています。自律神経のバランスが乱れると、そのコントロール機能が損なわれてしまうため、体のさまざまな部分に症状が現れたり、症状が転々と移り変わったりするのです。次に、患者さんが訴える主な症例を列挙してみましょう。

主な症状

疲れやすい

「疲れがいつまでも取れない」「自分でも異常なほど疲れやすい」などの、疲労感を訴える人が多いものです。また、「関節がだるい」「手足に力が入らない」などの症状が現れる場合もります。

微熱が続く

女性は、妊娠中や排卵日から月経までの約2週間は、基礎体温がやや高くなります。しかし、そのような理由もなく、臨床検査でも異常が見つからなかったにもかかわらず、37度前後の微熱が1 か月以上も続き、体のだるさを伴うときは、自律神経失調症も疑われます。

めまい、体のふらつき

めまいには、周囲や天井がぐるぐる回るように感じる回転性のめまいと、目の前がくらくらしたり、体がふらふらするように感じる浮動性のめまいの2種類があります。
自律神経失調症と関係があるのは、浮動性のめまいで、過労やストレスが原因と考えられます。「歩いているとき、地に足がついていないような、ふわふわした感じがする」「立ち上がった瞬間、ふっと気が遠くなることがある」という人もいます。貧血症状と区別がつきにくい場合もあります。

頭痛

頭痛は、脳腫瘍やくも膜下出血、高血圧などの病気から起こることがありますが、検査をしてもそのような兆候が見られない場合は、自律神経失調症によるものとも考えられます。
最も多いのは、頭が締めつけられるような鈍い痛みで、首や肩のこりを伴う「筋緊張性頭痛」ですが、側頭部がズキンズキン痛む「片頭痛」を訴える人もいます。

耳鳴り

「音がしていないのに、キーンという大きな音が聞こえる」と耳鳴りを訴える人がいます。また、音が聞こえにくかったり、耳にものが詰まっているように感じる「耳閉感」などの症状が現れることもあります。

肩こり

肩こりは、肩や首の筋肉が緊張して収縮し、血液循環が悪くなるために起こる症状です。内臓や目、耳、歯などの疾患が原因で起こることもありますが、そのような原因が見当たらない場合は、ストレスがたまって、血液の流れを調節する自律神経のバランスが乱れてしまったためと考えてよいでしょう。
ひどいケースになると「肩だけでなく、首筋も背中もばんばんに張って、吐き気をもよおすときもある」と訴える患者さんもいます。

動悸・息切れ

運動をしたり、大きなショックを受けたりしたときは、だれでも動悸や息切れがします。しかし、安静にしていても動悸や息切れがすることがあります。このような症状は、心臓病や呼吸器の病気、貧血などの病気でも起こりますから安易な判断は許されませんが、検査をしても異常がなければ、自律神経のアンバランスによるものといえます。

息苦しい

動悸や息切れだけでなく、息苦しさや酸欠感、息が吸い込めないなどの症状に襲われるという人もいます。
このような症状は、夜、ベッドに入って休もうとするときに現れることが多いようです。これは、自律神経の乱れによって気管支の筋肉が収縮するために起こるもので、精神的疲労や不安によるものです。

食欲不振

食べると吐き気がする」「空腹なのに、食べ物を見ると食べる気がしなくなる」「食べたあとムカムカする」などと訴える人も多いものです。これも、消化活動をコントロールしている自律神経が、正常に働いていないために起こる症状です。

手足の冷え・のぼせ

冷え症は多くの女性が抱えている症状ですが、自律神経失調症による冷え症は、氷を当てられているように冷たいのが特徴です。
「手足や腰は冷えるのに、顔だけ急にのぼせる」というケースもあります。また、検査をしても平熱なのに全身に熱を感じる、いわゆる「ほてり」に悩まされている女性も多いようです。いずれも、血液の循環が悪くなったために起こる現象で、自律神経の乱れが影響しています。

手のしびれ

手の感覚が鈍くなり、「物に触れたとき、手袋をはめてさわっているような気がする」という人がいます。反対に、知覚が過敏になりすぎて、体中のどこをさわってもヒリヒリ痛むとか、腕から指先にかけてどリビリと電気が走るような痛みを感じる、などの感覚異常を訴える人もいます。
このほか、指先が冷たくなって痛みを伴うレイノー症状が現れる場合もあります。

異常に汗をかく

「体を動かしたわけでも、気温が高いわけでもないのに異常に汗をかく」という人も多いものです。なんでもないのに汗をかくのは、精神的なストレスがたまって自律神経がバランスを崩し、発汗を調整する機能が低下してしまったためです。とくに、手のひらや足の裏に多量の。、汗をかくのは、自律神経失血調症の典型的な柱状です。

不眠

「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「眠りが浅いため、昼間は眠くてしかたがない」と訴える人も少なくありません。体を疲れさせたり、気持ちをリラックスさせれば、ふつうは眠れるものですが、自律神経失調症による不眠は、そのような工夫をしてもなかなか眠れません。不眠が3週間以上も続くような場合は、ためらわずに病院で診察してもらいましょう。

筋肉痛

「歩くのもつらいぼど全身の筋肉が痛い」という人もいます。リウマチや膠原病などの病気でなければ、自律神経の乱れが原因と思われます。筋肉痛に倦怠感や不眠、胃痛などを伴うケースが多いようです。

口の中の不快感

人前でスピーチをするときや試験の前などのように、緊張しているときは口の中がカラカラに乾いたり、ネバネバすることがあります。こうした現象は、不安や恐れなどの精神的なことが影響して起こるもので、ふつうは緊張が解ければ症状も消えます。しかし、自律神経失調症の場合は、いつまでもこのような不快な症状が続きます。口の渇きやネバネバ感のほか、舌の痛み、味覚の異常、歯が浮くような異常感などを訴える人もいます。

喉の異物感

「のどから食道にかけて、異物がひっかかっているような感じがして、ものが飲み込みにくい」「ものを飲み込もうとすると、のどが詰まって窒息しそうになる」「のどが締めつけられるような圧迫感がある」「いつもイガイガしている」などの症状を訴える人もいます。
また、「いつものどがヒリヒリと痛み、抗生物質をもらってのんでも効果がない」という人もいます。

便秘:下痢が続く

胃腸などの消化器は、精神的な影響を受けやすい器官の1つです。ストレスがたまって自律神経のバランスが乱れると、便秘が続いたり、反対に下痢が節いたり、あるいは便秘と下痢を交互に繰り返すなど、便通異常に悩まされることがあります。

脱毛・薄毛

毛髪が細くなったり、部分的に抜けたりする「円形脱毛症」に悩まされている人も少なくありません。これも心理的なことが原因で起こります。以上の症状は一部にすぎず、このほかにもさまざまな症状が見られます。

イライラといった精神症状も

自律神経失調症になると、身体症状・全身症状に加えて、イライラや不安感、集中力や記憶力の低下、無気力などの精神的な症状が現れることもあります。
何をする気にもなれなかったり、感情の起伏が激しくなり、ちょっとしたことで涙ぐんだりカッと怒ったり、ときには悲哀感、恐怖感などにおそわれることもあります。