心体のいい関係

2023-01-27

体と心は不即不離

うつは心の病気です。体の不調だけでなく、心の状態が大きく影響しているのは、いうまでもありません。ここまでは、あえて「体の冷え」に焦点を合わせて書き進めてきました。
「うつは心だけの病気」と考えている方が多いために、「うつの原因は体にも大いに原因がある」のです。しかし、ここからは、うつのもう1つの原因である「心の冷え」への対策にふれていきたいと思います。

体と心は密接に結びついています。体の調子が悪いと気分も落ち込みやすくなり、意欲もわきません。心が元気を失なうと、だるかったり、頭痛がしたりと、体の具合も悪くなってしまいます。

精神科のクリニックは心の状態を診る科だと思われがちですが、最近は体の不調も合わせて診察、治療するようになってきています。
最近は、うつの症状で便秘や食欲不振、頭痛、めまいなどの体の不調を訴えてくる「仮面うつ病」が増える傾向にあります。これは、精神症状が身体症状という仮面に隠されてしまって、体にあらわれているのです。では、心と体の関係は本当はどうなっているのでしょうか。
そして、心はどこにあるのでしょうか。
脳だとしたら、どの部分にあるのでしょうか。

昔から、心と体の関係は、医学でも哲学でも大きなテーマでした。解剖学的アプローチも盛んですし、脳研究の第一線でも、精神活動の源を懸命に探しています。
体と心の関係は、不即不離だと考えています。仏典に「心身不二」という言葉があります。「不二」とは、密接につながっている、2つに見えて、実は本来1つのものであるという考え方です。つまり、体が冷えれば心も冷え、心が冷えれば体も冷える関係になります。

体に冷えがある人は心にも問題を抱えています。体の冷えと心の冷えは、まさに「不二」なのです。体の冷えが万病の元であるように、心の冷えもさまざまな病気を引き起こします。
心の冷えとは、ストレスなどで心が抑圧された状態だと考えてください。自律神経のバランスがくずれ、免疫力が落ち、自然治癒力も発揮できなくなる状態です。

東洋医学では「心身一如」といい、心が関与していない体の不調はないと考えてきました。現代の西洋医学の第一線で活躍している医師のなかにも、「すべての病気は心身医学を適用して診療されるべきである」と主張する人があらわれてきています。

生き方を変えれば病気は治る

ところが多くの病院では、検査をして異常がないと、「とくに問題はないと思いますよ。一応、胃のお薬を出しておきますね」などと薬を投与して経過をみる程度に終始しています。
その結果、仮面うつ病や心身症などは見落とされてしまいがちなのです。憂慮すべき問題です。病気は、たまたまなるのではありません。心と体のコンディション、生活環境、家族環境、生き方と深く関連しています。

細菌やウィルスに感染しても、生き方による免疫力の違いで発病する、しないに分かれることがほとんどです。うつは再発しやすい心の病気です。
なぜかというと、その症状を抑えても、生き方の構造を変えないと、また、なにかのきっかけで落ち込みに襲われて再発するからです。

しかし、生き方の構造を変えれば、病気が再発しなくなるというのも、考えてみれば道理です。うつだけでなく、胃腸病やぜんそくなども、対症療法で表面だけを抑えても、病気は根本的には治りません。

その昔、心臓病の外来で待合室のいすの前の部分が異常に早くすり切れるのを見つけ、心臓病になりやすい人には共通の性格特徴、行動特徴があることを発見しました。心臓病になりやすい人は「A型」といわれ、行動的、活動的、攻撃的、陽性です。

これに対して、心臓病になりにくい「C型」は、内気、消極的、非活動的、自己抑制的、自責的なのです。これをきっかけに、病気と気質の関係の研究が盛んになりました。

A型性格、C型性格

米国で、身体的に健康な男女数千人を、「A型」「C型」、どちらでもない中間的な「B型」の3種類の性格・行動パターンに分けて、10年間追跡調査したことがあります。
いわば、どのような性格がどのような病気をつくるのかという研究・調査です。すると、ガンを発生した人は圧倒的に、自責的・自己抑制的傾向を持つ「C型」が多かったというのです。これは、どうしてでしょうか。

ガンは細胞分裂の過程で偶発的に生まれた異形細胞が増殖し、周囲の正常細胞を浸食する病気です。発端は、細胞分裂するときに発生したミスコピーです。人体はぎっと60兆個の細胞でできていて、それが毎日、細胞分裂をくり返しています。
当然、1日にいくつものミスコピーが生まれているのです。しかし、自律神経がとうたバランスよく働き、免疫力が活性ならば、ミスコピー細胞はすぐに淘汰されてしまい、ガンは発症しません。

ところが抑圧型「C型」の人は、自律神経のバランスがくずれているので免疫力が低下し、ミスコピー細胞を淘汰できず、ガン細胞が生き残ってしまうのです。「C型」の行動パターンは、うつとほとんど合致しています。自分を抑え込むうつ傾向の人は、ガンになりやすいのかもしれません。

ガンは予防できる「ガン予防の12か条」https://www.malignant-t.com/archives/1なども重要であるでしょう。
それはまだ証明されていない推論でしかありませんが、ガンも、うつも、根底には、自分を抑え込む考え方、自分以外の価値観を優先し、大事にする考え方があるのは事実でしょう。その価値観を見直し、生き方を変えていかなくてはなりません。このことが、冷えをとるということなのです。

このように、その人の生き方そのものを変えることに最重点をおいて、向き合っています。それを理解していただくと、長く続いていたうつなど心の不調も短期間で改善され、再発もしなくなるのです。