心の回復力 をつける

2024-10-25

心の回復力 とは、いわゆる困難な問題が生じたとき、それにどんな対応ができるかで、その人の価値が決まるとも言えるかもしれません。

そうはいっても、突然予期していなかった悪いことが起きたときに、適切な対応ができる人がどれだけいるでしょう。心の回復力 が必要な時が必ず誰にもくるのです。

立ち直る「きっかけ」をあらかじめ決めておく手もある

 

たいていは、あたふたしたり、おろおろしたりしてしまうと思います。

さて、そこから立ち直る早さには、かなりの個人差があるようです。いつまでもつらく落ち込んだ気持ちから抜け出せずに、次にやってくるだろう良いこと、楽しいことをいつのまにか逃してしまう人。

そうかと思えば、心配したこちらの気が抜けるほどあっさりと笑顔を取り戻して、新しい世界に飛び込んで行く人。どうせなら後者の人のようになりたいと思うのは、多くの人に共通しているはずです。

実は、落ち込みの輪から脱出するのはそんなにむずかしいことではないのです。ひと呼吸おいて、つらい状況に「ちょっとお休み」するだけで、驚くほど簡単に気持ちは切り替わり、そうしているうちに事態も好転するものです。

でも、その「ちょっとお休み」がむずかしい、そんなに器用に気持ちを調整することができない、という人には、必殺法を教えましょう。

言葉〃でも「動作」でも「もの」でもかまいません。立ち直るきっかけになる自分だけの「おまじない」を決めておくのです。

子どもの頃、お腹が痛くなったりけがをしたりすると、お母さんがやさしい手でなでながら「チチンプイプイ、痛いの痛いのあっちのお山へ飛んで行け」と唱えてくれ、痛くなくなった(ような気がした)、あれと同じです。

「水戸黄門」の家紋入り印籠のように、それを取り出しさえすれば、必ず悪者はひれ伏して、すべてがまるく収まるきっかけになるものがあると便利ですね。

うまく自分専用の「おまじない」を考えつきそうになければ、既製品を借りてみてはいかがでしょう。

シャンソンの「ケセラセラ」、なるようになるさ。「風と共に去りぬ」のスカーレットが悲しみに押しつぶされそうなときにつぶやく「明日考えることにしよう」「
メアリーポピンズ」に登場する幸せな気分になれるおなじない「スーパーカリフラジリスティックエクスピアドーシャス」なんて舌をかみそうになりながら唱えるうちに笑ってしまいそう。

また、平安貴族が右足は「福」、左足は「貧」と決めて歩き、家の門の出入りは必ず縁起がよい右足になるよう歩幅を調整したという話。

スポーツ選手が勝った試合で身につけていたものを次の試合でも身につける、などという、縁起かつぎ、ジンクスと呼ばれるものも、「おまじない」の一種です。

この「おまじない」を持つ人がたくさんいます。

Tさんは31 歳の兼業主婦です。プライドが高くて、夫婦げんかがささいな発端から始まったことでも、自分からは「ごめんなさい」という一言がどうしても言えないため、いつも深刻な口論にまで追い込まれてしまいます。

そこで彼女は、大好きなお菓子を食べたらそれをきっかけに必ず「ごめんなさい」と口に出すことに決めて、家族にもそう宣言しておきました。すると、仲直りしたいときには、ご主人のほうでもそのお菓子を買ってきてくれるようになったそうです。

他人からみたらバカバカしくても、当人にとってはいい「きっかけ」つくりになっているのです。

また、こんな営業マンの話もあります。彼は自他ともに認める短気な性格。でも毎日、自分を抑えてお客様に接しているため、1日の終わりにはストレスで満タンになつてしまいます。それを発散させようと、就業後に居酒屋に飛び込み、飲みすぎて居合わせた人にケンカを吹っかけてしまう、そんな毎日だったそうです。

これではいけないと考えたのが、「僕は酉年生まれ。よし、三歩歩くと物忘れするというニワトリになろう」ということでした。

腹が立ったら部屋を出て、ゆっくり三歩歩いて深呼吸するのをきっかけに、怒りを捨てることに決めました。それでも爆発しそうなときは「僕はニワトリ並みに物忘れがよい」と数回、心の中で唱えて落ち着くそうです。おかげでいまでは、「ふところの深い人」という評価を得ているんですよ」とテレくさそうに言います。わたくしごとで申し訳ありませんが、カウンセリングに来た方々がすっかり元気になり、電話や嘉でその空言受けることはたいへん嬉しいことです。ゎたしと話すことが気持ちを切り替えるきっかけ、つまり「おまじない」になれたのだな、と感じています。

「おまじない」ともいえる「キーワード」は、「ものには必ず終わりがやってくる」ということ。つらいのはいまだけなんだと思えば、気持ちもラクになります。こう胸の奥でつぶやけば、やがて訪れる喜びを待つ、心の準備になるのです。