なんとなく好かれていないと思う

自分に置き換えてみる

生まれながらにして人の心をつかむコツを知っているような「愛され上手」な人がたまにいますね。
なんの努力も苦労もなく人間関係を築き、周りの人に好かれているように見えるのです。

しかし、それとは反対に、なんだか周りから自分だけ浮いているような気がする、なぜだか嫌われているような気がする、でもその理由がよくわからない、という人もいるでしょう。

同じ人間なのに、いったいどこに違いがあるというのでしょうか?それは、第一に相手の立場に立ってものを考えることができるか、第二に相手を思う気持ちを上手に伝えることができるか、という点です。

第一の「相手の立場に立って」 というのは、簡単なようで実はとてもむずかしいことです。いつも健康な人は、からだの弱い人の苦しみやつらさを本当には理解することはできません。

それと同じように、心に傷を受けたり悩んだりしたことのない、つまり楽観的で精神的にタフな人には、他人の悩みや不幸に対する思いやりや気遣いが欠けがちです。

相手の心のひだの奥までは感じとれなかったり、いくら言葉で思いやりのあるところを見せようとしても、相手にとっては上っ面の行為でしかなかったりするのです。

では、相手の心を本当につかむためにはどうすればよいのでしょう。もしも、あなたが他人の心の動きに鈍感な方でも、相手の話に心から耳を傾けて、その人の心を楽にする手助けだけはできるはずです。

また、話すときには「もし、こう言われたら、自分だったらどんな気がするだろう」とひと呼吸おいて考えてみることも、相手の立場に立って考えるひとつの方法です。

第二の「‥… 上手に伝える」については、ほんの少しのコツを知ってトレーニングすることで、ずいぶんとうまく相手に気持ちを伝えることができるようになります。「好感を持っている」ことを自然に伝えるのには、親しみをこめた心からの「笑顔」 にまさるものはないでしょう。

笑顔になるのがむずかしいときは、奥歯を少しだけ噛みしめて口の端を持ち上げる、という形だけでもつくってみてください。くり返し練習するうちにホンモノの笑顔を手にすることが、きっとできます。

また、「好感を持っている」ことを言葉で上 手に伝えたいときは、相手のよいところを見つけて「ほめる」ようにします。ほめられて嬉しくない人はまずいません。どんな人にも必ずある素敵な面を探して、それを言葉にしてみましょう。

ただし、やりすぎは禁物。思ってもいないのに歯の浮くような美辞麗句を並べ立てても、イヤミにしか聞こえません。第一、ふだんからほめなれていないと言葉が出てきません。

だからときどき、こんな風にトレーニングしてみることをお勧めします。たとえば異性をほめるとしたら、ただ、かわいい、美しい、素敵、若いなどと言うだけではなく、なるべく具体的な表現を考えてみます。行き詰まったら「五十音順」に考えるのもひとつの方法。「あ」だけでも、明るい、あでやか、愛らしい、あどけない、あっさりした、頭のよい… どんどん出てくるでしょう?

とても評判のよいゲームに次のようなものがあります。二組に分かれて風船をパスし合うという簡単なものですが、パスするときに相手を「ほめる」 言葉をひとつ言うのです。必ずそれまでに一度も出なかったほめ言葉を言うのがルール。

バリエーションとしては、円形になって真ん中に一人を立たせ、みんなで片っ端からほめる、というのもあります。ほめられた人はだんだん嬉しくなって自信が持てるようになり、誰もが気持ちのよい盛り上がりのうちにゲームが終わります。

いつも人の魅力を見つけようと心がけていると、「魅力探し」の名人になれるかもしれませんね。

ただし、ほめたつもりが実は相手を傷つけていたという、こんなケースもあります。

Y さんは30歳代前半のビジネスマン。一見、誰からも好かれそうな穏やかな雰囲気の持ち主です。人に嫌われないのが取り柄だと思っていたのですが、最近、なぜか上司に煙たがられているような気がして、胃に潰瘍ができるほど気に病むようになりました。

心理テストの結果は、彼は典型的な分裂気質。このタイプの人は、繊細さと鈍感さという両極端の性質を併せ持ち、悪気はなくても人を傷つけてしまうことが多いのです。記憶をたどってもらったところ、上司がY さんを避けはじめた頃、こんなことがありました。

上司が念願のマイホームを手に入れ、引っ越しを同じ部署の仲間数人と手伝いに行ったのだそうです。うらやましいほど素敵なお宅で、Y さんは心からほめました。ところが、ほめた内容を具体的に聞くと、そのひとつが「端っことはいえ一応、都内ですしね」というもの。

想像にすぎませんが、もしも、この上司がもっと都心に家を持ちたかったのに資金などの都合であきらめたとすれば、この言葉は心にひっかかったかもしれません。

もちろん、この言葉だけで上司との関係がギクシャクしはじめたとは思えませんが、日々、このたぐいの小さなしこりが積み重なっていったことは、十分想像できます。Y さんに必要なのは、「もし、これを自分に言われたら…」と考えることを習慣にすることでしょう。自分が言われてイヤなことは、相手だってイヤに決まっていますからね。