自分を変える

人間関係イコール自分関係

気分が滅入ってしまう理由のほとんどは、人間関係です。うつは、まきわりの人との軋轢から逃げだしたい一心で、自分のなかに自分を封じ込めている状態だともいえるのです。
意外なことに、解決の鍵は他人との関係ではなく、自分との関係を見直すことに潜んでいます。人間関係は、自分が自分をどう見ているかを、そのまま反映しています。

人間関係を温かいものにしたいなら、まず、自分を見つめる目を温かくすることです。大らかに他人を受け入れられる人は、自分も大らかに受け入れているものです。他人との関係性がうまい人は、自分との関係性がうまい人なのです。

イライラしていると、他人のなんでもない言動までとがめだてしたくなります。石ころにつまずいて転んだら、「ここに石があるのが悪い」と、石のせいにしたくなります。

逆に、うれしいことがあって心が浮き立っていれば、たとえ足を踏まれても、「足を出した自分が不注意だったかも」とおおらかに考えることができます。

ですから、人との関係がぎくしゃくするのは、自分に問題があるからなのです。つまり、うつの方は例外なく「自分はダメな人間だ」「こんな自分が情けない」「もう少しましな人間に生まれたかった」などと自分に否定的な感じを持っているのです。

「自分のことが好きですか? 」と尋ねると、「そんなわけがない」という反応で、なかには、「自分なんて嫌い。大嫌いだ」と怒り声になる人もあるくらいです。

そこで、まず、自分へのまなざし、つまり自分に対する価値観を変える必要があります。そこを変えなければ、なにも変わっていきません。あなたを変えることができるのは自分自身だけです。他人が変えることはできません○たとえ親子でも、親ができるのは、「こういう点がよくないのだから、直すように努力してほしい」「いまが大事なときなのだから、全力投球すべきだ」などといい聞かせることぐらいです。本人がそれを理解し、自分自身で行動を変えなければ、なにも変わらないのです。

人間関係を好転したいのなら、相手を変えようと努力するより、自分が変わる王道に向かうことです。

自分に温かい日を向ける

多くのの人は、自分に点数をつけてもらうと、「30点ぐらい」といいます。よくて60点です。なぜ、「自分は100点」といい切らないのでしょう。

仕事や学業の成績のように、だれかと比べるわけではないのです、自分自身に対する自己評価は満点をつけてもいいのではないでしょうか。私は、うつの方には、自分をとことんほめるクセをつけることをおすすめしています。ほめるポイントは、当たり前のこと、どうでもいいところをほめることです。「朝ちゃんと起きている」「ご飯を上手に食べている」「新聞をちゃんと読んでいる」「迷わず駅まで歩いている」といった、いまやっている一挙手二投足をほめちぎるのです。

ロボット工学の進化は目覚ましいものがありますが、これだけのことをできるロボット開発には、莫大な資金と相当な時間がかかるでしょう。
開発されたとしても、膨大な制御装置を必要とするはずです。人間のようなサイズに収めることは困難です。

自分は、それらを難なくやってのける能力を持っているのです。そんな自分がなぜ30 点なのでしょう。スムーズな二足歩行ができるというだけでも100点満点をあげ、大いにほめる価値があります。

「以前の自分はもっと仕事ができた。最近は気力が弱って力を発揮できない。そんな自分が受け入れられない」という悩みもよく聞きます。まじめで責任感の強い人ほど、努力すること、仕事ができることを評価し、力が落ちた状態の自分を非難するのです。田でも、自分が弱っているなら、なぜ、よけいにやさしく温かく見てあげないのでしようか。がんばれた自分と、がんばれなくなっている自分。前者は評価し、後者は卑下する。二者を峻別するのは、会社や社会の価値観そのままです。会社や社会は、個人とはまったく別の価値観で動いているものです。
だからこそ、自分が自分を見るときは、そうした価値観を離れ、自分に温かい視線を注いであげましょう。

自分の存在を否定しない

大事なことは、いちばん苦しく、みじめな最悪の自分を包み込み、ごく当たり前のことができるだけでも大いにほめる姿勢です。たとえば、子どもがなにかいたずらをして、お母さんにしかられたとします。このとき、子どもは、しかられることで二つのメッセージを受け取ることになります。「あなたのしたことは悪いことだから、もうしてはいけない」という行為への注意と、「あなたはダメな子」という存在の否定です。これは、自分が仕事で失敗して上司に叱責される場合を考えてみると、よくわかります。

たとえば部長にきつく叱責され、「君のようなスタッフがいると、チーム全体が足めんばを引っ張られることになるんだ⊥ と罵倒されたとしましょう。
あなたは、「もうこの部長は、自分のことをダメな部下だと思ったに違いない」と感じて意気消沈するに違いありません。しかし、課長から「あのあと部長がいっていたよ。期待しているから、あんなにきつく叱責したんだ、とね」と聞くと、とたんに安心してうれしくなるでしょう。

これを自分に置き換えてみると、どうでしょうか。失敗したり、みじめな自分を嫌うことは、自分の行為ばかりか、存在をも否定することになってしまうのではないでしょうか。どんな自分も自分です。それなのに、いいときの自分は受け入れ、失敗したときの自分は受け入れないのは、おかしいと思いませんか。どんなときも、自分を100% 受け入れることです。修正が必要なときも、いったん受け入れたうえで、そこから修正を始めましょう。

そうすれば、自分をとことん追い込んでしまうことはありません。自分を受け入れる方法の1つが、「自分ほめ日記」をつけることです。どんな日も、日記にまず、「今日もよくやった」と書くのです。うまくいった日は「われながらよくやった」と書き、失敗した日は「失敗をあの程度でくい止めたなんて、われながらよくやった」と書きます。毎日、「よくやった」の連続です。こうした積み重ねにより、つねに自分を絶対肯定する力をつけていくのです。