たまには自分を褒める

落ち込みから立ち直るために

あなたは自分を褒めたことがありますか?もしかしたら「オレはどうして、こうダメなんだろう」「どうせ私なんか」などと、いつもけなしたり、腹を立てたりはしていませんか?

人間には、ほめられてヤル気になる人と、けなされて「ナニクソ! 」と発奮するタイプとがあると言われます。

でも、ほとんどの人は褒められてがんばる人が多いものです。たとえは少し悪いようですが、「豚もおだてりや木に登る」と言うではありませんか。だとしたら…。

人間は感情の動物と言いますが、その日の気分で、同じことでも受けとめ方が大きく変わるものです。

いつも安定した精神状態で、どんな問題にも冷静に対応できるのは、よほど人間ができている人。でも、ふつうは気分に左右されることが多いでしょう。仕事も毎日同じペースでスムーズに行くとはかぎりません。

失敗したり、人間関係がうまくいかなかったり、目標が達成できなかったり、いろいろなことが原因でガクンと業績が落ち込むことも、たくさんあると思います。

そんなとき、反省したり、しよげ返ってばかりいても、事態は好転しません。少しでも早く立ち直るには、そう、自分をほめてやればよいのです。

誰だって、長所のない人はありません。自分のよいところ、好きなところを見つけ出してみてください。能力、性格など、数え上げてみると、かなりたくさんあることに気づくはず。

ほら、ルックスだって、自分なりに密かに自信のあるところがあるでしょう?そんなところを思いきって盛大にほめてください。人目にはどうあろうと、自分の尺度で認め、ほめることが大切です。

いくら自分を賞賛しても、誰にも迷惑をかけるわけではありません。ある大手企業の中間管理職(平均40歳) の研修の中で、この方法を実施しました。

約15分間、思いつくままに自分へのほめ言葉を書き出してもらったところ、次のような言葉が出てきました。仕事面の能力については、判断力・決断力・先見力・洞察力がある、専門的な知識が豊富で集中力や持続性にすぐれている、責任感が強い、部下の面倒見がよい、数字に強い、字がきれい…など、数えきれないほどです。

性格面では、まじめ、冷静、積極的、明るいなど。またルックスについては、足が長い、ハンサム、年齢よりも若く見える、上品、女性にもてる、髪の毛がフサフサしているなど、ほほえましく感じるものも、たくさんありました。

思いきって自分をほめる、という見方をすると、いままでまったく気づかなかった自分の新しい面を見つけることができるものです。

それは楽しいだけでなく、新たな「自信」につながります。また、この「自分をほめる」という方法は、「うつ」に落ち込みやすい性格の人にも効果があります。わけもなく、突然落ち込んだときなどには、気持ちを明るくするのに役立つのです。

人間関係が原因で仕事をやめ、すっかり自信喪失してうつ状態に陥っていた男性(28歳)にも、自分をほめることを試みてもらいました。

最初は「何もないです… 」とつぶやく彼に、「でも、自尊心があるから、劣等感も生まれたんだ」と気づいてもらい、「あなたをバッと見ただけでも、目が輝いている、歯がきれい、清潔感がある…と、どんどん並べることができるわよ」と言いました。

そして、最低20個は自分へのほめ言葉をノートに書き出してきてもらうことにしたのです。

すると、「折り目正しい、ツメがきれい、おひとよし…」など、けっこう書き並べてきて、それをわたしが彼の前で読み上げると、最初は恥ずかしそうでしたが、だんだん顔つきが変わってきました。このようなことがきっかけとなって、自信を取り戻すことができ、人生への意欲も湧いてきたのです。

わたしは「自分をほめる」ことを、自分に「心の栄養分=プラスのストローク」を与えることだけ考えています。自分を成長させ、向上させるためには、心に栄養を与え続けることがとても大切。

自分にとってのプラスを常にチャージし続けることを習慣にすると、不思議なくらい自信が湧いてきます。

そして、もうひとつ、よいことをしたときは、十分に自分をねぎらうことです。たとえば、お得意先から大口の注文がとれた、目標やノルマを達成した、人に感謝された、人にやさしくできたときなど、「やっぱりオレには能力がある」「今月もよくがんばったなあ」「やればできるじゃないか」などと、自分に声をかけてあげます。

さらに、ときには自分を「愛しい」と感じてみましょう。それはとても大切なことなのです。自分を愛せない人は、人を愛することもできないのですから。「自分」はこの世界でかけがえのないたった一人の存在なんだ、と認めることができたとき、人生はもっと楽しく意味のあるものになるのです。

さぁ、今日から自分を最大限にほめてあげてください。くだらないと思えても、恥ずかしがらずに、ぜひ、実行してみてください。知らず知らず、ものの見方が変わっていることに気づくでしょう。