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自律神経失調症の診断基準

自律神経失調症は、概念や定義があいまいなため、診断が非常に難しい病気です。さまざまな角度から、できるだけ時間をかけて丁寧に検査をして、総合的に診断する必要があります。
日本心身医学会がまとめた「自律神経失調症の診断基準」によると、次の3点に該当する場合は自律神経失調症とみなす、とされています。

  1. 全身倦怠感やめまいなどの不定愁訴がある
  2. 器質的疾患や精神障害がない
  3. 自律神経機能検査で異常が認められる

実際にどのような検査が行われるのでしょうか。

除外診断で他の病気の有無を調べる

まず、初めに1の不定愁訴(自覚症状) について調べられますが、これは病院に用意してある質問シートに記入する方法が一般的です。
その後、2 の器質的疾患や精神障害の有無を調べる「除外診断」が行われます。動悸やめまい、全身倦怠感などの症状は、内臓の病気や精神的疾患が原因で起こることがありますから、ほかの病気が隠れていないかどうかを確認しなければなりません。
たとえば、糖尿病の初期には疲労感や倦怠感、頻尿、口渇などの症状が現れます。脳腫瘍の場合は頭痛やめまい、耳鳴り、体のふらつきなどを伴うことがありますし、無気力感や不眠、食欲不振などの症状は、がんなどの病気によって引き起こされていることもあります。
このような命にかかわる重大な病気を見逃さないように各種の検査が行われます。この除外診断では、患者さんの症状に応じて脳波検査や心電図、レントゲン撮影、超音波検査、CTスキャン検査、MRI検査、尿検査、血液検査、内分泌検査などが実施されます。
また、命にかかわるほどの病気ではなくても、貧血や高血圧などが原因で自律神経失調症状が現れることもあります。検査の結果、特定の病気が発見された場合は、それを治療しなければ、不快な症状はいつまでも解消されません。
神経症やうつ病、精神分裂病、てんかんなども自律神経失調症と似た症状が現れることがあるため、これらの精神障害と区別するための検査も行われます。

自律神経機能検査

臨床検査で自律神経の乱れが確認できる場合があります。ただし、どの検査方法も安定性がなく、確実ではないため、症状に合わせていろいろな検査を組み合わせて行います。

血管の運動神経や心臓の働きをみる「立位心電図

横になった状態で心電図をとり、次に立った姿勢でもう一度測定し、その波形の変化で、自律神経に乱れがないかどうかを調べます。
健康な人は、寝ているときも立っているときも、波形に極端な変化は見られませんが、自律神経が不安定な場合は、血管の運動神経や心臓の働きを調整する力が弱いため、立ち上がったときに波形に乱れが生じます。

心拍リズムを調べる〔心電図R-R間隔

安静にしているときは、心臓は一定のリズムで動いていると思われがちですが、心電図などで調べると、微妙に変化していることがわかります。
しかし、交感神経と副交感神経の調節機能が低下すると、心拍をコントロールする機能が働かなくなるため、心拍リズムは一定になってしまいます。この検査は、心身ともに安静な状態で15分以上横たわり、心電図を記録してR波(波形のいちばん高いところ)とR波の間隔を調べるもので、変動が少ない場合は、副交感神経の機能が低下していると診断されます。

血圧の変動を調べる〔シュロンク起立試験〕

最初、10分以上静かに横たわった状態で血圧を測定し、その後立ち上がったときにどう血圧が変動するかを測定する検査です。自律神経が正常に機能しているときは、姿勢を変えても血圧はそれほど大きく変動しません。しかし、立ち上がったときに血圧が大きく下がる場合- 具体的には最高血圧が21mmHG( ヘモグロビン)以上、最低血圧も116mmHG以上、下がる場合 は、自律神経の働きが弱って脳に血液が十分送られていないためと考えられます。
この場合は、めまいや立ちくらみなどの起立性低血圧症状を伴うことが多いようです。同じく立ち上がったときに、最高血圧が下がって、最低血圧が上がり、高低の差が小さくなる場合は、手足の末端から血液が心臓に戻る働き(静脈還流) が不十分なためと考えられます。
その結果、疲れやすさやだるさ、脱力感などの症状が起こりやすくなります。

指の微細な振動を測る〔マイクロバイブレーション〕

体の表面に起こる微細な振動を「マイクロバイブレーション(MV)」といいます。このMV の振動数を測定・分析して、自律神経機能の状態を検査する方法です。
室温を20~25度に保った場所で横になり、安静にします。
利き手の反対の手の親指に自然に起こる細かい振動を5分以上測定し、これを脳波計や心電図に連動させて周波数を求め、コンピュータで分析します。周波数の帯域にょって、交感神経と副交感神経の緊張の度合いなどを調べます。

皮膚をこすって反応をみる「皮膚紋画症」

細い棒状のもので、腕の内側などの皮膚を一定の圧力をかけてこすり、皮膚に現れる反応を見るものです。自律神経のバランスがとれている健康な人なら、数秒後に白い筋が浮き上がり、5~10分後には消えますが、自律神経のバランスが乱れやすい人は、こすった部分が赤くなったり、みみずばれのように盛り上がってなかなか消えず、かゆみを感じることもあります。これは、交感神経の末端を刺激すると毛細血管が収縮するという性質を応用したもので、自律神経のバランスが悪い人ほど、反応が強く現れます。

女性を対象にした〔基礎体温診断法〕

女性の場合、月経の1日目から排卵日にかけて基礎体温が低くなり、その後約2週間は高くなるのが正常なサイクルです。しかし、自律神経のバランスが乱れると、低温期と高温期の変化があまり見られなくなります。

ストレスの要因を探る心理テスト

除外診断でほかの病気の有無をチェックし、自律神経機能検査で交感神経と副交感神経の状態を調べたあとは、症状の背景にある心理的要因を探っていきます。
基本となるのは問診や面接ですが、問診の前に質問シートに記入してもらい、それをもとに問診を行う病院もあります。
ふつう、質問シートには心理テストも含まれており、体の状態だけでなく、心理状態についても記入するようになっています。心理テストには、性格的特性をみるもの、行動パターンをみるもの、神経症傾向をみるもの、ストレス耐性をみるものなど、さまざまなタイプがあります。

心身全般の健康度を調べる〔CMI〕

CMI(コーネル・メディカル・インデックス=コーネル医学目録) は、アメリカのコーネル大学で開発された心理・性格テストです。
「目・耳」「呼吸器系」「心臓血管系」など身体的自覚症状に関する質問が132項目、
「不適応」「不安」「緊張」など精神的自覚症状に関する質問が51項目、既往症を問うものが15項目、「行動・習慣」に関する質問が6項目の、合計204別項目が設けられています。
心身全般をチェックできるようになっているため、心理テストに抵抗のある人にも受け入れられやすく、世界的に使われています。

自律神経症状を調べる〔TMI〕

自律神経症状の調査票で、自律神経性愁訴に関する43の資間項目と、CMIの精神的自覚症状に関する51項目とで構成されています。
それぞれ11項目以上の症状にあてはまれば、自律神経失調症の傾向があると判断され、該当する項目が多いほど程度が重いと考えられます。また、その結果をもとに自律神経失調症のタイプを判断する「CMI阿部法判定図」もあります。

ストレス状態を調べる〔ストレス・チェックリスト〕

さまざまなストレス調査表が開発されていますが手のひらやわきの下の汗、耳鳴りなどの身体症状に関する30項目からなる簡便なテストです。手元に置き、ときどき自己チェックしてみるのもよいでしょう。

ストレス耐性度を調べる〔STCL〕

同じ程度のストレスにさらされても、ほとんど感じない人もいれば、重荷となってしまう人もいるように、ストレスに対する反応は人によって異なります。そうしたストレス耐性を調べるもので、これも日本大学の村上正人両氏が開発しました。

ストレス耐性や性格傾向を調べる〔Y・G性格検査〕

アメリカのギルフォード博士らが作成した性格テストを、矢田部民らが日本人向けに改訂したもので、「矢田部・ギルフォード性格検査」といいます。
社会適応性や性格安定度、活動性、外向性・内向性などを調べます。これによって社会的ストレスに対する耐性度や性格の傾向を知ることができます。

気質を調べる〔INV〕

クレッチマーの精神病学的性格分類をベースに考案されたもので、循環気質、分裂気質、粘着気質、神経質、ヒステリー気質などを調べます。これらの要素が多い人は、自律神経失調症になりやすいといわれています。

不安や恐怖の程度を調べる〔MAS〕(顕在性不安尺度)L

日常生活の中で、不安や恐怖をどの程度感じているかを調べる検査です。比較的簡単に不安状態を知ることができ、神経症型自律神経失調症かどうかをこのテストで判断できることもあります。

人格傾向を調べる〔MMPI〕

「ミネソタ多面的性格検査」といい、ミネソタ大学で開発されたテストです。心気傾向や抑うつ傾向、ヒステリー傾向があるかどうか、社会的か非社会的か、男性度・女性度などを調べて、多面的に人格を判断します。

エゴ(自我 の状態を調べる「〔ゴグラム〕

交流分析を基にした心理テストで、対人交流パターンを調べることによって自我の状態を知ることができます。
人間の心の中には、

  • 批判的な親
  • 養育的な親
  • 大人
  • 自由奔放な子ども
  • 順応した子ども

の5 つの面があると考え、そのうちのどのパターンをとりがちかを調べて、生き方に対する態度を判断するものです。

抑うつ状態を調べる〔SDS(抑うつ尺度)〕

うつ病と区別するために抑うつ状態を調べる心理テストがあります。よく使われているのは、ツング博士が開発した「SDS」です。

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