あがり症で初対面の人が苦手

2020-12-12

よく見せたがらない、謙遜しすぎない

「あいさつ」は人間関係の基本です。どんなに能力があっても、あいさつがきちんとできない人間は一流にはなれないと、考えている人も多いです。逆にあいさつもできない人は一流ではありません。

そもそも「あいさつ」というのは、敬意と愛情を示しながら相手の人に「せまる」行為です。敵意がないことを示すだけではなく、積極的に自分の相手に対する気持ちをアピールする行為でもあるのです。表情と言葉で伝えるコミュニケーションと言えるでしょう。

ですから、自分が気が弱いとか、あがり症だと思っている人こそ、先に自分のほうからあいさつをするようにしましょう。

相手に先に「あいさつされる= せまられる」と、ドギマギしてしまって、ますます受け身で対応することになってしまいがちです。もしもあなたが内気で恥ずかしがりやなら、同僚や顔見知りの人には、笑顔で軽く会釈することから始めてみてはどうでしょう。

それだけでも十分に、相手にあなたの好意を伝えることができるでしょう。できれば「こんにちは」の一言だけでも声に出してみます。

そして、次には「気持ちのよい季節になりましたね」とか「おからだの調子はいかがですか?」などと、季節のあいさつや健康状態を問う「慣用句」をつけ加えてみるなど、少しずつでもステップアップしていけばよいのです。

そもそも、人間が他人に対して好感を持つときにどのような心の動きがあるかを示したのが、上の「好感度指数」の表です。「儀礼的なあいさつ」を軸にして、好感を持つ方向がプラス、持たない方向をマイナスとしていますが、積極的にあいさつするのとしないのとが、好感を持つか持たないかのきっかけになっていることが、よくわかるでしょう。

あいさつは敬意と愛情のシンボル、とわたしが言う理由は、ここにあるのです。あいさつされずに無視されたら、言葉に表されなくても「嫌われた」ことは伝わります。

ところで、はじめて会う人への「自己紹介」も、広い意味では「あいさつ」ですね。自分自身のことをはじめて会う人に、より理解してもらい、できれば覚えてもらうためのあいさつですから、好感を持たれるように話したい、と誰もが思うでしょう。

でも、あがり症で、あいさつや自己紹介をすると思っただけで緊張し、よけいに失敗してしまうという人もいます。

電気技師のTさんもそうでした。ふだんはあまり人に接することもない職場で、技術には自信があるので仕事での評価は高いのですが、子どもが生まれて地域や学校でのつきあいが増えるにつれて、会合などで自己紹介をしなければならない場面が増えてきました。

子どもや奥さんの手前、一家の大黒柱である自分がしっかりとあいさつしなくては、好感を持ってもらわなければ、と思えば思うほど、緊張して声が震えて裏返り、何をしゃべっているのかわからなくなってしまいます。

これでは面目まるつぶれで、そのうち会合に出席するときは、必ずと言ってよいほどお腹の調子が悪くなり、途中で何度も席を立つことになって、ますます浮いた存在になってしまいました。

リラックス法をマスターしながら、「自己紹介」に関して、アドバイスは、たったひとつだけ。「名前が正確に伝われば、それで十分ですよ」ということでした。

格好よく見せようと思うから、緊張してしまうのです。まじめな性格だと、いろいろと思案したりしましたが、「名前を正確に伝える」ことだけを目的に次のような短い「決まり文句」を考えて、それだけは何があってもスラスラと出てくるように頭の中にたたき込みました。

「畠山(少しポーズをおく)○○と申します。畠山の「はたけ」は「火に田んぼ」の畑ではなく「白い田」と書くほうの「畠」です」と、名前の漢字を説明することにしたのです。

この「決まり文句」がひとつあるだけで、これだけをきちんと伝えればいいんだ、と気持ちを落ち着けることができるようになったとか。「いまでは「あだ名」編、「出身地」編もあるんですよ」と「決まり文句」が増えつつあることをうれしそうに話してくれました。

畠山さんのように、自分を格好よく見せよう、アピールしようとしすぎて、緊張のあまり失敗するケースとともに、気をつけたいのは逆に「謙遜しすぎる」ケースです。

謙遜も度を過ぎると相手に嫌な印象を与えるだけでなく、マイナスの言葉を口に出してくり返すうちに、自分自身にマイナス思考をインプットすることになるからです。

謙遜も、「スポーツはからっきし駄目で… 」 と否定しっぱなしで終わらずに、「でも、興味だけはあるので、機会があればお誘いください」とつけ加えてプラス思考に転じたほうが、ずっと好感が持たれますし、人の輪も広がりやすいと言えます。