暑がりな人ほど危険

2023-01-25

冷えを自覚できない人が増えている

冷えについても、正しい情報を頭に入れておかなければなりません。冷たいのが冷えで暑いのが冷えではない。という単純なものではないのです。
手足の先や腰など、体の一部が異様に冷たく感じるのが、冷えの典型的な症状です。
体全体が寒いわけではないのですが、体のある部分が、しかもほとんど常時、外気温や室温に関係なく、冷たいのです。それは「体の芯が凍えているのではないか? 」と思われるような冷たさで、外気温を上げたり、冷えの部分を温めたりしても、なかなか冷たさがなくなりません。
経験のない人にはわかりにくいものですが、当人は、冷えのつらさをじっとこらえています。

冷えに関する古典的データは、1956年の調査では、女性の54.5%に冷えの症状が見られています。だいたい半数の女性が「冷え」だという結果です。

これだけ多いというのに、不思議なことに、冷えは西洋医学ではあまり問題にされてきませんでした。「冷え性」にあたる適当な英語はないくらいです。
ところが、欧米人と親しくなり、「冷え性」について説明すると、「あ! 思い当たる症状がある」といい出すのには驚きます。これは、肩こりも同じです。肩こりというズバリの言葉は、英語にはありません。つまり、肩こりという概念がないのです。

でも、症状を説明すると、たいてい「ああ、そういうことはあるなあ! 」となります。つまり、冷えや肩こりが欧米人にないわけではなく、医学的な問題症状として意識したことがなかったのです。つまり、冷えは意識しないと、「症状だ」という自覚が生まれにくいものなのです。

実際には半数でなく大半が冷えている

冷えは男女を問わずあらわれる症状ですが、昔から、女性に多い悩みとして知られています。なぜなら、女性は体質的に体脂肪率が高く、脂肪組織には血流がないので、もともと体が冷えやすいのです。

また、男性ホルモンは体温を上げる働きがありますが、女性の男性ホルモン分泌量は男性よりはるかに少なく、それだけ体温が上がりにくいのです。
これも女性が冷えやすい原因といえます。女性は、2人に1人は冷えに悩んでいるといわれます。しかし、実態はもっと多く、女性のほとんどの人が冷え性か、もしくは冷えやすいという説もあるほどです。

ところが、実際に「あなたは冷えがありますか? 」と聞くと「はい。そうなんですよ」という女性と、「いいえ。私は冷えなんて無関係です」と答える女性は半々の割合です。

「いいえ」と答えた女性たちは、冷えという概念を知らない欧米人と同じなのではないかと私は思います。実際は冷えているにもかかわらず、それを症状だと自覚していないだけなのです。実態としては、ほとんどの女性に冷えがあるのに、半数の女性は自覚ができていないのです。それが、昔から「冷えは女性の50%程度」という数字になっているのだと考えられます。2009年に、ある

民間団体が、20~60代の男女1000人を対象に「冬、最も感じている悩みはなんですか? 」というアンケート調査を行なったところ、「冷え」が21%で、「肌の乾燥」や「風邪・インフルエンザ」を抑えてトップでした。とくに20代では、「冷え」と答えた人は3%にもおよんでいます。それなのに、同じ調査で、20代に「冷え対策をしているか」と尋ねたところ、46%が「なんの対策もしていない」と答えています。

ユニクロを筆頭に、各社が温熱・保温効果のある下着類を発売して、空前の大ヒットになったことは、記憶に新しいところです。レギンスの流行も定着したようです。いずれも、体を冷やしたくないという本能が、無意識に、それらの商品を求めている
のだと思います。

暑がり+冷えの特徴

さきの団体の調査では、男性にも冷えが多いことがはっきりしました。まず、「最も感じている冬の悩み」について、20代男性の25.3% が、「冷え」をトップにあげています。

また「冷えを実感していますか?」という問いには、男性の80.2% が「実感していない」と答えましたが、同時に調査した冷えのチェックリストの回答と照合すると、「実感していない」と答えた人の31.2% に、冷えの疑いが見られるのです。

男性の50% は冷え性か、その予備軍といってよいでしょう。ただ、男性の冷えはわかりにいことがしばしばです。だから、ひどい冷えでも自覚できない人が非常に多く、自分が冷えていると考えたことさえない人が大半を占めています。

男性の場合、体の一部分が冷たく感じる典型的な冷えを示す人ももちろんいますが、「暑がり冷え」が多いのが特徴です。のぼせる、ほてる、ちょっと動くと顔が真っ赤になって汗をだらだらかく、といった「暑がり性」は、実は、体温調節のアンバランスから起こる「冷え」の症状なのです。

体の表面は熱くても、体の芯は冷えています。ほてりや汗は、そのアンバランスを調整しょうとした結果です。根っこには、冷えが潜んでいるのです。こうした「暑がり冷え」は、体の外側(体表)に熱が放散されています。だから体の芯は冷え、体表では、熱をなんとか下げようとだらだら汗をかくのです。

夏、足がほてって、ふとんの外に足を出さなければ眠れないという人は、暑がりではなく、冷えだと断定して間違いありません。たとえば冬山登山などで遭難し、凍死寸前の状態になると、暑がって裸になりたくなる衝動にかられます。それほどひどい冷えになっていても、男性は冷え性なんて女性特有のもの。自分には無関係。と思っている人が多く、無知、無神経、無防備です。

「体がほてる。冷房の温度を下げよう」「暑いのでビールを飲もう」などと、冷えに対して最悪の対応をしてしまいます。

男性は、冷えている現実をもっと知るべきでしょう。うつへの対策も、まずそこから始まります。ちなみに、男女を問わず、肥満で、夏は暑がり、冬は寒がりという人は、ほとんど100% が冷え性です。肥満でセルライト(皮下脂肪のボコボコしたかたまり) がある人は、全身の血流が悪いため、全身が冷えやすいのです。
また、夏は暑がり、冬は寒がりというのは、外気の温度に左右されやすい冷え性の特徴を示しています。