自分の中の「子どもの心」をもっと自由に

本当の自分は何を求めているのか?

誰もが、みんな昔は、子どもでした。でも年齢を重ねるにつれ、このあたりまえのことを忘れてしまい、生まれたときから大人だったような顔をしがちです。

もしかしたらあなたは、ふだん意識しないうちに「いまさらこの年齢で… 」「もう、いい年齢だから…」などと連発してはいませんか?

「いい年齢」っていったい誰が決めたのでしょう。ある年齢になったらしてはいけないこと、するのには遅すぎることなどありません。

ただ、世間の非難をあびないために「このくらいよろいの年齢の人はこんな風に行動すべきだ」と自分で勝手に枠や鎧をつくり、自分からその中に逃げ込んでいるだけのような気がします。

ビジネスの場や人間関係、また家庭でも、人との和を保つためには、ある程度の妥協や忍耐、そして最低限のルールを守ることは、欠かせない条件です。協調性のまるでない人は、つまはじきされてもしかたがありません。そうならないよう、

大多数の人が認めてくれる枠や鎧を身につけることは、生きていく上でのひとつの知恵でもあるでしょう。

でも、それも限度問題。本当の自分の気持ちを抑え込むことの度を越すと、心身に大きな負担がかかります。

抑えすぎたエネルギーはいつか爆発して、心やからだに悪影響を与えることになるのです。地球の奥底にたまったエネルギーだって、ときどき地震や噴火などの形で地上に噴き出すのと同じです。

小さな爆発をしょっちゅうくり返しているときは、それなりの対応策をこうじることができますが、なんの前触れもなく、たまりにたまったエネルギーが一気に噴き出す大爆発が起きた場合は、ただオロオロとして被害も莫大なものになるものです。

人間の心とからだも同じことが言えるのではないでしょうか。大爆発を起こして、とりかえしがつかなくなる前に、ときどき「本当はどうしたいの?」と問いかけてあげましょう。たとえば、子どもの頃になりたかったものは誰にでもあるもの。お医者さん、先生、お菓子屋さん、おもちゃ屋さん、など。

実際になれそうなものから荒唐無稽なものまで、のびのびと声に出していたように思います。ところが現実は、それとはかけ離れた職業につき、思いもしなかった日常を送ることがほとんどでしょう。

このあたりに、満たされなかった子どもの心がたまっていて、大人になってから反乱を起こすこともあるのです。休日に、子どもの頃になりたかったものになってみることで(正確には疑似体験ですが心身のバランスを取り戻すことに成功した人がいます。

Tさんは自動車のセールスマン。毎月ノルマに追いまくられているためか、いつも消化器の調子が悪く、そのうち営業に歩くと数十分おきにトイレに駆け込む状態が続くようになりました。

医師の診断は「神経性腸炎」しばらく自宅療養をすることになりました。家でゴロゴロしていればお腹の調子はよく、他に症状はないのですから、奥さんの風あたりも強くなる一方です。

でも、出社するとまた症状が出るというくり返しでした。5歳の子どもの寝顔をながめながら、「このくらいのころはバスの運転手になりたかったなぁ」と、いまでは車のことを考えるだけでお腹が痛くなる自分がなさけなくなりました。

そして翌日、わたしのすすめに従って、子どもと一緒にバスの一番前の座席に陣取って、バスを運転しているような気分を味わってみたのです。イメージの中の自分は、子どものころ憧れていたバスの運転手。純粋に車を好きだった気持ちを思い出すこともできました。

いま.では休日に、多いときは1日に五系統ものバスに乗って「運転」を楽しむこともあるのだとか。「東京中のバスを全部運転するんだ! 」と、まるで子どものように張り切っています。

あんなに悩まされた腹痛もウソのように治ったことは、言うまでもありません。「運転中」に発見した街の風物詩や車の話を、仕事先との会話に生かせるというオマケもあるようです。

また、現在、弁護士として活躍中のS さんは、ラジコン飛行機に凝っています。雨が降らないかぎり、休日は奥さんと郊外に出かけ、自然の中で飛行機を飛ばして楽しむのです。いつも穏やかで、そのくせイザというときは鋭い論旨展開をするという評価を得ている彼は、一見、なんのストレスもないように見えます。

その彼が、数年前は自殺未遂をするほどボロボロになって、わたしのカウンセリングを受けていたなんて、誰が信じるでしょう。司法試験に四回連続失敗、学生時代からの恋人にも去られて自信をなくし、将来に希望が持てなくなって強度のうつ状態に落ち込んでいたのです。

まず自分のよいところを探し、自分も捨てたものじゃないと生きる気力を取り戻すことから始めたS さんは、その後、いまの奥様ともめぐり会って、徐々に前向きに将来を考えるようになりました。

でも、なかなか司法試験に再トライする勇気は出てきません。「本当は子どもの頃からパイロットになりたかっ.たんだ」と逃げるようにつぶやくS さんに、それは趣味の世界で実現することをお勧めし、司法試験に合格する場面をくり返し思い描くイメージトレーニングで、自信を取り戻してもらいました。

その後、めでたく弁護士として活躍するようになり、わたしの勧めどおり、ラジコン飛行機を組立て大空に遊ぶという楽しみも手に入れました。いまの彼の活躍は、子どもの心に返ってラジコン飛行機と遊ぶことが、原動力になっているのかもしれません。

愉しんで生きる

Posted by relax