治療の方針

心身の両面から

自律神経失調症のように、心が深くかかわっている病気の治療は、診断と同じように、心と体の両面から行うことが大切です。これを「全人的治療」といい、体の面から治療する「薬物療法」と、心の面から治療する「心理療法」とに分けられます。
薬物療法に用いられる薬は、次の2つに大別されます。

  1. 自律神経そのものを調節して身体症状を改善するもの
  2. 不安や不眠、抑うつ状態などの精神症状を取り除いて精神の安定を図るもの

心理療法

  1. 心から体に働きかけるもの(簡易精神療法
  2. 体から心に働きかけるもの(自律訓練法)
  3. 心から心に働きかけるもの(内観法や森田療法など)

治療法はその人の症状や性格によっても異なる

実際には複数の治療法を組み合わせた治療を行います。どのような治療法を用いるかは、自律神経失調症のタイプや患者さんの性格、心理的・社会的要因の種類などによって異なります。とくにこの病気にかかる人のなかには、薬に対する不安が強い人や、心理療法に疑問を抱いている人、あるいは体の緊張が強くて自律訓練法などでは効果が現れにくい人なども少なくありません。
したがって、患者さんの症状や治療法の適性などを考慮しながら、最も効果のある治療法を選ぶことが、心療内科医の大きな役目になります。
本態性型自律神経失調症
ストレスや人間関係などの心理的・社会的な要因は比較的少なく、自律神経のバランスが乱れやすい体質の場合は、自律神経調節剤や抗不安薬などの薬物療法が中心となります。
そのほか、自律訓練法などの心理療法で、自律神経の機能を回復させる治療を行うケースもあります。
心身症型自律神経失調症
日常のストレスが原因になって起こることが多く、自律神経の機能低下もみられるタイプです。そのため、心身両面からの治療が必要になります。症状に合わせて、自律神経調整剤や抗不安薬などで症状を改善し、精神の安定を図ります。
症状がある程度落ち着いた段階で、交流分析や行動簡法などを用いて性格のかたよりを修正したり、ライフスタイルを改善する指導などが行われます。
神経症型自律神経失調症
自律神経の機能そのものにはあまり異常は見られず、心理・社会的要因が大きく影響していると考えられるタイプです。重大な病気だと思い込んでいる人が多いため、まず、面接によって医師が病気を十分に説明するなどの心のケアが必要になります。
治療は、まず抗不安薬などの薬物療法で不安を取り除きます。そのうえで、症状にとらわれることなく通常の生活が送れるよう、簡易精神療法や行動療法、交流分析、自律訓練法などの心理療法が行われます。

治療期間はそれぞれ異なる

治療にどれくらいの期間を要するかは、いちがいにはいえません。症状の程度に個人差があると同じように、治療期間も人それぞれです。1~2週間ごとに、半年間くらい通院するだけで改善する人もいますが、一時的によくなっても、ストレスを受けたとたん、再発してしまうこともあります。
一般的には、2 ~3年くらいかけてストレスを自分で処理できるように心身を整えたり、ライフスタイルを改善していきます。なかには10年以上の長期にわたって治療を続けている患者さんもいます。症状は落ち着いているのですが、定期的に受診し、症状を医師に聞いてもらって薬をもらうことが、生活の一部になっているようです。

3つの治療パターン

ひとつめは、身体症状に心理的ストレスがかかわっていることを、自分でもある程度は認識しているが、症状をうまくコントロールできずに悩んでいるタイプです。
これは、症状と心理的要因の関連について理解を深めてもらうための心理療法が主体になります。抗不安薬などを補助的に用いながら症状をコントロールし、問題解決のヒントを与えたり、対処のしかたをアドバイスします。
ふたつめは、症状の背景に、気圧・寒硬の変化の影響を受けやすいことや、休質的な要因があり、心理的なストレスがあまりかかわっていないと思われるタイプです。
このタイプは、抗不安薬、自律神経調整薬、漢方薬などの薬物療法を用いるとともに、自律神経を調整するために自律訓練法や呼吸法を指導する○さらにライフスタイルを検討し、症状の引き金となる習慣行動パターンを修正するようにします。
3つめは、持続的な不安症状があり、なんらかの病気ではないかという心配が強く、心理的な要因については、あまり重要視していないタイプです。
十分な検査と患者さんの訴えをよく聞き入れることで信頼関係を築き、症状を意識しすぎることがかぇって症状を強くしていることを理解してもらうようにします。
そして、意識をほかへ向けることの必要性を説明し、症状がなくなってから物事をやろうとするのではなく、症状とうまくつき合いながら社会生活を送っていくように働きかけます。

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