どうしても好みや考え方が合わず、付き合いにくい人がいる

2024-10-25

賢明な方法の選択も

人間関係に始まって人間関係に終わるといっても過言ではない日常生活ですが、世間にはなんとなくウマがあわない人が必ずいるものです。

転職する人には、よく「人間関係に疲れた」ことを理由にあげる人がいますが、仕事そのものに関することならまだしも、人間関係でそのたびに職場を変えていたらきりがありませんし、永遠に転職し続けなければいけなくなるでしょう。

それに、変わったからといって、必ずしも次の職場の居心地がよいとはかぎりません。どこに行っても、他人とのかかわりはつきまとうもの。たとえ波長が合わなくても、考え方の違う人でも、上手につき合っていくには、自分なりの割り切りや工夫が必要なのではないでしょうか。

そんなときの割り切り方のひとつは、「この人とは「住む星が違うんだ」と心の中でとなえて、相手にしないようにすることです。とても失礼なことかもしれませんが、相手を同じ地球人ではなく異次元の生物なのだと思えば、価値観が驚くほど違っても、見当外れの言動があっても、それほど腹も立たないというものです。

第一、「腹を立てる」「緊張する」「憎む」「恨む」「嫉妬する」などというマイナス方向にエネルギーを使うのは、もったいないと思います。一人の人間が一生のうちに持っているエネルギーには限りがあるものです。同じ使うのなら、前向きなプラス方向に使ったほうがよほど自分のためになります。「負けるが勝ち」という言葉があるように、イヤなこと、苦手なことに、いつもいつも真正面からぶつからなくてもよいのだと思います。

たとえ人前で悪口を言われたとしても、争わずに「住む星が違う」とやりすごせば、ストレスがたまらず、エネルギーも無駄遣いしません。かえって、周りの人から好感を持たれる結果になるかもしれません。

ただ、そうは言っても、いつもいつもそっぽを向いてすむことばかりではない、どうしても逃げられない人間関係だってある、という人もいるでしょう。

大手繊維会社の課長補佐であるNさん、45歳もそうでした。春に新任のY 課長が配属されてきたのですが、七歳年下の「なかなかのキレ者」というウワサの人物。しかし、一緒に仕事をしてみると、なんとなくお互いにしっくりいかないことに気づきました。

NさんはY課長を「要領だけで仕事をしている人間」と感じ、Y課長のほうはNさんを「融通性がなく、頭がかたい目の上のたんこぶ」と思ったようです。

ベテランのNさんと、新任のY 課長との無言の対立は、なんとなくその課全体のチームワークを悪くし、とうとう業績もダウンしてしまいました。そんな状況に責任感の強いNさんは苦しみ、元気をなくす一方でした。それでも毎日重い足取りでも出勤していたのですが、決定打がやってきたのは、半月あまり後のこと。仕事中に激しいめまいにおそわれて、歩くこともできなくなり、救急車で運ばれました。いろいろ検査を受けましたが、身体的にはまったく異常が見つかりませんでした。

しばらくして、退院して出社すると、また同じような症状が出ました。自律神経失調症と診断されましたが、薬を飲んでも効き目はありませんでした。やはり、原因はY 課長との人間関係にあるのだと気づいたNさんに、効果のあった考え方です。

  • 相手を好きになれなくても、自分からは嫌わない。
  • 相手の長所を見つけ、そこに焦点をあてて自分と合わない面をカバーする。
  • 仕事と割り切りできるだけ協調する。
  • 相手を敵だと思わず、自分とは別の次元の人なのだからしかたがないという広い気持ちで接する。
  • 気分転換の方法を必ず持つ。

そのうえで、「Y課長と談笑しながら、イキイキと仕事をしている自分」を毎日イメージしてもらうようにしました。

はじめのうちはかなり無理をしていたNさんですが、仕事のためと割り切ってずいぶんと努力したようです。しばらくすると、「少しずつですが、Y 課長との関係もよくなって、仕事もスムーズにいくようになった」とのことでした。

Nさんのように、企業の厳しいタテ社会に生きている人の中には、「そんなに頑張らなくてもいいよ、そんなに責任を感じなくてもいいよ」と、やさしく諭してあげたい人がたくさんいます。どうしても逃げられない人間関係の中にいるのなら、せめて頭の中で相手と自分を違う星に住まわせましょう。あまりにも違いすぎて、同じ言葉では語り合えない、だからケンカさえもできない星の住人に。これは一種の逃げかもしれませんが、ある種の割り切り、生きる知恵なのだとも思います。