うつ病の体への影響(身体面)

2023-01-25

うつ病は精神面ばかりではなく、体にも症状があらわれます。
このため、はじめはうつ病ではないと思われてしまうケースがあるので、注意が必要です。

症状は複数箇所にあらわれるのが一般的

うつ病では、精神面ばかりではなく、さまざまな体の症状を伴うことはよく知られています。痛みやだるさをはじめ、不眠、肩こり、食欲不振、下痢、便秘など、その身体症状は多様です。まず、その代表的な症状です。

  • 不眠(睡眠障害)睡眠障害の分類はこちら。
  • 体がだるい
  • 疲れがとれない
  • 食欲がない
  • 吐きけがする
  • 体重が減った
  • 腹痛や下痢が続く、反対に便秘が続く
  • 胃のあたりが気持ち悪い
  • 頭が重い、頭痛がする
  • 口が渇く

早朝に目が覚めてしまう

うつ病の人に顕著にあらわれるのが不眠です。睡眠障害というのは大別すると、眠りたいのに眠れないという「不眠」と、ちゃんと寝ているのに昼でも眠くなってしまう「過眠」とがあります。

うつ病では不眠が圧倒的に多いといわれます。不眠といっても、いくつかのタイプがあります。うつ病の人は不眠に悩まされることが多いのですが、中でも「早朝覚醒」が特徴的です。

午前3時とか4時という、かなり早い時間に日が覚めてしまいます。目が覚めるとともに、憂うつな気分や不安感にとらわれてしまいますので、すっきりと目覚めるというのとはほど遠く、再び眠ろうとしてもどうしても眠れないのです。熟睡しているわけではないので、疲労感も残り、起きようという気力も出てきません。

身体面の症状

  • 睡眠障害
  • 消化器症状(食思不振、体重減少、便通異常、ガス症状、吐き気、嘔吐、咽喉部・食道の異常、腹痛、胃部不快感、味覚異常、げっぷ、腹部膨満感)
  • その他の自律神経症状(過呼吸症症候群、ため息、呼吸困難、圧迫感、腹部苦悶感、心悸亢進、腹部不快感、頻脈、胸部圧迫感、狭心症様発作、頻尿、残尿感、口渇、発汗、寝汗、めまい、頭重)
  • 体重減少(エネルギー喪失感、いつも疲れている、各種疼痛、頭痛、胸部・腹部・背部痛、四肢の痛み、筋肉痛)
  • 性欲減退
食欲も落ちて体重が減る

うつ病は、消化器系の器官にも影響して、不調をもたらします。

まず、食欲に大きく影響します。食欲がなくなるというのも、うつ病の症状としてよくみられるものです。食べる量や回数が減り、それに伴って体重も減少していきます。家族が食欲を出させようと思って作った、本人が大好きな食べ物を前にしても、あまり喜びません。

気分がよくないところに、口が渇いてしまう症状も出てきますので、本人は少しもおいしいとは感じないのです。また、便秘になったり、反対に下痢をしたりします。
うつ病では、どちらかというと便秘がちになることのほうが多いといわれています。このほか吐きけがしたり、嘔吐することもあります。おなかが張ったような感じ、いわゆる腹部の膨満感があったり、胃がもたれる、むかつく、気持ちが悪いという症状もみられます。

痛みやだるさも

体が疲れやすくなり、疲労感がたまる、あるいはだるくてしかたがないという症状が続くのも、うつ病の特徴です。
うつ病であれば、少しばかりの休息ではこの疲労感はなかなかとれません。

体のあちこちに痛みを感じやすくもなります。頭が重い、頭痛がする、おなかが痛いというものから、腰痛、胸痛、関節痛、筋肉痛、また背中が痛いというようなものまで、痛みを感じる場所は体全体にわたっています。
痛み以外でも、手足のしびれやふるえ、肩こりなどの症状もあらわれます。このほか、動悸や息切れを訴える人もいます。

体の症状は多様

このように、うつ痛によって体にあらわれる症状も実にさまざまです。もちろん、うつ病だからといって、これらの症状がすべてあらわれるわけではありません。

人によって個人差があって、そのあらわれ方や程度もいろいろです。注意しなければならないのは、これらの症状はほかの病気によって起こることもあるということです。

消化器系の症状もありますし、呼吸器系、循環器系、泌尿器系などの自律神経系のものもあります。そして、言うまでもなく、それぞれにいろいろな病気があるわけです。したがって、こうした症状があるからといって、すぐにこれはうつ病だと診断できる人はまずいません。

むしろ、はじめは何か体の病気ではないかとか、胃が痛いから胃潰瘍ではないかということで内科を受診するのがふつうだと思います。まさかうつ病のような心の病気だとは思わないのが、一般の人の受け止め方だと思います。しかし、いくら検査を受けても何も問題が見つからず、どうしても原因がわからないというような場合には、うつ病ではないかと疑ってみる必要があります。

よく体の病気ばかりが気になり、その不調の陰になってうつ病が見えにくくなっていることがあります。これを、「仮面うつ病」と呼ぶことがあります。