自律神経を整えると、相手の態勢が変わる

誰でも自分の話は「聞いてもらいたい」「理解してもらいたい」と思っています。そのためにもっとも大事なのは「相手が聞く状態になっていること」です。

たとえば、私のところへやってきた患者さんに病状について説明するとします。ところが、その患者さんが不安を抱え、軽いパニック状態に陥っているとしたら、病状の説明などしてもまったく伝わりません。

話をするうえでなによりも必要なのは、相手が落ち着いて、聞く態勢を整えていること。もっといえば、相手の副交感神経を高め、血流を良くすることが、話を聞いてもらう最大のコツなのです。

ときどき、上司が部下に早口でまくし立てている場面を見かけます。指導なのか、指示なのかわかりませんが、はっきりいってあれはまったく無意味です。

双方にとって何のメリットもありません。早口でまくし立てる方は、当然交感神経が跳ね上がっていますから、冷静な判断力を失い、「本当に言うべきこと」を正しく口に出せていない状態です。

一方、話を聞いている(と思われる) 部下のほうも、交感神経が高ぶっているので、情報をキャッチし、咀嚼する準備ができていません。結局は、感情を吐き出しているだけで、何の効果も得られません。

「ゆっくり」は緊張を解く最大の近道

そもそも、自律神経とは周囲に伝染するものです。何かの発表を前に緊張している人がそばにいると、つられて自分も緊張してしまう。そんな経験があるでしょう。

あれこそまさに自律神経(の乱れ)が伝染しているのです。つまり、話を聞いてもらうには、まず自分の副交感神経を高め、その落ち着いた状態を相手に移していく必要があります。

その際に、もっとも効果的なのが「ゆっくり話す」ということ。まずはあなたが話すスピードを意識的に少し落としてみてください。これだけでも「相手との関係」「相手の聞く姿勢」にかなりの違いが出てきます。

「ゆっくり話そう」と意識することがとても大事。その意識が生まれた瞬間から、自律神経は整いはじめるからです。この状態になってしまえば、あなたはすでに落ち着きを取り戻し、その状態は相手にも伝わっていきます。1対1で話すとき、会議で発言するとき、大勢の前で発表するときなど、どんな場面でも話しはじめる一瞬前に、「ゆっくり話そう」と自分に対してつぶやいてください。

そうやって自分に意識づけをして、暗示をかけるのです。それだけで副交感神経が上がり、話すほうも、聞くほうも、多少は緊張がほぐれます。「話のうまい人」というと、早口でベラベラしゃべっているイメージを持っているかもしれませんが、注意深く観察してみると、本当に演説のうまい人、人を説得するのが得意な人はど「大事なことはゆっくり」話しています。

感情や思いを発散したいならともかく、内容をきちんと伝えたいなら、ぜひゆっくり話してください。これこそ医学的な見地から見たコミュニケーションのコツです。