ストレスの処理の大事なポイント

過剰な否定的、悲観的な受け止め方はよくない

さまざまな分野で成功した人たちの自伝を読んだり話を聞いたりすると、その人たちに共通するものがあります。
それは「多くの物事を肯定的に考える」ということです。「ポジティプ・シンキング」や「プラス思考」といわれるものです。
同じストレスでも、考え方によって「よいストレス」にもなれば、「悪いストレス」になることもありますが、その鍵を握っているのが、ポジティプ・シンキングができるかどうかになります。
物事を肯定的に、よい面をクローズアップしてとらえることができると、ストレスがあっても、それを「よい刺激」としてとらえ、困難を乗り切るためのエネルギーに変えていくことができます。

「ポジティブ・シンキングは普段から練習する

「いやだな」と思うようなことがあったときに、「ちょっと待てよ、こんな考え方もできるぞ」と違う側面から見ることができれば、ストレスはかなり軽減されるものです。このような考え方ができるのは、柔軟な心を持っている人でなければ無理ですから、ふだんから「別の考え方をする練習」をして身につけておくことが必要です。
自律神経失調症の患者さんのなかには、うつ状態がひどく、物事を肯定的に考えることができないケースも多いものです。そのような人には、抗うつ剤を用いることも必要になります。また、性格的な問題があって何でも否定的に考えてしまう人に対しては、心理療法を用いながら、考え方を改善できるように指導していきます。

ひとりで悩まない

自律神経失調症という病気は、ほかの人にわかりにくいという特性があるため、「だれも病気のことをわかってくれない」といった不平不満を抱えて病院を訪れる人が少なくありません。そのような場合は、医師は患者さんの話をよく聞くことから治療を始めます。
心の中にたまっている不平不満をだれかに吐き出すことで、精神的に落ち着くことがあるからです。
困ったことが起こつたときは、だれかに相談してみましょう。たとえその間題が解決しなくても、他人に話すことで頭の中が整理され、また新たな気持ちで問題解決に向けて対応できるようになります。
なんらかの問題を抱えているときは、他人とつき合うのがおっくうになりがちです。とくに自律神経失調症になる人は、もともと人づき合いが苦手な人が多いため、1 人で思い詰めていることが少なくありません。
しかし、l人で抱え込んでいたのでは考え方が堂々巡りになってよけいに混乱して、結果的にストレスに押しっぶされてしまうこともあります。抱えている問題を客観的に見直すためにも、人に聞いてもらうことは意味があります。

必要以上に感情をおさえつけない

自分の感情を抑えつけるとストレスがたまるということは、だれもが経験しています。人間関係で生じるストレスの多くも、怒りたいけど怒れない、言いたいけど言えない、といった欲求不満が原因です。
自律神経失調症の患者さんにも、人一倍周囲に気をつかい、感情を抑えつけている人が多く見られます。人間は感情を持つ動物です。あまりにも感情的では別のトラブルも起きてしまいますが、感情を無理に抑え続けていると、喜びも悲しみもまったく感じることができない「失感情症」になってしまいます。
その結果、自分1人では何も決断できないほど依存的になったり、あるいは他人に無関心になったりして、バランスのとれた人間関係をつくることができなくなります。

強いストレスがあるときこそ気持ちを切り替える

悩み事や心配事があると、どうしてもそれが心から離れないものですが、ストレスをだらだらと引きずっていると体の調子がますます悪くなってしまいます。
そのようなときはほかのことに目を向けて気持ちを切り替えましょう。ほとんどの人は、「とてもそんな気持ちにはなれない」と消極的になってしまいますが、ストレスが多いときこそ「ほかのことをしてみよう」と決断することが必要です。ストレスの効果的な発散方法は人によって異なりますが、ポイントは、自分が好きで夢中になれるものに挑戦することです。
カラオケでも、ダンスでも、山歩きでも、自分がやりたいと思うことであれば、何でもかまいません。体を動かすことであれば、いっそう効果があります。

会社、家庭以外で居場所を見つける

会社や家庭以外の自分の「居場所」を確保することも大切です。会社や家庭では、どうしても仕事や家族に対する「責任感」や「義務感」が生じてきます。そのような責任感や義務感から自分を解放してあげることもときには必要です。そのためには、趣味のサークルなどに入会するのもよい方法です。同好者が集まるサークルに入れば、交友関係が広がるだけでなく、1人では三日坊主で終わりそうなことでも長く続けることができます。日常生活から離れた別の世界に身を置くだけでも、1 つのストレス発散法になります。

ストレスの原因となっている問題を少しずつ解決していく

自分に課された問題がいくつも重なってしまうと、ストレスも倍増してしまいます。そのようなときは、今、目の前にある問題から1 つずつ片づけていきましょう。
とくに自律神経失調症の人は、先々のことまで心配することが多いようですが、未来のことは未来のこととして置いておき、「今」についてよく考えることが必要です。逆に、「今」の状態に悩んでいる人は、ちょっと先の明るい未来を考えるようにすることが大切です。

理想にこだわらない

理想を持つのはよいことですが、「こうでなければならない」と自分に強要すると、理想と現実のギャップに悩み、それがストレスになってしまいます。「あるべき姿(理想)」にとらわれないで「ありのままの自分」を認めること1 が大切です。

100%を求めない

「完全でないと気がすまない」という気持ちが強すぎて、過剰ストレスになっている人も多いようです。そのような考え方も病気の要因になっていることに気づき、「もっと気楽に生きよう」と肩の力を抜くことも必要です。