自律神経を整えると、相手の態勢が変わる

2020/11/06

誰でも自分の話は「聞いてもらいたい」「理解してもらいたい」と思っています。そのためにもっとも大事なのは「相手が聞く状態になっていること」です。

話を聞く
話を聞く

たとえば、病状について説明するとします。ところが、その患者さんが不安を抱え、軽いパニック状態に陥っているとしたら、病状の説明などしてもまったく伝わりません。

話をするうえでなによりも必要なのは、相手が落ち着いて、聞く態勢を整えていること。もっといえば、相手の副交感神経を高め、血流を良くすることが、話を聞いてもらう最大のコツなのです。

ときどき、上司が部下に早口でまくし立てている状況があります。指導なのか、指示なのかわかりませんが、はっきりいってあれはまったく無意味です。

双方にとって何のメリットもありません。早口でまくし立てる方は、当然交感神経が跳ね上がっていますから、冷静な判断力を失い、「本当に言うべきこと」を正しく口に出せていない状態です。

一方、話を聞いている(と思われる) 部下のほうも、交感神経が高ぶっているので、情報をキャッチし、咀嚼する準備ができていません。結局は、感情を吐き出しているだけで、何の効果も得られません。

「ゆっくり」は緊張を解く最大の近道

そもそも、自律神経とは周囲に伝染するものです。何かの発表を前に緊張している人がそばにいると、つられて自分も緊張してしまう。そんな経験があるでしょう。

あれこそまさに自律神経(の乱れ)が伝染しているのです。つまり、話を聞いてもらうには、まず自分の副交感神経を高め、その落ち着いた状態を相手に移していく必要があります。

その際に、もっとも効果的なのが「ゆっくり話す」ということ。まずはあなたが話すスピードを意識的に少し落としてみてください。これだけでも「相手との関係」「相手の聞く姿勢」にかなりの違いが出てきます。

「ゆっくり話そう」と意識することがとても大事。その意識が生まれた瞬間から、自律神経は整いはじめるからです。

この状態になってしまえば、あなたはすでに落ち着きを取り戻し、その状態は相手にも伝わっていきます。1対1で話すとき、会議で発言するとき、大勢の前で発表するときなど、どんな場面でも話しはじめる一瞬前に、「ゆっくり話そう」と自分に対してつぶやいてください。

そうやって自分に意識づけをして、暗示をかけるのです。それだけで副交感神経が上がり、話すほうも、聞くほうも、多少は緊張がほぐれます。「話のうまい人」というと、早口でベラベラしゃべっているイメージを持っているかもしれませんが、注意深く観察してみると、本当に演説のうまい人、人を説得するのが得意な人はど「大事なことはゆっくり」話しています。

感情や思いを発散したいならともかく、内容をきちんと伝えたいなら、ぜひゆっくり話してください。これこそ医学的な見地から見たコミュニケーションのコツです。