他人に悩みを聞いてもらうと悩みの「本質」がみえてくる

解決のきっかけはこんなとき

周囲にはたくさんの人がいるのに、なぜか1人ぼっちのような気がする、そんなときがある場合もあると思います。

わたしはこんなに悩んでいてつらいのに、誰も気づいてくれない…そんな風に思うことがあるのなら、思いきって気心の知れた身近な人に、いまの気持ちを話してみることです。

でも、たとえば職場なら、そこはプロの世界。言いわけや甘えは一切許されません。次から次へとさまざまな要望や指示、いろいろな問題が押し寄せてきます。

誰かに何かを相談したいと思っても、周りはライバルだらけで、上司や部下はいつも忙しい 。

そんなときはひと呼吸おいて、あらためて自分の周囲を見回してみましょう。いつもは近くにいなくても、きっと身近に感じられる誰かがいるはずです。

人間というのは、こちらが身構えると相手も身構えてしまうもの。まずあなたが肩の力を抜いて話しかけてみれば、相手も心を開いてくれるものです。

「そんな人に話したって、なんの解決にもならないよ」。もしかすると、あなたはこんな風に考えるかもしれません。

そうです。あなたが相談を持ちかける人は、いま、あなたが抱えている問題や悩みを直接、解決できないかもしれません。あくまでも「自分の問題は、自分で解決する」しかないことも事実です。

だったら、「なぜ、そんなことをする必要があるの?ただの気休めでしかないじゃないか」ですって〜ところが、そうではありません。身近な人に思いや悩みを打ち明け、聴いてもらっているうちに、それがあなたの「心を映す鏡」となるのです。

わたしたちは、自分の顔を自分の目で見ることはできません。鏡に映して、はじめて自分自身を見ることができるのです。それと同じように、自分の心も、自分だけではなかなか本当の姿を見ることはできないものなのです。

しかも、真の姿を把握しないまま、ひとりで悩み続ける人が、なんてたくさんいることでしょう。こんなとき、一生懸命に耳を傾けてくれる人との対話の中から、あなたの考え方や悩みの正体を、自分だけで思い悩んでいたときとは違う角度から「気づく」ようになるのです。

すると、ポンッと解決の糸口が見つかることがありますから、不思議ではありませんか。

相談を持ちかけたみなさんは、わたしとの対話の中から気づき、「もうひとつの見方」を発見し、そして自分自身の手で問題に立ち向かう力を取り戻していくように思われます。

たとえば、29歳の専業主婦の方が、そのよい例です。いわゆる「外に出たい」症候群。幼い男の子が2人いるため、能力があるのに仕事に就けない、夫は協力してくれない、

反対を押し切って結婚したため親には協力を頼めない… こんなジレンマとイライラがつのって、夫との仲もうまくいかなくなり、離婚寸前の状況でした。

でも、たった2時間、初対面のわたしに洗いざらい心の中を吐き出すうちに、ハタと「でも、子育てがたいへんなのはあと2~3年。それがガマンできないなんて、ただのワガママ」と気づいたのです。

自分で解決の糸口をつかむと、うそのようにきっぱりと気持ちを切り替えて、数年後を楽しみに子育てに専念、いまは家庭もうまくいっているそうです。

相談する相手は、必ずしもプロのカウンセラーでなくてもかまいません。あなたの気持ちを冷静にゆっくりと聴いてくれる人ならよいのです。そんな人が身近に発見できたら、なんて心強いことでしょう。

だいじょうぶ、きっと見つかります。そんな相手に恵まれたら、どんどん自分をさらけ出しましょう。

まず、悪いところをさらけ出してみることも、自分と向き合うひとつの方法です。その上で、こういうのもわたしなんだと認めてやり、とりつくろわないようにする。そうするとクヨクヨする気持ちもなくなって、強くなれます。

「それでも自分が好き」と思えるようになれたら、もっとずっとラクになれます。ちなみに、わたしの場合、オッチョコチョイ、臆病、方向音痴、整理整頓が下手、記憶力がこの頃落ちた、わがまま、金銭感覚がない… なんだかキリがありません。

でも、きっと同じ数だけ、いいところもあるに違いないと自分では思っているのです。最後に蛇足かもしれませんが、あなたの心をさらけ出し、話を聴いてもらってアドバイスや手助けをしてもらった相手には、感謝の気持ちを有形無形にかかわらず、十分に伝えるようにしましょう。

何か願いごとをするときは、神様にだって「お賽銭」をあげるではありませんか。まして、相手は生きている人間です。人の悩みに真剣に耳を傾けるのは、たいへんなエネルギーが必要なものです。また、その人の貴重な時間をさいてもらったのですから、絶対に欠かすことのできないエチケットだと思います。