夫婦の関係

夫婦3点セットとは

結婚している人で心の不調を抱えている場合、原因は夫婦関係にあることが少なくありません。とくに女性の場合はその傾向が顕著です。夫婦関係が原因になっているうつは、「夫婦3点セット」を実行してみましょう。
夫婦3点セットとは、次の3つを行なうことをいいます。

  1. 外を歩くときは夫婦で腕を組む
  2. テレビを見るときは、夫婦で手をつないで見る
  3. 出勤・帰宅時、玄関で相手の首に抱きつく

「もう数ヶ月も口もきいていない。離婚するほかはない」という場合でも、勇気を出して自分を励まし、この3つのことを実行してみてください。
3つとも、スキンシップを通して、夫婦がともに、子どもの自分、つまり本音の自分を出し合う練習なのです。単純なようですが、人間関係では、スキンシップは重要な意味を持っているものなのです。

母子の関係を思い出してください。絶対的に好きな人だったお母さんでさえ、「大好きよ」と100 回いってもらうより、1回ぎゅっと息が詰まるぐらい抱きしめてもらったときのほうが、強い愛情を感じたのではなかったでしょうか。

1つ屋根の下に住んでいながら、夫婦がちゃんと向かいあう時間はほとんどない家庭が増えています。そんな月日を重ねていけば、気がついたときには、夫婦という名の他人になってしまっていて当然です。
その夫婦の人間関係の修復を進めるのが、このスキンシップなのです。夫婦が仲のよい仲間の関係になれば、家庭も変わります。

ふれあいの実感

夫婦3点セットに、「そんなことはできません」と、強い拒否反応を示す人が少なくありません。そういう人にこそ、ぜひ、実行してほしいのです。
ずっと冷たい関係が続いている場合は、あらかじめ、夫婦3点セットの意味や目的を説明しておくとよいでしょう。

はじめは抵抗があるかもしれませんが、慣れてくると、相手の手の温もりは心も温めてくれるものだと実感するようになります。すぐそばに、いつでもふれ合える手があることは、本当にすばらしいことなのです。

3点セットと同時に、「○○ちゃん」などと、お互いを愛称で呼び合う練習も採り入れるようにしてください。「夫の顔を見るのもイヤ。離婚したい」という冷たい関係が、夫婦3点セットによって、たったひと晩で改善したケースがあります。ある人は、夫婦3点セットをおすすめしても、「無理です」とくり返すばかりでした。ついに私が「それでは、うつは治らないかもしれませんよ」と少し強くいうと、しばらく黙って、「じやあ…やってみます」といって、帰っていきました。

ご主人の携帯にメールを入れておいたそうです。「先生に、今晩、あなたが帰ってきたら、玄関で抱きつけといわれてしまったので、仕方がないのでそうします」ところが、こんなメールを受け取り、面食らってしまったご主人は、ふだん以上に帰宅の足が重くなってしまったのです。「ちょっと飲んで帰ろう」が1軒ではすまず、2軒、3軒と寄っているうちに、自宅に帰りついたのは午前3時を回っていました。

その間、「あんなメールを入れたので、帰ってこないかもしれない」という緊張と不安のなかで、ひたすら待ち続けていたのです。鍵を開ける音がしたとき、不安と緊張の極致にいたFさんは、見えない力に押し出されるように玄関に行き、気がついたら、ごく自然に、ご主人の首に固く抱きついていたそうです。まったく予想もしていなかったことが起こったのは、次の瞬間です。抱きついたとたん、涙がどっとあふれ、止まらなくなってしまったのです。

涙はご主人の心にもしみていき、ご主人の手は自然に奥さんの背中に回っていたといいます。それから、2人は家の中でも、出かけるときでも手をつなぐようにしたそうです。しだいに会話も増えていき、いつの間にか離婚話は立ち消えになっていました。

さらに、夫婦関係がよくなるにつれて、うつがよくなったのは当然として、会社や近所づき合いなど、他の人間関係のギクシャクも好転したといいます。
夫婦関係がうまくいかなくなったのは、自分の心が閉ざされていたからです。それが解消されれば、他の人間関係もうまくいき始めます。

親と子どもは「温め仲間」になりなさい

日本の家族関係は、家族それぞれが自分をどう位置づけていいのかわからなくなっているようです。父親を中心にした関係は薄れ、最近は父親の存在感は薄れる一方です。
妻は妻で自立願望がありながら、どこかに夫に依存して生きるラクさが身にしみていて、自己矛盾を起こしています。その結果、子どもは絶対的に信頼できるものをなって不安に陥っているのです。

目ざすべき新しい家族関係は、ひとりひとりが自立しつつ、お互いを認め合い、受け入れ合う関係でしょう。一種の仲間のように心を許し合うには、みんなが「子どもの自分」を丸出しにしても安心なのだという認識を共有することです。